【感覚】単に見るだけではない!視覚の重要な機能について考えてみよう

私たちが日々当たり前のように行っている「見る」という行為。実は単に周りの情報を捉えるだけでなく、私たちの学習、コミュニケーション、そして行動にまで深く関わっている、とても複雑で重要な機能なのです。

 

特に発達障がいのあるお子さんの中には、視覚に関する課題を抱えている方が多くいらっしゃいます。例えば文字を追うのが苦手だったり、図形を認識するのが難しかったり、目と手または目と体の協調がうまく取れないなど様々な課題が見られます。

 

この記事では保育士さんや児童発達支援に関わる方々が、お子さんの発達をより深く理解し、適切な支援を行うために、視覚の機能について詳しく解説していきます。

 

具体的には、以下の3つの点について詳しく解説します。

  • 視覚の機能

視覚には、眼球運動、視空間認知、目と体の協応など、様々な機能があります。これらの機能が、どのように発達し、私たちの生活にどのような影響を与えるのかを解説します。

  • 発達障がいと視覚の関係

ADHD、自閉症スペクトラム症、学習障害など、様々な発達障害と視覚の関係について解説します。それぞれの障害の特徴と、視覚的な課題との関連性について具体的な事例を交えて説明します。

 

視覚の機能について

視覚は単に物を見る能力だけではありません。私たちの目は、複雑ですごく精細な仕組みを持っており、様々な機能を果たしています。だからこそ日常生活や発達においてはとても重要になります。

 

視覚の機能には主に3つの役割があるとされています。

  • 眼球運動
  • 視空間認知
  • 目と体の協応

 

眼球運動

眼球運動は私たちが周囲の環境を効果的に観察し、必要な情報を得るために不可欠な機能です。簡単にいえば目から情報を効率よく取り入れるのに必要な能力です。その中でもいろいろな機能があります。

  1. 追従性眼球運動

運動動く対象をなめらかに追う動きのことで、空を飛んでいる鳥を目で追ったり、書き順を目で追うことがこれに当たります。

  1. 跳躍性眼球運動

視線を素早く一点から別の一点へ移動させる動きで、黒板とノートを交互に見る、教科書を読む際に次の行に移るなどがあります。

  1. 輻輳・開散運動

両目でピントを合わせる動きのことで、奥行きのある視覚を可能にする重要な眼球運動になります。寄り目などもこれに含まれ、近くのものと遠くのものを交互に見る、立体視をするためには必要な能力です。

 

これらの眼球運動が適切に機能することで、私たちは読書や運動、日常生活の様々な場面で効率的に視覚情報を処理することができています。

 

視空間認知

視空間認知というのは空間の全体的なイメージを把握するための能力と言われています。言葉だけだと分かりにくいですけど、以下のような機能が含まれています。

①見ている物体と背景の区別

②形や色の認識

③自分と物体の距離感

 

視空間認知は日常生活のあらゆる場面で重要です。例えば物を掴む、障害物を避ける、文字を読むなど多くの活動に関わっています。なので、例えば地図がを見て実際の位置と照らし合わせることが苦手な方もいますが、そういった方はこの視空間認知の機能が低い可能性があります。

 

他にも「パズルを組み立てる」「車の位置や他の車両との距離を正確に判断し、安全に運転する」といった日常生活とも関係します。

 

視空間認知はスポーツをする上でも大切になるので、子ども運動を学習していくという意味でもすごく重要ということを理解しておいてください。

 

目と体の協応

あまり聞き慣れないかもしれませんが、目と体の協応は、視覚の情報と身体の動きを連携させる能力のことです。

 

この能力は目とかカラダの動きを連携させるので、「視空間認知」の能力とも密接に関連しています。体を動かすのは私たちが生きている3次元の空間の中なので、自分と空間との位置関係を把握していないとできないことだからです。

 

日常生活でいえば、以下のようなことが目と体の協応にあたります。

  • キャッチボールをする
  • 階段を安全に上り下りする
  • 自転車の乗る
  • お箸やフォークで食べ物を掴む

 

視覚の主に3つの機能についてお伝えしてきましたが、ボール遊びとか球技のスポーツはこれらの視覚の機能をたくさん使うので、ぜひたくさん経験させて欲しいと思います。

 

視覚の機能と他の感覚との連携

視覚の能力についてお伝えしましたが、視覚は単独で働いているわけではなく、他の感覚とも密接に連携しながら働いています。

視覚と聴覚

テレビを見ながら音を聞き取る、音楽に合わせて体を動かすなど、視覚と聴覚は同時に働き、より豊かな体験をもたらしてくれます。

視覚と触覚

物に触れてその形状や材質を目で見て認識する、文字を書きながら視覚と触覚の情報を統合するなど、視覚と触覚は認識を深めるために協調して働いています。

視覚と前庭感覚

体のバランスを保ちながら移動する、空間を把握するなど、視覚と前庭感覚も密接に関連しています。

 

Check!

  • 教科書を横に動かしながら文字を読む
  • 頭を横に動かしながら教科書の文字を読む

どちらが文字を読みやすいですか?これも視覚と前庭感覚の関係によるものです。

 

感覚と運動についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

ロッククライミング
参考【カラダの不思議】感覚について知ろう!"感覚”と"運動”の密接な関係

私たちが日常生活を送る際は、ただ単に動作を行なっているのではなく感覚の情報をもとに運動しています。   感覚と運動は常に表裏一体の関係にあるのです。   今回はそんな感覚について、 ...

続きを見る

 

視覚機能の発達を促す遊び

視覚の機能について3つお伝えしましたが、子ども達の視覚機能の発達を促す遊びも知っておくと保育や療育の幅が広がります。

 

具体的には以下のような遊びを取り入れてみると良いでしょう。

眼球運動を鍛える遊び

  • 風船バレー
  • シャボン玉あそび
  • 的当てゲーム
  • 数字,文字さがし
  • 線めいろ

視空間認知を育てる遊び

  • 積み木・ブロック遊び
  • めいろ遊び
  • ボール遊び
  • 鬼ごっこ
  • アスレチック遊び

目と体の協応を促す遊び

  • お手玉遊び
  • キャッチボール
  • バドミントン・卓球
  • ビーズ・紐通し
  • 塗り絵・お絵描き

 

いずれの遊びも分類はしましたが、相互に関係し合っているので、子どもの状態を評価して楽しめる遊びを取り入れていただければと思います。

 

まとめ

視覚機能は、私たちの日常生活や発達に深く関わる重要な役割を果たしています。特に子どもたちの発達において、適切な視覚機能の発達は学習や運動能力の向上に不可欠です。

 

保育士や児童発達支援に関わる方々にとって、以下の点を理解し実践していくように心がけてください。

  1. 視覚機能の多様性を理解し、個々の子どもの特性に応じた支援を行う
  2. 視覚機能の発達を促す活動や環境を提供する
  3. 視覚機能の課題が疑われる場合は、専門家と連携して適切な支援を行う

 

最後に視覚機能の発達も個人差が大きいことを理解し、一人ひとりの子どもの特性や発達段階に応じた支援を行うことが重要です。

 

適切な介入が行えるように、スタッフ同士で話し合いながら支援していってください。

 

 

参考文献

  • 小枝達也:ヒトの視覚の発達と発達心理
  • 内山 仁志:読みに関係する視機能・視覚認知
  • 荒木穂積:幼児期における視知覚の発達過程について
  • 感覚統合Q&A 改訂第2版
  • この記事を書いた人

田中 宏樹

After Reha代表の田中宏樹です。医療保険、介護保険分野のそれぞれで経験を積みながら、経営・マネジメントの勉強・情報発信も行っています。認定理学療法士(脳血管・運動器)/ ドイツ筋骨格医学会認定マニュアルセラピスト / PNFアドバンスコース(3B)修了 / FBL Klein-Vogelbach 1,2a+b修了 / 成人ボバースアプローチ基礎講習会修了 / 健康経営EXアドバイザー /企業経営アドバイザー/作業管理士

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