疲れが取れずに困っている方はとても多く、特に女性は肩こりや冷え症などに次いで常にお困りごとの上位にあります。
疲れが取れない時は寝ればいいと思っているかもしれませんが、寝ても疲れが取れない人も少なくなく、仕事のパフォーマンスもあがらずイライラしてしまうこともあるでしょう。
今回の記事では疲れの原因は一体何なのか、疲れを取るためにはどうしたらいいのかを解説していきます。
疲れの症状は?
あなたが疲れたと思う時はどんな時でしょうか。
疲れ(疲労)とは日本疲労学会によると「過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養への願望を伴う身体の活動能力の減退状態である」と定義されています。
*一般社団法人 日本疲労学会「抗疲労臨床評価ガイドライン」
疲労と言っても人それぞれです。以下に疲労の症状の例を挙げてみました。
疲れの症状
“朝起きるのがツライ”
“いつも眠たい”
“やる気が出ない”
“全身が重だるい”
“食欲がない”
“集中力が続かない” など
疲れを感じるのは人間に備わった恒常性(ホメオスタシス)が正常に働いているからです。
恒常性はカラダの状態を一定に保とうとする働きで、これ以上カラダにストレスが加わると危険が及ぶという警報が疲労になります。
この疲労に対する警報は、痛みや発熱と並んで生体の3大アラームとされています。
疲労はとても重要なシグナルですから、安易に考えない様に注意しなければなりません。
疲れの種類?
疲労の原因は大きく分けて2つに分類できます。
1つは末梢性の疲労で、もう1つは中枢性の疲労です。
末梢性疲労
末梢性疲労とは、運動や重労働による肉体的な疲労のことです。
マラソン後の体の疲れや筋肉痛などは代表的な末梢性の疲労といえます。
また筋肉の疲労だけでなく、内臓も酷使されることで疲労が生じます。
脂っこいものを食べたり、食べすぎたりすることで起こりますが、内臓疲労は筋肉痛のような症状が出ないので、気づきにくい場合があります。
中枢性疲労
中枢性疲労は、カラダを動かす機会がほとんどないのに、疲れたと”感じる”疲労です。
疲れたと感じる感覚は疲労感と言われますが、疲労感には「脳」関与しており、炎症性サイトカインと言われる体内物質が悪さをしています。
脳疲労の原因となるのは自律神経の働きで、自立神経の酸化ストレスが体調不良の原因だとされ、抗酸化が疲労回復には重要となります。
カラダの疲れが取れない原因
疲れを取るためにしっかり休養をとる方もいますが、休んだはずなのに疲れが取れていない!そんな経験ありませんか?
疲れを回復するには休養も大事ですが、そもそも原因が何なのか、それを知る必要がります。
こちらは疲れが取れない原因の一例です。
疲れの原因
“血行不良”
“栄養不足(過剰)”
“アルコールの摂取”
“腸内環境の悪化”
“自律神経の問題”
“活性酸素” など
“睡眠不足”
日本人は世界的に見ても睡眠不足な国民だと言われています。
日本人の2019年は平均睡眠時間は7時間22分で、OCED加盟の先進国の中では最低となっています。
株式会社ブレインスリープによる「睡眠偏差値®2021年版」の調査では6時間43分となっており、いずれにせよ睡眠時間の低下が伺えます。
“血行不良”
血行不良も疲労回復に影響します。
手足が冷えやすい、むくみやすい、肩がよくこる場合は血液の巡りが悪い可能性が考えられます。
血液が全身に巡ることで酸素や栄養を行き届かせたり、老廃物の回収する働きがあります。
血行不良が起こるとこれらの働きが阻害されるため、結果として疲労の回復が遅延してしまし、最悪慢性的な疲労へと移行してしまいます。
“栄養不足(過剰)”
以前は栄養不足で疲労が起こっていたこともあった様ですが、現代人は栄養は比較的しっかり取れています。
一方で食べ過ぎによって疲労を引き起こしていることがあります。
食べ過ぎは内臓への負担を増加させ、内臓疲労を引き起こします。
食べ過ぎにより内臓が常に働き続けると、消化・吸収・代謝により内臓が疲れてしまうのです。
内臓の疲れは食欲の低下や消化の吸収が妨げられてしまいます。さらに自律神経とも密接に関係していることから内臓の疲れは見過ごせない要因です。
“アルコールの摂取”
「アルコールを飲んで寝るとぐっすり眠れる」という方もいらっしゃいますが、実際は睡眠の質が低下することが報告されています。
アルコールは分解の際に活性酸素を発生することが知られています。活性酸素は老化や運動パフォーマンスの低下させ、疲労を引き起こしてしまいます。
慢性疲労や中枢性疲労は活性酸素が影響しているため、アルコール摂取をし続けることは肝臓の機能を低下させるだけでなく、疲労の回復を妨げてしまう原因となっています。
“腸内環境の悪化”
疲労には慢性疲労症候群と言われる、原因不明の倦怠感や頭痛、脱力感、思考力の障害、うつ症状といった精神的な症状などが長期にわたって続く病気をがあります。
慢性疲労症候群の方は、腸内環境の悪化が関係していることがわかっています。
腸と脳は関連があり、「脳腸相関」と言われる概念が存在ます。腸は「第二の脳」とも呼ばれており、脳からの指令がなくても活動することが可能なのです。
脳と腸は自律神経や免疫やホルモン分泌を調整しており、ストレスによって自律神経の乱れが生じると、それが引き金となって中枢性疲労を引き起こすことがあります。
“自律神経の乱れ”
仕事のプレッシャーや、人間関係などの精神的なストレスや、事故や怪我などの肉体的なストレス、騒音や気温などの環境的なストレスも自律神経の乱れに関与しています。
自律神経の活動は心身の疲れ、睡眠障害、メンタルヘルスが影響しています。
ストレスが常に加わることで炎症性サイトカインが発生し、活性酸素が出現し脳疲労の原因となっています。
自律神経は内臓や血液循環、呼吸、ホルモン分泌に関与することから、自律神経を整えることは疲労回復には欠かせません。
疲れを改善する方法
入浴する
入浴には疲れたカラダを癒してくれるリラックス効果や、水圧による血液やリンパの流れを良くすることに一役かっています。
さらに入浴によってヒートショックプロテインという特殊なタンパク質が増えることも報告されています。
ヒートショック・プロテイン(HSP)とは、カラダを温めることで増える特殊なタンパク質のことで、抗ストレス作用や免疫機能を高めたり、疲労回復、アンチエイジングに効果があるとされています。
入浴方法にも決まりがあり、40℃のお風呂に20分入浴し、体を冷やさない様に保温します。
42℃で10分の入浴もありますが、交感神経系の興奮が高まる可能性があるため、40℃での入浴をお勧めします。
1日2食に変えてみる
現代人いつでも食べ物を口にできる環境下で生活しているので、ついついお菓子を摘んだり、残すのはもったいないと食事を食べすぎる傾向にあります。
食べ過ぎは前にもお伝えしましたが、内臓の負担を増加させ自律神経系の乱れを引き起こします。
食べ過ぎ改善のために以下の方法を実践するのが良いでしょう。
・1回の摂取量を減らす
・1日の食事を2回にする
少食の方が消化に使うエネルギー量が低下するため、食べ過ぎによる疲労を防ぐことができます。
食事の回数を1食減らすことが最も良いですが、どうしても空腹で何か食べたいと思う時は「ナッツ」や「ヨーグルト」で空腹を紛らわしましょう。
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なお食事の際は抗酸化物質の「イミダペプチド」を積極的に摂取することをお勧めします。
イミダペプチドが鶏の胸肉に多く含まれており、イミダペプチドを2週間200mg摂取すると、被験者の疲労が回復した報告があります。
鶏胸肉100gにイミダペプチドが200mg含まれているので、毎日サラダチキンとして摂取するのがおすすめです。
良質な睡眠(成長ホルモン・メラトニン)
良質な睡眠が疲労回復に必要なのは言うまでもありません。
睡眠の導入時には成長ホルモンの分泌が高まるとされています。
成長ホルモンは筋肉、骨、内臓などのカラダのダメージを修復し、疲労を回復してくれるホルモンです。
また成長ホルモンの分泌が高まった後は、メラトニンと言われるホルモンの分泌量が増加します。
メラトニンには抗酸化作用があり、がんや老化を抑制する働きがあり、老化やうつ病をを予防する働きもあります。
メラトニンは原料となるセロトニンにが必要なため、朝にしっかり光を浴びて体内時計をリセットしておくことも睡眠の質を改善させるには必要になります。
良質な睡眠のためには、いびきも要注意です。
いびきは睡眠時に呼吸の乱れを引き起こし、血中の酸素濃度が90%程度まで低下することがあります。(正常は96〜100%)
睡眠時の呼吸障害は交感神経の活性化してしまうため、睡眠時に優位となっているはずの副交感神経の働きを阻害してしまいます。
良質な睡眠のために、いびきも改善できないか医療機関に相談するのも良いでしょう。
適度な運動(有酸素運動)
運動が疲労の回復に良いと言うのは意外かもしれません。
ですが「アクティブレスト」という言葉があるように、軽い運動をすることが疲労の改善には良い効果をもたらします。
軽い運動を行うことで、血行が促進され疲労物質が効率的に処理されるため疲労が早く回復するというわけです。
ボーっとしていても疲れがとれないことは、デフォルトモードネットワーク(DMN)と言われる機序からも明確です。
有酸素運動を行うことでもセロトニンが分泌され、自律神経を整えてくれる作用があります。
疲れた時はウォーキングなどの軽い運動をおこなって、疲れの回復を促進しましょう!
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参考文献
- 渡辺恭良:疲労研究の最前線〜疲労克服戦略〜
- 梶本修身:解明されてきた 現代における「疲れ」の原因
- 石井秀明ら:末梢性疲労モデルから中枢性疲労モデルへの仮説の移行 理学療法科学24(5):761–766,2009
- 久保 千春 ら:慢性疲労における自律神経系の機能異常と心身の症状との関連および事前の 香り暴露がストレス刺激による疲労や精神・神経・内分泌系に及ぼす影響.厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)(神経・筋疾患分野)
- 伊藤要子:温泉の「効用」「効き目」の秘密はヒートショックプロテインにあった!
- 知っておきたい循環器病あれこれ 睡眠時無呼吸症候群と循環器病 循環器病研究振興財
- 苧阪満里子:デフォルトモードネットワーク(DMN)から脳をみる.生理心理学と精神生理学31(1)1‒3, 2013