【超重要】カラダの中心「体幹」を鍛えるとなぜいいのか?プロが徹底解説!

「体幹トレーニング」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

 

サッカー日本代表で活躍した長友佑都さんが行っていた体幹トレーニングが話題となりましたね。

体幹はカラダの中心であり、カラダの中で最も大きな重量があります。

 

体幹が果たす役割は非常に多く、体幹を鍛えることは多様な動作のパフォーマンスを向上させます。今回はこの「体幹」を鍛えることがなぜいいのか?について解説していきます。

体幹とは?

そもそも、体幹とは一体どこまでの部位を示しているか、ご存じでしょうか。体幹は辞書などを引くと「骨盤、脊柱、胸郭、肩甲骨、頭部」と定義されています。

 

一般的に体幹と言えば、腹筋などお腹まわりのことを想像する方が多いのですが、正確には手足を除いた部分が体幹と呼ばれます。

 

ですがトレーニングやコンディショニングを行う場合、頭を含めずに体幹と解釈することの方が多い傾向にあります。私も頭部のコントロールは別途必要な要素があると考えているため、別に考えています。

 

体幹は内臓や筋肉も多いため、重量は他の部位よりも重くなっています。身体の重量を100%で表した場合、それぞの重量の比率は以下のようになります。(注:文献により誤差があります)

 

ポイント

頭部:8%

体幹:46%

上肢(うで):12%(左右各6%)

・上腕(肩~肘):6%(3%)
・前腕(肘~手首):4%(2%)
・手(手首~指先):2%(1%)

下肢(あし):34%(左右各17%)

・大腿部(股関節~膝):21%(10.5%)
・下腿部(膝~足首):10%(5%)
・足(足首~足先):3%(6%)

体幹は身体の約半分の重量あるため、体幹のバランスがほかのカラダの部位へ影響を及ぼすことが多々あります。この点からも体幹を鍛える必要があることがわかると思います。

体幹に関与する筋肉

体幹に関与する筋肉には、インナーマッスルアウターマッスルがあります。

 

インナーマッスル、アウターマッスルは単独の筋ではなく、表層・深層にある筋肉の総称です。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

インナーマッスル

インナーマッスルはローカルマッスルと呼ばれることもあり、カラダの深層にある筋肉で、カラダの表層にあるアウターマッスルとは主要な作用が異なります。

 

深層の骨に近い部分にあるため、骨や関節を安定させる作用があります。これにより姿勢を保持したり、関節痛の出現を予防させる働きがあります。

 

体幹のインナーマッスルで、代表的な筋肉を以下に挙げます。

腹横筋

コルセットのように腹部全体を周囲を覆っており、内臓の位置を安定させたり、腰を安定させるなどの作用があります。

多裂筋

首から腰の背骨まで付着する小さな筋肉で、背骨を支えるのに非常に重要な筋肉になります。

ねじれを伴う動作を行う際には、この多裂筋がしっかりと働くことでカラダの軸を作ってくれます。

横隔膜

横隔膜は「膜」とは言われていますが、厚みを持った筋肉です。

呼吸をする際に主に作用する筋肉ですが、腹腔腹圧(お腹の内臓が集まっている空間の圧)を高めるのにも作用し、体幹の安定に関与します。

骨盤底筋群

骨盤の底の方にある、幾重にも重なった複数の膜のような筋肉のことで、"おしっこを我慢する“、”おしりの穴を閉める”ような際に働きます。

腹圧性尿失禁といわれる尿漏れの症状がある方は、この筋肉が弱っていることがあります。

これら4つの筋は「インナーユニット」とも呼ばれ、それぞれが協調して働き、体幹を安定させる作用があります。
(インナーユニットは「コア」や「パワーハウス」と呼ばれることもあります。)

 

インナーマッスルにはほかにも、

・内腹斜筋

・腰方形筋

・大腰筋

といった筋が含まれることもあります。

アウターマッスル

アウターマッスルはカラダの表層にある筋群の総称で、カラダの表面近くに存在するため視覚的にみえる筋肉です。

 

インナーマッスルが小さな筋肉で、骨や関節を安定させるのに対して、アウターマッスルは、大きな力を発揮して関節を動かしたり、動作を行う主要な筋肉となります。

 

マシントレーニングなどで筋肉をつけることで、トレーニングの効果がわかりやすい筋肉になります。

 

インナーマッスルとアウターマッスルは、それぞれが協調的に働くことで、最大のパフォーマンスを発揮します。

 

もしアウターマッスルばかり強化して、インナーマッスルだけが弱い場合などは、骨や関節の安定が保てず、大きな力を発揮するアウターマッスルによってカラダを痛めることもあります。

 

体幹はなぜ重要なのか?

体幹はすべての動作の要で、起きたり、立ったり、歩いたりに密接に関わっています。

 

仮に体幹の筋力が著しく低下したり、障害を受けると、起きることができなくなり、座ることすら難しくなります。

 

具体的に体幹の重要性についてみていきましょう。

体幹が重要な理由

1.姿勢をコントロールしている

体幹の最も重要な機能の1つに姿勢をコントロールしている点があります。普段重力に負けないように立ったり、歩いたりするためには、体幹の筋が必ず必要になります。

 

もし体幹が安定していなければ、姿勢を保てなかったり、手足を思うように動かせなくなります。

 

実際、「手を上に持ち上げる直前、足を動かす直前に無意識に体幹の筋が活動する」という報告があります。

(出典:P W Hodges et al:Contraction of the abdominal muscles associated with movement of the lower limb.Phys Ther . 1997 Feb;77(2):132-42)

 

これは主にインナーユニットが関与しており、体幹の安定性を高め、動作中のバランスを保ちます。

 

2.運動のパフォーマンスが上がる

動作の直前に体幹が活動することで、腰や肩周囲の負担を軽減することができます。

 

また体幹が安定してることで、カラダの軸がぶれにくく、四肢の筋肉が働きやすい環境が整うため、フォームの改善や反応速度の向上につながります。

 

さらに体幹が安定することで背骨(脊椎)も同時に安定します。この背骨は動作のパフォーマンスに特に関係しているため、体幹の強化によりカラダをうまく使えるようになります。

 

3.ケガの予防につながる

誤った動作を繰り返し行うことで、関節や筋肉へストレスがかかり、痛みが出現することがあります。

 

姿勢が悪い場合も同様に、各部位へストレスがかかり、傷害を引き起こしやすくなります。

 

体幹の深層にある筋肉が萎縮(小さく弱くなっている状態)していると、腰痛を発症したりするスポーツ選手の報告も多いため、体幹を鍛えて安定した土台をつくることが重要になります。

 

4.腰痛予防・改善に効果的である

慢性的な腰痛がある方では、四肢の運動に伴う体幹の筋活動が遅れる傾向にあります。

(出典:Sheri P. Silfies et al :Differences in Feedforward Trunk Muscle Activity in Subgroups of Patients With Mechanical Low Back Pain. Arch Phys Med Rehabil Vol xx, Month 2009)

 

通常は動作に先行して体幹が安定するのですが、筋活動が遅れることで体幹が安定できず、腰に負担がかかり腰痛へとつながることもあります。

 

腰痛を持つ人は、体幹のインナーマッスルの筋肉の質が変化している場合もあり、体幹のインナーマッスルを鍛えることは腰痛予防に有効だと言われています。

 

他にも、体幹を鍛えることで基礎代謝があがったり、疲れにくいカラダになるなどのメリットがあります。

おわりに

体幹を鍛えることは、動作のパフォーマンス向上や、傷害予防など多くのメリットがあります。日常の動作全てに関与しているため、体幹のトレーニングを行うことは快適な生活を維持するためにも重要です。

 

ですが、体幹の筋は、意識的ではなく無意識的に活動するの理想となります。そのため静的なトレーニングだけでなく、動きながら体幹を鍛える動的トレーニングを繰り返すことも大切になります。

 

体幹を鍛える方法にも注意しながら、トレーニングしていきましょう。

 

参考文献

・福井 勉:姿勢制御について.理学療法―臨床・研究・教育 13 : 2–6,2006.

・鈴木俊明ら:The Center of the Body -体幹機能の謎を探る- 第3版

・弓岡光徳ら:最新のボバースアプローチの紹介-立位から臥位への姿勢変換を中心に- West Kyushu Journal of Rehabilitation Sciences5:67-77,2012

・R.Louis Schltz et al: The ENDLESS WEB -Fascial Anatomy and Physical Reality-.

・P W Hodges et al:Contraction of the abdominal muscles associated with movement of the lower limb.Phys Ther . 1997 Feb;77(2):132-42

・Sheri P. Silfies et al :Differences in Feedforward Trunk Muscle Activity in Subgroups of Patients With Mechanical Low Back Pain. Arch Phys Med Rehabil Vol xx, Month 2009

・上野 彬恵:切り返し動作に体幹深部筋トレーニングが即時的に及ぼす影響

・佐藤 正裕:腰部・体幹障害予防とアスレティックトレーニング.日本アスレティックトレーニング学会誌 第5巻 第1号19-25(2019)

・大久保 雄:体幹筋機能のエビデンスとアスレティックトレーニング.日本アスレティックトレーニング学会誌 第 5 巻 第 1 号 3-11(2019)

・村尾昌信 ら:腰部多裂筋の選択的活動をコンセプトとした新たなexcerciseの筋電図学的解析  理学療法学 第42巻第2号 P114〜118 (2015年)

  • この記事を書いた人

田中 宏樹

After Reha代表の田中宏樹です。医療保険、介護保険分野のそれぞれで経験を積みながら、経営・マネジメントの勉強・情報発信も行っています。認定理学療法士(脳血管・運動器)/ ドイツ筋骨格医学会認定マニュアルセラピスト / PNFアドバンスコース(3B)修了 / FBL Klein-Vogelbach 1,2a+b修了 / 成人ボバースアプローチ基礎講習会修了 / 健康経営EXアドバイザー /企業経営アドバイザー/作業管理士

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