【AI時代】子育てはもう迷わない!科学が教える「賢い親の育て方」

スマートフォンやAIスピーカーが暮らしにすっかり溶け込んだ今、子育ての景色も大きく変わりました。

 

「AIに仕事が奪われるって聞くけど、うちの子は大丈夫?」「スマホやタブレットって、いつから、どれくらい見せていいの?」…そんな新しい時代の悩みに、戸惑いを感じている保護者の方も多いのではないでしょうか。

 

この記事では信頼できる研究結果をもとに、AI時代の子育てという航海を乗り切るためのヒントを、誰にでも分かりやすく解説します。

スマホやタブレットとの付き合い方

スマホをみる親子

子育てとテクノロジーの話で、誰もが気になるのが「スクリーンタイム」。便利だけれど、子どもの脳に悪い影響があるのでは…と心配になりますよね。実際のところ、科学の研究では何が分かっているのでしょうか。

 

言葉の発達には「親子の会話」がカギ

まず言葉の発達への影響です。世界中の多くの研究結果を統合・分析した非常に信頼性の高い研究(メタアナリシスと呼ばれます)によると、2歳未満の乳幼児期において、スクリーンタイムが長いほど、言葉の発達に遅れが見られる傾向が明らかになりました。

 

これは、テレビやスマホからの一方的な情報が、親子の大切な「対話」の時間を奪ってしまうためと考えられます。

 

子どもは、親の優しい眼差し、声のトーン、豊かな表情といった、言葉にならないコミュニケーションのシャワーを浴びながら、言葉と心を育てていきます。一方通行の情報だけでは、この双方向のやり取りは生まれません。

 

脳の「司令塔」への影響も

さらに、脳の発達そのものへの影響も指摘されています。東北大学の研究グループが行った大規模な追跡調査では、インターネットやゲームの利用時間が長い子どもは、思考や判断、コミュニケーションを司る「前頭前野(ぜんとうぜんや)」を含む広範な脳領域の発達に遅れが見られ、言語能力のスコアも低いという関連が報告されました。

 

この「前頭前野」は、いわば脳の”司令塔”。物事を考え、感情をコントロールし、我慢するといった、人間らしく生きるために非常に重要な働きを担っています。

 

この大切な司令塔が育つ時期に、強すぎる刺激を受け続けることには注意が必要だと言えるでしょう。

 

ただ空間認知能力を高めるといったゲームの研究報告されているため、すべてのゲームがNGというわけでもありません。

 

特に注意すべきなのは単純な作業の繰り返しといったゲームです。単純作業は脳全体の活動が低下するため、子どもにとって良い影響を与えないと言う事を理解しておくとよいでしょう。

 

大事なのは「量」より「質」と「関わり方」

しかし「スマホは絶対悪!」と決めつけるのは早計です。複数の研究で、「何を見るか(コンテンツの質)」「どのように見るか(保護者の関わり方)」が、影響を大きく左右することが示唆されています。

 

同じ研究者グループの別の研究では、スクリーンタイムが子どもの発達に与える影響を評価する際、コンテンツの質(例:教育的な内容か)や、保護者が一緒に見る(共同視聴)といった文脈が極めて重要だと指摘されています。

 

これを食事に例えると、お菓子ばかりでは栄養が偏りますが、栄養バランスの取れた美味しい食事なら、心も体も健やかに育ちますよね。スクリーンタイムも同じです。

 

避けるべき例

家事で忙しいからと、子どもに一人で動画を長時間見せ続ける。(栄養の偏ったおやつだけを与えている状態)

推奨される例

「この動物、なんて鳴くのかな?」などと親子で話しながら、質の良い教育的なアプリや番組を時間を決めて一緒に楽しむ。(栄養満点の食事を一緒に味わう状態)

 

「一人で見せない、親子で楽しむ」。これが、テクノロジーと上手に付き合うための黄金ルールです。

 

AIに上手に頼るためのヒント

ヒント

テクノロジー、特にAIは私たちの仕事を楽にするだけでなく、子育ての負担を軽くしてくれる、頼もしい助っ人にもなり得ます。

困ったはAIにおまかせ!

保育現場では、AIやICTツールを導入することで、保育士の事務作業が軽減され、子どもと直接関わる時間が増えたという調査結果があります。

 

これは家庭でも応用できます。AIスピーカーに献立を相談したり、赤ちゃんの夜泣きのパターンをアプリで分析・記録したり。

 

こうしたツールで親の心に余裕が生まれ、笑顔で子どもに接する時間が増えるなら、それは素晴らしいことです。

 

また子どもの特徴を伝え、科学的根拠に基づいた回答をしてもらうことで、子育ての悩みを相談することもできます。

 

一人ひとりにピッタリの「AI先生」

AIの得意技は、一人ひとりの能力に合わせて内容を調整する「個別最適化」です。この技術を応用した学習システム(知的チュータリングシステム)が、生徒の学力向上に確かな効果があることは、多くの研究をまとめた分析でも確認されています。

 

AIドリルは、お子さんの苦手な箇所を瞬時に見つけ出し、まるで専属の家庭教師のように「君にはこの問題がピッタリだよ!」と最適な課題を出してくれます。

 

実際に苦手なところの問題を作成してくれたり、最近では学習用のサポートをしてくれる機能もChatGPTでは登場しています。

 

「心のやり取り」だけはAIに任せないで

子どもとのふれあい

ただし、注意点もあります。それは、子育てで一番大切な「心のやり取り」までAIに任せてしまわないことです。

 

子どもが「どうして空は青いの?」と聞いてきた時、すぐにスマホで検索して答えを教えるのは簡単です。しかし、そこで「どうしてだと思う?一緒に考えてみようか」と親子で対話する時間こそが、子どもの「考える力」を育む何よりの宝物なのです。

 

AIが子どもの発達や幸福に与える長期的な影響はまだ未知数であり、ユニセフ(国連児童基金)も、子どもの権利を最優先にしたAIの活用を求めるガイドラインを発表しています。

 

AIはあくまで便利な「道具」。子育ての主役は、いつだって愛情あふれるあなた自身です。

 

AI時代に伸びる「見えない学力」の育て方

勉強する子ども

AIが多くの知的作業を肩代わりする未来で、私たちは子どものどんな力を伸ばせば良いのでしょうか。それは、テストの点数では測れない「非認知能力」、いわば「生きる力」です。

  • 創造性: 新しいアイデアを生み出す力
  • 批判的思考: 情報を鵜呑みにせず、自分の頭で考える力
  • コミュニケーション: 自分の気持ちを伝え、相手を理解する力
  • 協働性: みんなと力を合わせて目標を達成する力
  • やり抜く力(グリット): 困難に負けず、粘り強く挑戦する心の強さ
  • 自己肯定感: 「自分は自分でいい」と自分を大切に思える心

 

これらの力は、AIには決して真似できない人間ならではの強みであり、特別な英才教育ではなく、日々の暮らしの中の温かい関わりによって育まれます。

 

「生きる力」を育む3つの魔法

心のキャッチボールをしよう(応答的な関わり)

子どもが発するサイン(泣く、笑う、指をさす)に、親が敏感に、そして温かく応えること。この単純なやり取りの繰り返しが、子どもの中に「自分は愛されている」という絶対的な安心感を育て、すべての力の土台になります。

「やりたい!」を応援しよう(主体性の尊重)

大人が「こうしなさい」と型にはめるのではなく、子どもが夢中になっていることを、安全な範囲でとことんやらせてあげましょう。自分で考え、試行錯誤し、発見する喜びが、主体性と創造性を爆発させます。

本物の体験をプレゼントしよう(実体験)

公園で思い切り走り回る、虫や花に触れる、様々な人と交流する。五感を使ったリアルな体験は、画面の中では決して得られない豊かな感性と社会性を育みます。

 

まとめ

AI時代の子育てとは、テクノロジーを怖がって遠ざけることでも、全てをAIに任せっきりにすることでもありません。

 

その答えは、科学的な知識を元にテクノロジーの良さを上手に活用し、それによって生まれた時間と心の余裕を、子どもとの温かい触れ合いやリアルな体験のために使うという、賢いバランス感覚にあります。

 

AIは、私たちから子育ての喜びを奪う存在ではありません。むしろ、忙しい保護者の負担を軽くし、もっと子どもと笑い合うための時間をくれる**「頼もしい相棒」**になってくれるはずです。変化の激しい時代だからこそ、情報に一喜一憂せず、科学という地図を頼りに、目の前の子どもをギュッと抱きしめる。その温かさこそが、どんな時代も生き抜く力を子どもに与える、最高の贈り物なのです。

 

参考文献

  • Madigan, S., McArthur, B. A., Anhorn, C., Eirich, R., & Christakis, D. A. (2020). Associations between screen use and child language skills: A systematic review and meta-analysis. JAMA pediatrics, 174(7), 665-675. (乳幼児期のスクリーンタイムと言語発達の遅れとの関連を示したメタアナリシス)
  • Takeuchi, H., Taki, Y., Nouchi, R., Yokoyama, R., Kotozaki, Y., Nakagawa, S., Sekiguchi, A., Iizuka, K., Yamamoto, Y., Hanawa, S., Araki, T., Miyauchi, C. M., Sakaki, K., Sassa, Y., Nozawa, T., Ikeda, S., Yokota, S., Magistro, D., & Kawashima, R. (2023). Cross-sectional and longitudinal associations of internet and gaming use with brain structure and cognitive function in children. Human Brain Mapping, 44(10), 3843-3855. (インターネット・ゲーム使用と脳構造・認知機能との関連を調査した研究)
  • Madigan, S., Browne, D., Racine, N., Mori, C., & Tough, S. (2019). Association between screen time and children's performance on a developmental screening test. JAMA pediatrics, 173(3), 244-250. (考察部分で、スクリーンタイムの影響を評価する上でコンテンツの質や共同視聴の重要性を指摘)
  • こども家庭庁. (2023). 保育現場のICT化・DX化の推進について. (保育現場の業務負担軽減策としてICT化を推進していることを示す公的資料。特定の調査報告書ではなく、政府の方針として引用)
  • Kulik, J. A., & Fletcher, J. D. (2016). Effectiveness of intelligent tutoring systems: A meta-analytic review. Review of Educational Research, 86(1), 42-78. (AIを活用した個別指導システムの有効性を示したメタアナリシス)
  • UNICEF. (2021). Policy Guidance on AI for Children. (AIが子どもに与える影響を包括的に検討し、子どもの権利を保護するための指針を示した報告書)

 

子どもの発達で「うちの子、発達障がいかも?」そう思った方はこちらの記事もご覧ください。

熊を持つ子ども
参考もしかしてうちの子も?発達障害の原因と特徴。大人ができることはある?

子どもの発達障害だけでなく、最近は大人の発達障がいもよく耳にするようになりました。実際Yahooニュースでもよく取り上げられています。発達障がいの割合は年々増えており「自分も発達障がいでは?」と疑うケ ...

続きを見る

 

  • この記事を書いた人

田中 宏樹

After Reha代表の田中宏樹です。医療保険、介護保険分野のそれぞれで経験を積みながら、経営・マネジメントの勉強・情報発信も行っています。認定理学療法士(脳血管・運動器)/ ドイツ筋骨格医学会認定マニュアルセラピスト / PNFアドバンスコース(3B)修了 / FBL Klein-Vogelbach 1,2a+b修了 / 成人ボバースアプローチ基礎講習会修了 / 健康経営EXアドバイザー /企業経営アドバイザー/作業管理士

よく読まれている記事

1

体幹ってなんで大切なの?なぜ鍛える必要があるの?そう思われたことはありませんか?   「体幹」はカラダの中心にあって、すべての動きに関連する非常に大切な部位とされています。体幹を鍛えることは ...

2

「体幹トレーニング」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。   サッカー日本代表で活躍した長友佑都さんが行っていた体幹トレーニングが話題となりましたね。 長友佑都 体幹ト ...

3

ここ数年筋力トレ(筋力トレーニング)ブームが起こっていますよね。 書店には筋トレ関連の本が多く並んでおり、フィットネスジムも多くなってきました。   Googleトレンドのキーワード検索率で ...

-子どもの発達
-, ,