2006年の診療報酬を機に、理学療法士を中心としたセラピストの質や技術、他職種との差別化がより一層求められるようになっています。
セラピストはこれまで基本的に1対1の中でリハビリを提供してきましたが、これからはもっと多くの方にサービスを提供することが必要となってくるかもしれません。
すでにブログやYoutubeを利用して多くの方に情報発信しているセラピストは大勢います。
今回は、今までのキャリアを今後どう活かすかを考えるためのフレームワーク「PPM」についてお伝えしていきたいと思います。
PPMとは
さっそくですが、「PPM」とはProduct Portfolio Managementの略で日本語では「製品ポートフォリオマネジメント」と呼ばれています。
PPMはボストン・コンサルティング・グループが1970年代に開発したもので、元々は経営資源のマネジメントのために開発されました。
事業を単独で管理するのではなく、複数の事業の組み合わせ(ポートフォリオ)として考えるという発想から生まれたものです。 ”市場成長率”と”相対的市場シェア”の2軸で事業を4つのセルに分割します。
4つのセルは「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」に分割されます。 それでは、それぞれの特徴を見ていきましょう。
PPMの各セルの特徴
花形 (star)
(成長率:高、市場シェア:高) 次の大黒柱となる中核事業のことで、キャッシュイン(資金の流入)が増加傾向にあるが、拡張投資によるキャッシュアウト(資金の流出)も多い特徴がある。
花形では「市場での優位な地位の確立」が課題となります。
金のなる木 (cash cow)
(成長率:低、市場シェア:高) 企業の大黒柱的存在のことで、市場が成熟しており、今後成長が見込めないが、安定的に資金の流入が確保でき、投資の負担も少ないため資金の流出も少なく、最大のキャッシュフロー(現金流流量)が得られる特徴があります。
この状態をできるだけ長く維持し、生み出したキャッシュフローを「次の事業の育成のために活用する」ことが課題となります。
問題児 (question mark)
(成長率:高、市場シェア:低) 成長率は高いですが、市場のシェアは低い新規事業になります。
資金の流入が少なく、投資による資金の流出が多いため、キャッシュ(資金)を生み出しにくいとった点が特徴です。
製品の育成や市場開拓などにより、「市場シェアを高める」ことが課題となります。
負け犬 (dog)
(成長率:低、市場シェア:低) 負け犬は「衰退事業」ともいわれ、仕入れてもモノが売れないなどの状態になっている特徴があります。
この場合、縮小均衡で資金を何とか確保するか、もしくは「事業から撤退」することが課題となります。
PPMの各セルの特徴と課題を自身の事業の状態と照らし合わせて、適切な取捨選択を行う必要があります。
例えば、独立して新規事業などを行う際は、成長市場を狙って参入しますが、最初から高いシェアを獲得することで出来ないので、PPMの「問題児」からがスタートになります。
事業がうまくいくようになると、競争力やシェアが高まり「花形」に移行し、やがて成長していた事業も鈍化し始めると「金のなる木」に移行します。 そして「金のなる木」の優位性を失うと「負け犬」に移行するというのが標準的な事業のサイクルになります。
しかしPPMでは負け犬に移行する前に、資金を新たな問題児や花形に投入して「花形」「金のなる木」「問題児」の3つのセルでバランスよく資金をコントロールしようというのが最大の狙いです。
個人のキャリアに当てはめたPPM
さて、これまでは企業の考え方を中心にお伝えしてきましたが、次はこれを個人のキャリアに当てはめて考えていきましょう。
個人の新しい事業やマーケット選択、将来の展望を考えるにあたり、PPMを用いると明確化しやすくなります。
まず2つの軸を考えるにあたっては、 (縦軸)成長率が高い市場 (横軸)自分の(能力・価値観に即した)市場シェアが高いこの2つの軸をとって取捨選択をしていきます。
個人で考える場合、基準となる軸が重要になると言われています。 能力を活かしたり、価値観に見合っているなど明確にしておかなければ後々ぶれてしまいます。
例)病院内での管理職になりたい
スタートは「問題児」ですので、まずはセラピストしてのスキルやマネジメントスキルを高めるために研修などにお金を投資します。
マネジメントスキルやスキルの向上から、自身をプロモーションしていき、病院内での希少性を高めます。「〇〇ならあの人だよね」と言われる存在になり、院内の出認知度が上がってくると「花形」となっていきます。
「花形」の状態を維持するには継続してマネジメント研修などを積み、仕事の依頼が来るまで徹底的に投資し続ける必要があります。
経験をみある程度の地位までくると「金のなる木」となり、管理職の地位を気づくことができ、手当などにより収入が増えたり、講師の依頼が来るかもしれません 。
個人のPPMでは、最終ゴールを明確にして、時間やお金を投資して価値を高めていくことが重要だと考えています。
まとめ
いかがでしたか。PPMはキャリアデザインにも応用できるので、面白いですよね。 キャリアに当てはめたPPMは「医療・介護職の新しいキャリア・デザイン戦略(著 三好貴之,細川寛将)」で詳しく紹介されています。
この考えは是非知っておいてもらいたいと思いますので、もっと詳しく知りたい方は「医療・介護職の新しいキャリア・デザイン戦略」を手に取って読んでみて下さいね。