脳卒中後の生活期リハビリが抱える現状と課題。自費リハビリを選択肢の1つに

脳卒中のリハビリは、発症直後から回復期、生活期と呼ばれる時期まで継続して行われるのが一般的です。この期間、病院や施設への転院があるためシームレスな連携が必要なのは言うまでもないかと思います。

ですが、脳卒中患者さまの多くは、リハビリを取り巻く制度の問題や、病院や施設側の都合により、後遺症が残った状態で自宅に退院されることがほとんどです。

病院や施設での生活環境から、段差や障害物の多い自宅での生活に戻る「生活期」も、回復期と同じくリハビリが重要となります。

今回は、後遺症が残った状態で在宅に戻られる際に利用する、生活期リハビリの現状と課題についてお伝えしてきます。

生活期(維持期)リハビリとは?

脳卒中後の生活期のリハビリは、発症直後の「急性期」から始まり、回復能力が最も高い時期の「回復期」に次いだリハビリの時期になります。

 

生活期のリハビリは「維持期」リハビリとも呼ばれており、患者さま目線で言えば「生活期」とお伝えすることが多い傾向にあります。

 

ここでは、「生活期」と表現させてもらいながら解説していきます。

維持期リハビリ

( 出典)中医協 意見交換 資料-1 H29年4月19日  テーマ3 リハビリテーション参考資料参考 資料より抜粋

発症直後の急性期から回復期までは「入院」というステージでリハビリを行いますが、生活期では「在宅」メインになるステージです。

入院から環境が変化し、回復期からのリハビリ量が大きく減少し、回復も乏しくなり維持期(生活期)と称されるようになりました。

つまり、回復期までのリハビリで積み上げたものを「維持」するステージと捉え、リハビリを行っていました。

生活期リハビリの現状と課題

厚生労働省の平成28年医療施設(動態)調査・病院報告によると、国内の病院の診療科でリハビリテーション科を有する施設は施設数は5,500あります。

 

しかし病院での外来リハビリが、「要介護保険者等に対してはリハビリの算定を認めない」とする国の診療報酬改定で明記されました。これにより、近年食事や入浴などの介護サービスは希望せず、「リハビリを集中的にやりたい」というニーズが増加しています。

 

生活期でそのニーズを満たすサービスに、介護保険での「通所リハビリテーション」(以下:通所リハビリ)と「訪問リハビリテーション」(以下:訪問リハビリ)があります。

介護保険での現状

通所リハビリ・訪問リハビリ

ご利用者の特性としては、脳卒中患者さまが最も多く、通所リハビリで35.6%、訪問リハリハビリでは42.8%となっており、脳卒中患者さまへのリハビリは重要となっています。

(出典)厚生労働省 平成24年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査 (平成25年度調査)

生活期リハビリを行う目的も、通所リハビリ、訪問リハビリともに「歩行能力の向上」「筋力の向上」が上位を占めています。

しかし、通所リハビリ、訪問リハビリともに短期目標の達成度でいえば、「ほぼ達成できた」と回答した割合は29.6%〜40.2%と半分以下となっています。

(出典)厚生労働省 平成24年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査 (平成25年度調査)

短期的な目標として歩行能力の向上や筋力の向上を望む声はありますが、実際には達成できておらず、現状維持の傾向が続いていると言えます。

 

生活期における課題

では目標未達成の原因は一体どこにあるのでしょうか。生活期リハビリが抱える課題について見ていきましょう。

 

リハビリの場合

原因の1つにリハビリ時間の短縮が挙げられます。

入院生活では『治療』に主眼が置かれているために、回復期のリハビリ病棟であれば、大半の方が1日3時間のリハビリを理学療法士、作業療法士、言語聴覚士から受けています。しかし在宅になると専門職の関与とリハビリ時間が圧倒的に減少します。

通所リハビリであれば、個別にリハビリを受けることはありますが、利用者1人あたり1日21.5分程度となっています。
(出典)三菱総合研究所:介護サービスの質の評価に関する利用実態等を踏まえた介護報酬モデルに関する調査研究事業.Available from URL:http://www.mri.co.jp/project_related/hansen/.../h23_06.pdf

訪問リハビリでも週の訪問頻度は1.4日で、リハビリ時間も平均40分となっており、回復期でのリハビリに比べれば、リハビリ時間の減少が著明となっています。
(出典)日本リハビリテーション病院・施設協会:リハビリテーションの提供に係る総合的な調査研究事業(単独型訪問リハビリテーション事業所の実現性に関する研究)報告書.日本リハビリテーション病院・施設協会,長崎,2011

原因として目標設定の違いも影響しています。

通所リハビリや訪問リハビリは、通所介護などの介護サービスと比べると「能力の向上」を目標とされることが挙げられます。

介護保険サービスは、”現在の状況を維持する”といった考え方がベースにありますが、実際に通所リハビリで業務に携わっていると、「もっと良くなりたい」という声をよく耳にしていました。

さらに、回復期の病棟でリハビリの制限期間が迫ると、施設や在宅に強制的に退院させられることもあり、望んだ目標まで到達できないこともあります。

退院後に通所リハビリや訪問リハビリのサービスを利用し、能力の向上を望んでも、時間や人員の問題で十分なリハビリができていないことが多くあります。通所介護(デイサービス)においては、直接リハビリスタッフが関わることがなく、個別のリハビリもありません。

こうしたことから、介護保険下でのリハビリに不満を持つ方も少なくないと言えます。

 

生活期リハビリと自費リハビリの可能性

生活期の現状でも述べましたが、生活期のリハビリが抱える問題には通所リハビリや訪問リハビリでは対応できない、リハビリの「量」や「質」、そして「対応する介護保険サービスがない」ことが挙げられます。

 

「リハビリ難民」が増えていることは以前からニュースなどでも取り上げられていますが、実際に継続したリハビリを望む声は少なくありません。

 

リハビリ病院やデイケアで勤めているとこういった不満や希望の声を何度も聞きました。

 

「自費でもいいからリハビリを継続したい!」

「デイケアは高齢者が多く行きたくない。」

「どこか自費で出来る施設はありませんか?」

 

こういった『生活の質を向上させたい』と思う方々のご要望にお応えするために、保険外の全額自費でのリハビリを提供する施設が増加しつつあります。

 

決して安い金額ではありませんが、改善の可能性があるならと施術を希望されるかたもいらっしゃいます。

 

脳卒中発症から6か月以降も改善の可能性がある

 


脳梗塞リハビリセンターによる日本脳卒中学会のレポートでは以下のような報告があります。

 

レポート

発症からの期間は1年未満から10年以上の33人の利用者に対して60日間発症から1年~2年未満の方で、最低週2回の施術を受けた脳卒中利用者では「身体機能の改善」や「高い満足度」が得られたと報告しています。

特に60日間継続してリハビリを行うことで、改善を実感に出来るようになる傾向あるとしており、発症から6ヵ月以上経過しても改善する可能性が示されました。
(出典)脳梗塞リハビリセンター 第46回日本脳卒中学会レポート https://noureha.com/data/research/c0001/

この報告からも、介護保険下でのサービスを利用しながら自費でのリハビリを継続することで、身体機能の改善が示されることケースがることがわかります。

 

生活期の在宅環境の重要性

医療機関で入院している期間よりも、在宅で生活する時間の方が長い場合がほとんであり、いかに在宅生活を快適に過ごせるかも重要となってきます。

 

病院や施設では退院が近くなると、「長年過ごしてきた家だから大丈夫でしょう。」そう言った声かけをすることがありますが、実際はそう簡単ではありません。

 

脳卒中を発症されて自宅に戻る際は、大抵の人が何らかの障害をもって自宅に戻られます。自宅環境は入院中や入所中と比較して大きな変化はないかもしれませんが、障害を患ったご本人からすれば住み慣れた環境とは言い難いものとなっています。

 

これを解消するため、病院を退院する前に「退院前訪問指導」という名目で、リハビリスタッフがご自宅を訪問することがあります。

 

手すりや段差解消などのアドバイスを行い、介護保険で住宅改修を行うことがありますが、自宅に戻っても1度も使用しない手すりが設置されている場面も多く見てきました。

 

病院を退院された後では、住宅改修後のフォローが出来ないため、訪問リハビリの際に見てもらい、再調整してもらう場合もあります。

ですが、訪問リハビリを行っていない方は再調整の機会がなく、不自由な環境での生活を余儀なくされることもあります。

 

自費リハビリを行う施設によっては、ご自宅へ訪問しご家族への介助指導や住宅環境のアドバイスを行うサービスもあります。

 

おわりに

医療機関でのリハビリには上限があり、最大でも6カ月となっており、退院後は機能回復を目指すリハビリは受けられなくなります。

 

リハビリを望む声はある一方で、外来でのリハビリなど公的保険が利用できず、介護保険下での「維持」を目的としたリハビリしか提供できない現状です。

 

しかし介護サービスと併用する形で、自費リハビリを行いながら機能改善が望める環境が今後増えてくると選択肢が広がり、個人の満足度も高まると考えています。

 

最後に、自費リハビリが、脳卒中患者さまをはじめ、障害を患われた多くの方の社会復帰や希望になればと思います。

 

アフターリハは、宮崎県で脳卒中後の自費リハビリを提供させていただいております。

 

ウイルス感染拡大により、2020年6月に開始予定であったサロン開業を中断しておりましたが、20201年8月から「アフターリハビリセンター」を再スタートすることになりました。

在宅訪問期間中は、大変好評いただいていおりましたので、ぜひ今度は店舗の方へも足を運んでいただけると幸いです。

アフターリハビリセンターの特徴 | After Reha (after-reha.com)

 

 

  • この記事を書いた人

田中 宏樹

After Reha代表の田中宏樹です。医療保険、介護保険分野のそれぞれで経験を積みながら、経営・マネジメントの勉強・情報発信も行っています。認定理学療法士(脳血管・運動器)/ ドイツ筋骨格医学会認定マニュアルセラピスト / PNFアドバンスコース(3B)修了 / FBL Klein-Vogelbach 1,2a+b修了 / 成人ボバースアプローチ基礎講習会修了 / 健康経営EXアドバイザー /企業経営アドバイザー/作業管理士

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