【予防】脳卒中が増えるこれからの季節に気をつけたい2つのこと

秋も深まり、いよいよ冬が間近に迫っています。

 

寒い季節に増えるのがや脳出血やくも膜下出血などの脳血管疾患です。

 

今回は寒くなってきたこの時期に、脳卒中にならないもしくは再発を予防するための注意点を3つお伝えしていきます。

なぜ寒い時期に増えるのか?

脳出血やくも膜下出血はなぜ寒い時期に増えるのでしょうか。

 

これには血圧が関係しています。

 

一般に寒い冬には血圧が高くなる傾向にあります。これは暖かい場所から外気の冷たい空気に触れることで、急激な温度差の変化が起こるからです。

 

寒い空気に触れると、末梢の血管が収縮して熱を外に逃さないように働くため血圧が上昇します。

 

これは生理的な反応であり、健康なカラダであれば問題ありませんが、血圧が高めの人は通常よりもさらに高い血圧となることで、脳出血などを引き起こしやすくなるのです。

 

11月から3月にかけて脳出血は多発する傾向にあるので、これからの時期は特に注意しなければいけません。

 

(注意点①)注意するべき場所

急激な温度変化が起こりやすい場所を中心に気をつける必要があります。

 

温度変化が起こりやすい場面をあらかじめ知っておくことで、対処できることもあります。

 

まずは注意すべき状況を見ていきましょう。

注意すべき状況

  • 暖房の効いた屋内から屋外に出るとき
  • 暖かい部屋の外にあるトイレ
  • 暖房の効いていない寒い脱衣所への移動
  • 熱いお風呂に入った直後
  • 早朝に起きたとき

暖かい場所から寒い場所に移動する際は、血圧が上昇しやすいのですが、「熱いお風呂に入ったとき」というのは暖かいところに移動するのになぜ?と思われた方はいませんか。

 

これは熱いお風呂に入る際に、42℃以上の温度では交感神経が優位に働いて、血圧を上昇させてしまうからです。

 

また早朝に起きた時も気をつける必要があります。

 

脳卒中発症の時間帯を調査した研究によると、午前6時から正午までの時間は脳卒中の発症率が最も高い時間帯と報告されています。

(William J. Elliott:Circadian Variation in the Timing of Stroke Onset.Stroke : a meta-analysis. 1998 May;29(5):992-6)

 

早朝(夜明けから1〜2時間)の時間帯は血圧が上昇しやすい時間帯でもあるので、特に注意する必要があるでしょう。

 

(注意点②)注意すべき人の特徴

注意点①では状況についてはお伝えしましたが、注意点②では血圧が上昇しやすい人の特徴をみていきましょう。

 

注意すべき人

  • 塩分を摂りすぎている人
  • 肥満の人
  • 運動不足の人
  • たばこやお酒を嗜む人
  • 糖尿病の人
  • ストレスの多い人

 

塩分の摂りすぎは高血圧との関連があるため注意すべきと言われていますが、塩分は影響していないとの研究結果も報告されています。

 

寒くなるとお鍋料理が美味しい季節になりますが、お鍋料理は塩分を過剰に摂取しやすくなります

 

すでに高血圧を患っている方が塩分に注意すべきというのはわかっていますので、高血圧のある方はお鍋料理のつけダレなどには注意しましょう。

 

 

肥満の人も正常体重の人よりも2〜3倍高血圧にかかりやすいとされています。

 

過食や過剰に分泌されたインスリンにより交感神経が興奮されることで、末梢血管が収縮し血圧が上昇しやすくなります。

さらに肥大した脂肪細胞の影響によっても血管が収縮して血圧が高くなります。

 

また運動は血管内皮機能を改善させる機能がありますが、寒い時期は運動不足になりやすく活動量の低下によって血圧が下がりにくくなります。

 

糖尿病においても有酸素運動が推奨されていますが、寒くなると運動不足となり血圧コントロールが不良となります。

 

慢性的にストレスがかかった状態も、交感神経が優位となり血圧が上昇しやすい傾向にあるため、冬場は特に注意が必要となります。

 

脳卒中の発症を予防するには?

 

冬場の脳卒中の発症を予防するには、上記した注意点2つを意識した生活習慣を送る必要があります。

 

1.急激な温度変化を避ける対策をする

・室内だけでなくトイレや脱衣所・浴室を温める

・保温性の高い衣類を身につける

・お湯の温度は41℃までにする

 

血圧の急激な上昇をさけるために、お風呂の際はかけ湯をしたり、半身浴をしてから全身浸かるようにするなど工夫が必要です。

 

室内の温度差を減らすことも大切です。入浴前は小型の暖房器具で脱衣所や浴室を温めるといった工夫をしましょう。

 

お風呂から上がった際は、温かいところから寒いところに移動することになり”ヒートショック”の危険もあります。私も過去に脱衣所で一度倒れた傾向があるので、温度差をなくすように心がけましょう。

 

我が家ではシャープのセラミックファンヒーターを脱衣所に置いて入浴前は温めています。実家ではアイリスオーヤマのセラミックファンヒーターを利用していますが、こちらも小型ながら温まりがいい印象です。

 

 

2.生活習慣を見直す

・すでに高血圧の人は塩分の摂りすぎに注意する

・アルコールや喫煙は止める

・適度な運動を行い体重を増やさないようにする

・朝の時間の運動は避ける

・ストレス発散をする

 

塩分の摂取やアルコール・タバコを控えるのは当然のことですが、運動にも注意しましょう。

 

朝型の気温が低い時間帯は、血圧が高い時間帯でもあるため、脳出血などの発症リスクが高まります。運動する際は暖かくなった時間帯の午後から行うことをオススメします。

 

ちなみに、日本脳卒中協会では脳卒中予防十か条を提示しているため、そちらも参考にされるとよいでしょう。

 

脳卒中予防10ヵ条

  1. 手始めに 高血圧から 治しましょう
  2. 糖尿病 放っておいたら 悔い残る
  3. 不整脈 見つかり次第 すぐ受診
  4. 予防には たばこを止める 意志を持て
  5. アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
  6. 高すぎる コレステロールも 見逃すな
  7. お食事の 塩分・脂肪 控えめに
  8. 体力に 合った運動 続けよう
  9. 万病の 引き金になる 太りすぎ
  10. 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ

(日本脳卒中協会:脳卒中予防十か条より

 

おわりに

冬場に脳卒中が増えるのは病院に勤めている時から言われていましたし、実際に入院してくる患者さまも多かったです。

 

すでに発症した方は再発のリスクが発症していない人に比べると高い傾向にあるため、今回お伝えした注意点をしっかりと理解して冬を乗り切りましょう。

 

参考文献

・William J. Elliott:Circadian Variation in the Timing of Stroke Onset.Stroke : a meta-analysis. 1998 May;29(5):992-6

・Niels Albert Graudal et al.:Effects of low sodium diet versus high sodium diet on blood pressure, renin, aldosterone, catecholamines, cholesterol, and triglyceride.Cochrane Database Syst Rev . 2020 Dec 12;12(12)

・Alma J Adler et al.:Reduced dietary salt for the prevention of cardiovascular disease.Cochrane Database Syst Rev . 2014 Dec 18;2014(12)

・John J V McMurray et al.:ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure 2012: The Task Force for the Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure 2012 of the European Society of Cardiology. Developed in collaboration with the Heart Failure Association (HFA) of the ESC.Eur Heart J . 2012 Jul;33(14):1787-847. 

・A Gauthier et al.:Salt or no salt in the treatment of cirrhotic ascites: a randomised study.Gut . 1986 Jun;27(6):705-9.

・Kiran Hussain et al.:Restriction of salt, caffeine and alcohol intake for the treatment of Ménière's disease or syndrome.Cochrane Database Syst Rev . 2018 Dec 31;12(12)

・髙橋 敦彦.肥満の有無が将来の血圧値に与える影響.日大生活科研報(Rep. Res. Inst. Sci. for Liv., Nihon Univ.)43;39 ~ 44, 2020

 

 

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  • この記事を書いた人

田中 宏樹

After Reha代表の田中宏樹です。医療保険、介護保険分野のそれぞれで経験を積みながら、経営・マネジメントの勉強・情報発信も行っています。認定理学療法士(脳血管・運動器)/ ドイツ筋骨格医学会認定マニュアルセラピスト / PNFアドバンスコース(3B)修了 / FBL Klein-Vogelbach 1,2a+b修了 / 成人ボバースアプローチ基礎講習会修了 / 健康経営EXアドバイザー /企業経営アドバイザー/作業管理士

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