健康経営とは「労働者の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に実践する経営手法」であることを前回の記事でお伝えしました。
健康経営の必要性については「生産性の向上」というキーワードが重要になります。
今回は、さらに深掘りして健康経営のメリットについて考えていきます。
健康経営のメリット
企業側のメリット
健康経営に取り組むと企業にはどのような変化があるのでしょうか。
1.労働生産性の向上
ヒト・モノ・カネ・情報の経営資源のなかでも特に重要となるは「ヒト」でしょう。
従業員は企業にとって最も大切な資源であり、従業員なくして事業が成立することはないといっても過言ではないでしょう。
長時間労働や時間外労働など職場環境がストレスとなり、従業員が不健康な状態になると従業員が急に休んだり、退職するなど業務を効率的に行うこと以外にも、弊害が出てきます。
とくに少人数で経営されている中小企業においては死活問題となりかねません。
日本の中小企業を対象とした吉井らの研究では”従業員の健康は労働生産性に影響している”ことが示唆されています。
日本労働研究雑誌(2018年):中小企業における労働生産性の損失とその影響要因
2.社会からの評価が高まる
健康経営を行うことで、企業のイメージアップにつながるといったメリットも内在しています。
健康経営には評価制度が存在し、経済産業省が設計している顕彰制度の「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人認定制度」があります。
「健康経営銘柄」では長期的な視点により企業価値の向上を重視する投資家にとって魅力ある企業にうつるといったメリットがあります。
また「健康経営優良法人認定制度」では健康経営に取り組む企業を”見える化”することで、従業員や求職者、ステークホルダーなどから社会的な評価を受けやすくなるといったメリットもあります。
簡単位言えばブラック企業ではなく、ホワイト企業であるというイメージが浸透し、イメージアップに繋がるといったことです。
また金融機関からの借入の際に金利優遇などの加点もあります。
3.離職率の軽減
健康をキーワードに、従業員に寄り添った企業であること示すことで、従業員のモチベーションが保たれ、離職率の軽減につながります。
健康増進を図ることで退職や求職の割合が低下するだけでなく、職場の活性化にもつながり、生産性の向上へと波及しています。
また離職率の軽減に加えて、採用力の強化にもつながります。
就活生やそのご両親は、ブラック企業への就職を回避したいと思うのは当然のことです。
うちの企業はホワイト企業ですと「見える化」されせることで、「従業員の健康管理に配慮している企業」であると認識されることで、採用活動の活性化につながります。
4.自社の保険料負担を抑える
健康経営に注目が集まっている背景に、高齢化と医療の高度化による国民医療費の増加があげられます。
また従業員のストレスや健康障害による影響も大きな問題となっています。
健康保険料は企業と従業員が折半しているため、健康保険料が増加することで、その半分を福利厚生費として負担する企業を圧迫することになります。
企業側が従業員の健康の維持・増進を図り、健康度をあげることで、医療コストを抑えるだけでなく、社会保障制度を維持する意味合いも持っています。
従業員のメリット
健康経営に取り組む際の従業員側のメリットとしては以下のことがあげられます。
1.自分自身の健康維持、増進につながる
企業が健康経営に取り組む背景を含めて従業員に説明することで、従業員1人ひとりが健康に対して意識するようになります。
健康に対して意識することで、ランチを持参したり、飲酒の軽減、定期的な運動といった習慣が身につき、生活習慣病などの予防につながるといったメリットがあります。
2.ワーク・ライフ・バランスが高まる
従業員の健康に対する意識が向上することで、仕事を効率化して、残業など長時間労働を減少させようとする意識が芽生えます。
業務の効率化により、空いた時間を趣味や家庭への時間を増やすことができます。
この私生活面の満足度がさらに個人のモチベーションにつながり、好循環を産むことができます。
このように健康を意識して取り組むことで働き方や日常生活の見直しにつながり、個々の社員のパフォーマンス向上が期待できるメリットがあります。
おわりに
健康経営にはメリットが多く存在しています。
しかしデメリットも存在しており、短期的な投資効果が見込めないことや、データ集取や管理コストの増大などの問題もあります。
そうはいっても、経営とはゴーイングコンサーンと言われるように、永続企業体として活動していくことです。
長期的な目線で経営していくのであれば「ヒト」は重要な資源ですので、従業員と寄り添った経営をすることが、企業価値の向上へと繋がるのではないでしょうか。