日本は国民医療費の増大が深刻となっていますが、高齢化率が30%に迫っていることもあり、これによる医療費の増大も少なからず影響していると思われます。
医療費の増大はほかにも、医療技術の進歩が影響していることも考えられ、病気にかかっても長く生き続けることが出来るようになっています。
平均寿命は延びていますが、一方健康寿命はどうでしょう。
今回は、この健康寿命と絡めて、グループでの運動のメリットをお伝えしていきたいと思います。
健康寿命とは
「健康で日常生活を支障なく送ることのできる期間」のことで、平均寿命よりも先に訪れる寿命になります。
日本の平均寿命は2017年においては、男性:81.09歳、女性:87.26歳となっています。
厚生労働省 平成 29 年簡易生命表の概況より
一方、健康寿命については2016年で、男性:72.14歳、女性:74.79歳となっています。
厚生労働省「第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料」より
グラフにするとこんな感じになります。
この平均寿命と健康寿命の差ですが、この期間は何らかの介護を必要とする期間と考えてもらえるといいかと思います。
過去の統計データを見ても、平均寿命は延びていますが、この平均寿命と健康寿命の差はさほど縮まっていません。
このことから、今の世の中どんなに長生きをしても8年前後は病気などにより、何らかの介護を必要とする日々を過ごすことになりそうです。
健康寿命を延ばすには?
さて、8年前後も介護が必要なのかと思われたかもしれませんが、今までの話は、あくまで統計上の話になります。
平均としてはそれぐらいですが、もちろん健康寿命と平均寿命の差が短い方もいらっしゃいます。
では、老後を楽しく過ごすために重要となる健康寿命を延ばすにはどうしたらよいのでしょう。
国は2000年から健康寿命を延ばすために、「健康日本21」と呼ばれる国民健康づくり運動を始めました。
そして2013年からは10年計画で次のステップである「健康日本21(第二次)」がスタートしました。
これによると
- 健康寿命の延伸と健康格差の縮小の実現
- 主要な生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底
- 社会生活を営むために必要な機能の維持・向上
- 健康を支え、守るための社会環境の整備
- 栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善
の5つが挙げられています。
基本的には生活習慣病の予防や、健康維持、栄養など包括的な社会整備が挙げられています。
厚生労働省 国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針の全部改正について より
当たり前のことも多いのですが、実は健康寿命の延伸については他にも、いろいろな研究報告がされています。
個々では”個人よりもグループで”という内容をお示ししたいと思います。
運動は1人でするより仲間と
地域における介護予防の効果を調べた研究において、東京女子医科大学の金森先生らが面白結果を報告されています。
「高齢者がスポーツグループに参加することで、1人で運動すること以上に介護予防に効果的である可能性がある」といった内容でした。
金森 悟 :地域のスポーツグループへの参加と介護予防 理学療法ジャーナル Vol.54 No.3より
1人で運動するよりも、スポーツグループ(体操、ウォーキング、グランドゴルフ、登山、太極拳、卓球、ヨガなど)で運動する方が介護のリスクが低かったとの報告があります。
また面白いのが、実際に運動しなくてもスポーツグループに参加するだけで、1人で何もしないよりもいいという結果です。
介護予防の観点からすると、1人での運動は孤独で結構続かない方が多い。
逆に友人たちと運動する方やジムに通われる方は非常に若々しい印象があります。
実際にジムで講演させてもらった際は、みなさん痛みなどカラダの悩みを持たれながら、笑顔も多く積極的な方が多い印象でした。
これから運動を始めようとする方は、誰かと一緒に始めることをおすすめしたいと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか。
運動がいいのはわかっているし、健康寿命が延びるのもわかっている。
でも始められないし、始めても続かないという方は、是非夫婦で、またはご友人とウォーキングからでも始めてみてはいかがでしょうか。
病院、施設で働いてみて感じたのは、病気になってからでは何もできず、やりたいことを諦めている方が大勢います。
健康寿命を延ばして、老後の人生を楽しく、やりたい事ができるように、カラダづくりをしていきましょう。