「1歳になったけど、まだ座れない」反り返りはなぜ起きる?

「1歳になったんですけど、まだ座れなくて」

訪問先で、こんな相談をよく受けます。よくよく聞くと、多くの方がこう続けられます。

 

「抱っこすると、後ろに反るので、だっこもしにくいです」

 

床に座らせると、腰が落ちて後ろにパタンと倒れる。食事のときも、椅子の上でお尻がずってきて、ずり落ちそうな姿勢になる。

 

今回外来で来られたお子さんがまさにこの様な感じだったので、今回は座れないの原因を「反る」の視点から解説していきます。

いちばん大事なこと

発達の順番や早い遅いには、大きな個人差があります。それは本当です。

 

ただ、「1歳になっても座位が安定しない」ことと、「強い反り返りが続いている」ことが重なっているとき。これは、カラダの土台で何かが起きているサインかもしれません。

 

この記事を読む前でも、読み終えた後でもかまいません。かかりつけの小児科、自治体の発達相談、乳幼児健診の場で、一度きちんと診てもらってください。

 

筋緊張の状態、生まれつきの反射の残り方、左右差。これらは専門家が実際に触れて、動かして、はじめて分かることです。

 

そのうえで、子どもに直接触れながら動きを見てきた、私なりの視点をお伝えします。

座ることは、「積み上げの一番上」にある

ずり這いする子供

座るのは、ある日急にできるようになる能力ではありません。その下に、いくつもの段があります。

  1. 首がすわる:重力に負けずに頭を支える。土台のいちばん下の石です。
  2. うつ伏せで肘をついて顔を上げる:肩と腕でカラダを押し上げ、背中側の筋肉と肩の安定が育ちます。
  3. 寝返り・カラダをねじる:上半身と下半身が別々に動く。この「ねじる力」が、あとで座ったまま横を向いたり、倒れそうなときに手をつく力になります。
  4. 手と手が真ん中で出会う。足を持って口に運ぶ:実は、座位にとっていちばん大事な段です。
  5. 座る


こうして並べると気づきませんか?

 

座位は「腰の力」だけの問題ではないんです。首、肩、ねじれ、そしてお腹側の力。それらがそろって、はじめて釣り合いが取れる。

 

座るとは、カラダの中の綱引きが引き分けになった状態のことなんです。

反り返りは「クセ」でも「抵抗」でもない

赤ちゃんの発達には、はっきりした順番があります。

 

伸ばす力が先に育ち、丸める力があとから追いつく。

 

生まれたばかりの赤ちゃんが、ぐっと背中を反らせる。あれは異常ではなく、伸ばす方向の力が先に立ち上がるからです。

 

そのあとを追いかけるように、丸める力がやってきます。

 

  • 生後4か月ごろ、両手が胸の前であう。
  • 生後5〜6か月ごろ、自分の足をつかんで口に運ぶ。

 

あの「だんご虫」のかっこう。あれこそが丸める力(抗重力屈曲活動)が育ってきた証拠です。

 

この丸める力が育ちきらないまま時間が過ぎると、カラダは伸ばす方向にばかり使うことになります。

 

反ると、カラダは一本の棒のように固まります。棒は倒れません。安定します。でも、棒は座れないんです。曲がらないから。

 

つまり反り返りは、その子が見つけた「安定するための、その子なりの答え」とも言えます。

 

落ちないために、崩れないために、固めている。そう考えてみてください。

 

背景にあるかもしれないこと

丸める力が、まだ育っていない

真ん中で手を合わせる、足を持つ、おへそを見る。この経験が少ないと、お腹側の使い方を覚えられません。

うつ伏せの時間が、結果として少なくなっている

反り返りが強い子ほどうつ伏せを嫌がって泣く。泣くから仰向けに戻す。当然のことです。こうして、いちばん必要な姿勢の時間がいちばん減っていく。

 

ご家庭の努力不足ではなく、カラダの状態が作り出した悪循環です。だから、抜け出し方のほうを一緒に考えます。

揺れや傾きが「怖い」

耳の奥の前庭覚が過敏だと、少し傾いただけで「落ちる!」と脳が判断し、全身を固めて反る。反り返りが防御反応であることもあります。

触られる感覚が不快

支えようと触れた手を押し返すように反る子がいます。

姿勢の緊張を調整する仕組みそのもの

筋緊張の高低や左右差、原始反射の残存。ここは医療機関でしか判断できない領域です。

今日からできること

母親と赤ちゃん

抱っこを「丸く」する

縦抱きで背中を伸ばしたまま抱えると、反りの方向を後押ししてしまいます。

 

膝を曲げて、お尻を少し丸めて、カラダ全体がゆるいCの字になるように。

 

向かい合わせに抱いて、目が合う位置に顔を持ってくる。それだけで、反りが減る子はけっこういます。

 

シーツに包んであげることも、よくお伝えする方法の1つです。

支える場所を、少しずつ下げていく

いきなり床に座らせて手を離すのは、この段階の子にはハードルが高すぎます。

 

まず大人の手で胸のあたりを支えて座らせる。そこで手が使えて、遊べるようになったら、支える位置をみぞおちへ。次に骨盤へ。支える位置を1段ずつ下げていく。

 

これが座位を育てる、いちばん確実な階段です。

 

「できないところを練習させる」のではなく、「できる高さから始める」ということなんです。

足の裏を、どこかにつける

足の裏が床や大人の太ももに触れていると、それだけで安定します。足裏は、「ここが地面だ」と脳に教えてくれるセンサーの塊だからです。

 

宙ぶらりんの足は、不安の元になります。

真ん中で遊ぶ

おもちゃを、顔の正面・胸の前に置く。両手で持たせる。仰向けで足を持って遊ぶ。

 

「だんご虫」の姿勢を、遊びの中で何度も作る。これが、丸める力を育てる関わりになります。

反ったとき、力で押し戻さない

反りに力で対抗すると、子どもはもっと強く反ります。綱引きと同じで、引けば引き返される。

 

反ったら、いったん受け止めて、ゆっくり揺らして、力が抜ける瞬間を待つ。

 

抜けたところで、丸い姿勢に誘導する。待つことが、関わりです。

気になるときは、動画を1分

外来では、子どもは緊張していつもと違う動きをします。泣いて何もできないこともよくあります。

 

座らせたときの様子、抱っこで反り返る瞬間、うつ伏せにしたときの反応。普段のカラダが映った1分の動画は、私たち専門職に本当に多くのことを教えてくれます。

 

相談に行くときは、ぜひ持っていってください。

After Rehaについて

「座れない」「反り返る」——その困りごとの答えを、一緒に探し直すのが、発達を専門にする理学療法士・作業療法士の役割です。

 

After Rehaは宮崎県で、園や事業所に直接うかがう形の運動療育を行っています。「病院に行くほどではない気がするけれど、気になる」。そんなときに、お子さんとご家族が少しでも安心して過ごせる場所でありたいと思っています。

 

姿勢のこと、動きのこと、遊びのこと。気になることがあれば、いつでも声をかけてください。

お問合せ

 

 

 

 

noteの方ではもう少し詳しく解説しているので、合わせて覗いてみてください。

 

  • この記事を書いた人

田中 宏樹

After Reha代表の田中宏樹です。医療保険、介護保険分野のそれぞれで経験を積みながら、経営・マネジメントの勉強・情報発信も行っています。認定理学療法士(脳血管・運動器)/ ドイツ筋骨格医学会認定マニュアルセラピスト / PNFアドバンスコース(3B)修了 / FBL Klein-Vogelbach 1,2a+b修了 / 成人ボバースアプローチ基礎講習会修了 / 健康経営EXアドバイザー /企業経営アドバイザー/作業管理士

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