筋肉をあきらめない!!いくつになっても向上する筋力の基礎知識

「もう歳だから・・・」そういって運動しない理由をつくっていませんか?

運動をして筋力を保つことは、生涯100年時代に備えるには必要不可欠です。

たとえ高齢期の方でも適度な筋トレを行うことで筋力が向上し、運動自体も安全性も高いことが報告されています。

今回は年齢によって筋力低下が起こる要因と、その効果についてお伝えしていきます。

この記事の内容

・筋肉の基礎

・骨格筋の加齢による変化

・加齢に対する筋トレの効果

筋肉の基礎

筋肉の状態を示す主な指標として「筋力」「骨格筋量」の2つがあげられ、いずれの指標も加齢に伴って低下します。

筋力

筋力は筋肉の断面積(筋肉の太さ)に比例することから、筋力と骨格筋量はほぼ同義と考えられがちですが、実際は異なります。

加齢による影響をより早くから受けやすいのは筋力の方だとされ、骨格筋量はその後遅れて低下すると報告されています。
(Braian C Clark.et al:What is dynapenia? Nutrition . 2012 May;28(5):495-503.)

文献によって異なりますが、筋力は20歳から30歳代でピークになると、40〜50歳ごろから低下する傾向にあり、60歳ごろまでは加齢に伴って年間2〜3%程度低下します。

骨格筋量

骨格筋量の前に、骨格筋について少し触れておきましょう。

骨格筋とは?

筋肉の種類のひとつで、骨格に沿って分布しており、身体の活動を支えているもの。
一般に筋肉と呼ばれているものはこれを指す。

骨格に沿って付いている筋肉のことで、その収縮によって身体を支え、動かしています。
一般的には単に筋肉という場合、この骨格筋のことを指します。

自分の意志で動かすことができることから随意筋とも呼ばれ、組織上は横紋筋という種類になります。
これに対し内臓筋は平滑筋であり、自由に動かせるわけではないので不随意筋であるといえます。

(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット 骨格筋)

骨格筋は運動することで発達するため、運動を行うことで骨格筋の量は増加します。

骨格筋量は、このカラダを動かすことのできる筋肉の量を言います。

低下しやすい骨格筋の種類

筋肉にも影響を受けやすい筋肉と受けにくい筋肉があります。

太腿の前の筋肉(膝を伸ばす筋肉:大腿四頭筋)については、30歳ごろから低下する傾向にありますが、体幹の筋力については50歳ごろからの低下する傾向にあります。また肘を曲げる筋力においては年齢による影響を受けないとする報告もあります。
(VIITASALO J. T,et al: Muscular strength profiles and anthropometry in random samples of men aged 31–35, 51–55 and 71–75 years.Ergonomics 28, 1563-1574, 1985)

年齢によって筋力が落ちやすい筋肉としては、「抗重力筋」と言われる重力に対して姿勢を保つ筋肉が多いとされており、脊柱起立筋、大腿四頭筋、大殿筋、ハムストリングス、前脛骨筋などがあります。

これらの骨格筋の機能低下が起こることで、日常生活に支障を来しやすくなります。

最近ではフレイルサルコペニアといった用語が広まってきていますが、加齢による筋力によって要介護状態を回避するためにも、骨格筋の機能を保つことで健康寿命の延伸につながると考えられます。

骨格筋の加齢による変化

加齢に伴って骨格筋は変化しますが、それには特徴があります。

特徴

・筋線維タイプの変化

・運動単位の減少

・神経発火頻度の減少

・骨格筋内脂肪の浸潤

難しい用語ばかりですが、簡単に解説しますので1つ1つ見ていきましょう。

筋線維タイプの変化

筋肉を構成するものに、筋線維というものがあります。この筋線維が束になって筋肉を形成しています。

筋線維には「収縮する速度は遅いが持久性に優れる」ものと「疲労しやすいが瞬発性に優れる」ものの2種類があります。

加齢に伴って「瞬発性に優れる」筋肉は減少しますが、「持久性に優れる」筋肉は維持されると言われています。
(J Lexell: Human aging, muscle mass, and fiber type composition.J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 1995 Nov;50 Spec No:11-6.)

「持久性に優れる」筋肉は力を発揮しにくいため、「瞬発性に優れる」筋肉が減少することで相対的に筋力も低下してしまします。

しかし高齢者でも筋トレを行うことで、どちらの筋線維も増加するため、筋力増強が十分に期待できます。

運動単位の減少

筋肉を構成する筋線維は、力を発揮(収縮)するために神経と必ず繋がりがあります。

この筋線維に直接司令をする神経を運動神経と言います。

運動神経は1つの筋線維だけでなく、複数の筋線維に指令を出します。この1つの運動神経が指令を送れる筋線維の集合体を運動単位と言います。

加齢に伴って運動単位数は減少するとされており、若年者に比べて高齢者では30~50%減少するとの報告もあります。
(M. Piasecki, et al:Failure to expand the motor unit size to compensate for declining motor unit numbers distinguishes sarcopenic from non‐sarcopenic older men. J Physiol. 2018 May 1;596(9):1627-1637. )

強い筋力を発揮する場合には、運動単位の数を増加させなければいけません。逆に言えば、複数集まった運動単位の数が減少することで、筋肉を動かす力が100%→50%になるため筋力が低下することになります。

神経発火頻度の減少

神経発火頻度とは、筋肉に対する指令の頻度のことを言い、発火頻度と筋肉が発揮する力には直接的な関係があります。

加齢とともに発火頻度も影響を受け、年を重ねるごとに発火頻度が低下するため、結果的に筋力が低下してしまいます。

骨格筋内脂肪の変化

筋肉(筋線維)は筋膜という膜に包まれていますが、この筋膜内の筋肉に混じっている脂肪のことを骨格筋内脂肪と言います。

霜降りのお肉を想像していただければ良いでしょう。

 

加齢によって、写真のように霜降り状に脂肪が蓄積することで運動機能を低下させ、さらには糖尿病になる可能性が高くなることも報告されています。

骨格筋内脂肪はサルコペニア(筋肉減少症)とも関連しており、筋力が発揮しにくくなります。

加齢に対する筋トレの効果

筋トレに対する効果はこちらにも記載していますが、

参考【やらなきゃ損】メリットしかない!筋トレがもたらす7つの効果

みなさんは筋トレしてますか? 筋トレと聞くと「キツそう」「続かない」そういった方が多いのではないでしょうか。 実際指導する側の立場から見ても、筋トレを指導しても続かない方がほとんどです。   ...

続きを見る

今回は加齢と筋トレについて見ていきましょう。

筋トレと筋力

筋トレを行うことによって、筋力が向上することは周知の事実です。

しかし年齢によって筋トレ効果は違うのではないか?そう思ったことはありませんか?

同じトレーニングを中年期の方、高齢期の方どちらにも行った場合の効果は、ほぼ同じであるという報告があります。
(K Häkkinen, rt al: Changes in agonist-antagonist EMG, muscle CSA, and force during strength training in middle-aged and older people. J Appl Physiol (1985) . 1998 Apr;84(4):1341-9)

トレーニング初期段階は筋力増強の効果が高く、筋線維が大きくなると言うよりも運動単位や神経発火頻度といった神経系によって筋力が向上されます。

筋トレと筋の質

また身体活動の減少は骨格筋量を減少させるだけでなく、骨格筋内脂肪を増加させてしまい、糖尿病や生活習慣病を発症するリスクも高めてしまいます。

筋トレを行うことで骨格筋量は維持され、骨格筋内脂肪量は減少するという報告もあり、筋トレを行うことは筋肉の「量」が減少するのを予防するだけでなく、「質」の部分も変化させることができます。
(Madoka Ogawa,et al: Effects of 8 weeks of bed rest with or without resistance exercise intervention on the volume of the muscle tissue and the adipose tissues of the thigh.  Physiological Report Volume8, Issue18 September 2020 e14560)

筋トレの持続効果

筋トレを行っても、途中で止めてしまっては効果が期待できなくなります。

トレーニングを止めてから12週間で、トレーニングによって向上した筋肉は半減し、さらに24週間後にはほぼ0になる報告もあります。
(K J Elliott, et al: Effects of resistance training and detraining on muscle strength and blood lipid profiles in postmenopausal women. Br J Sports Med . 2002 Oct;36(5):340-344.)

筋トレと強度

筋トレによって筋力をつける場合には、基本的には高負荷のトレーニングを行う必要があります。

だが高負荷のトレーニングになるとカラダを痛めることもあり、加齢によって衰えたカラダに大きな負荷をかけることはオススメできません。

低負荷でも同等の効果を示した研究結果も報告されており、トレーニングを行う上では「負荷量」だけでなく、「回数」「セット数」を調整してトータルの運動量でメニューを組むのがオススメです。

筋トレと食事

単純に筋トレだけを行う場合、注意するべき点がいくつかあります。

1つは、人によっては筋トレをすることで骨格筋量は変わらないどころか、減少する例もあるという点です。高齢期の方を対象とした研究では、筋力は全員が向上していたにもかかわらず、約1/3の対象者が除脂肪量(脂肪を除いた体重のこと)、筋線維の直径が減少していると報告している研究もあります。
(Tyler A Churchward-Venne, et al: There Are No Nonresponders to Resistance-Type Exercise Training in Older Men and Women. J Am Med Dir Assoc . 2015 May 1;16(5):400-411. )

加齢によってサルコペニアやフレイルといった方も増えており、この場合には運動以外にもたんぱく質の摂取量の減少が影響していることがあります。

高齢期の場合、若年者よりもたんぱく質摂取の意義があるとされているため、筋トレとたんぱく質摂取は怠らないようにしましょう。

おわりに

筋力は年齢に関係なく向上しますが、途中で止めてしまっては効果が半減もしくはゼロになってしまいます。

低負荷の強度でも頻度を増やすなどで、継続できる筋力トレーニングを行うことが大切になります。

とくに筋力トレを始めてからの2か月間は筋力の向上が見られやすいため、最低でも2か月間は続けるようにしたいですね。

適切なトレーニングについては、パーソナルトレーナーなど専門家と相談して実施しましょう。

人生100年時代、カラダの健康が最も大切になります。「カラダが資本」ということを忘れずに、運動していきましょう。

 

参考文献

・市橋則明:筋力トレーニ ングの基礎知識一筋力に影響する要因と筋力増加のメカニズムー.京都大学医療技術短期大学部紀要. 別冊, 健康人間学(1997), 9: 33-39

・諸角 一記ら:筋力増強における神経性要因および筋肥大性要因の分析:―最大筋出力時のウェーブレット変換による筋電図周波数解析および筋厚の変化―.理学療法学Supplement 2015(0), 0612, 2016

・下野俊哉:高齢者対する筋力トレーニングの効果に関する筋電図学的検討.理学療法学 第34巻第4号160〜162 (2007年)

・G Kamen,et al:Motor unit discharge behavior in older adults during maximal-effort contractions. J Appl Physiol (1985) . 1995 Dec;79(6):1908-13.

・R. Csapo, et al: Effects of resistance training with moderate vs heavy loads on muscle mass and strength in the elderly: A meta‐analysis. Volume26, Issue9 September 2016 Pages 995-1006

・Kasper Dideriksen, et al: Influence of Amino Acids, Dietary Protein, and Physical Activity on Muscle Mass Development in Humans. Nutrients. 2013 Mar; 5(3): 852–876

 

 

 

 

 

 

  • この記事を書いた人

田中 宏樹

After Reha代表の田中宏樹です。医療保険、介護保険分野のそれぞれで経験を積みながら、経営・マネジメントの勉強・情報発信も行っています。認定理学療法士(脳血管・運動器)/ ドイツ筋骨格医学会認定マニュアルセラピスト / PNFアドバンスコース(3B)修了 / FBL Klein-Vogelbach 1,2a+b修了 / 成人ボバースアプローチ基礎講習会修了 / 健康経営EXアドバイザー /企業経営アドバイザー/作業管理士

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