- 「そろそろ終わりにしようか」と声をかけたとたん、手が止まって動かなくなる。
- 予定が変わると聞いて、急に泣き出す。
- 着替えの途中で、靴下を持ったまま固まっている。
切り替えの場面で、こんな姿を見たことはありませんか。
言うことを聞かないように見えても「わがまま」とは言い切れません。本人は、止まりたくて止まっているわけではないのかもしれません。
この記事では、子どもの切り替えが難しくなる場面を「やめる・待つ・始める」の3段階に分けて、なぜ難しくなるのか、家庭や園で試せる工夫とあわせて解説していきます。
切り替えを3つの段階で見てみる

切り替えは1つの動きのようで、いくつかの段階に分けて考えることができます。
- やめる:今やっていることを終える。続けたい気持ちを手放す場面です。
- 待つ:次が分からない空白に耐える。何も決まっていない時間を過ごす場面です。
- 始める:次の活動に動き出す。頭と体を新しく動かす場面です。
これは研究で確立した考え方ではなく、現場で子どもを見ながら整理した私なりの考えです。あくまで目安として、子供の行動を眺めてみてください。
段階ごとに考えられる理由

切り替えが苦手な理由は何も1つとは限りません。ここでは、研究で報告されていることを手がかりに挙げてみます。
①やめる段階
気持ちや注意を切り替える力(認知的柔軟性)に差があることが、関わっているかもしれません。続けたい気持ちだけでなく、頭の中で「次へ」と切り替える作業そのものが重い。という見方です。
自閉スペクトラム症の実行機能を調べた235の研究・14,081人のまとめでは、平均すると差は小〜中程度で、個人差が大きいと報告されています(Demetriou et al. 2018)。
認知的柔軟性に絞ったまとめ(Lage et al. 2024)でも、同様の結果が示されています。
「平均すると小〜中程度」ということは、ほとんど困らない子もいれば、大きく困る子もいる、ということです。
②待つ段階
次に何が来るのか見えないと、不安が強くなるお子さんもよく現場では見かけます。見通しが持てない時間は、それだけで落ち着かないのです。
また時間の感じ方も関係しているかもしれません。
ADHDの時間の知覚を調べた55の研究のまとめでは、待ち時間が長く感じられることがあると示されています(Marx et al. 2022)。大人には1分でも、本人にはずっと続くように感じられている可能性があります。
③始める段階
動きや手順を先読みして組み立てるのは、思っている以上に子どもにとって負担の大きい作業になります。
発達性協調運動症(DCD)の研究をまとめた報告では、動きを予測して組み立てる難しさが指摘されています(Wilson et al. 2013)。音や肌ざわり等、感覚の不快さが重なることもあります。
なお検査のような課題の場面より、日常の場面のほうで困り感が目立つこともあると言われています。
つまずきやすい5つの場面

現場でよく見かける切り替えが難しい場面を5つピックアップしました。
チェックリスト
- 好きな活動の終わり:楽しいほど、やめるのが難しい
- 予定やルールの変更:頭の中の段取りが崩れる
- 順番待ち:何も起きない時間が長く感じられる
- 着替え・用具の準備:手順が多く、動きの組み立てが要る
- 次の活動の開始:何から手をつけるか迷う
体を動かす場面でも、よく見られますが、これはあくまで私の現場での経験からの推論ですので、参考程度にしてくださいね。
難しい段階でも出来ることを試す
土台になるのは「見通しを与えること。」そして「できたら認めること。」この2つです。
そのうえで、難しくなりやすい段階に合いそうな、その子ができそうなものを1つ選んでみます。
どの段階が難しいかを、場面ごとに眺めてみるのも手です。
流れを見せる
絵や写真で、今日の順番が見えるようにします。視覚的なスケジュールは、単一事例の研究が積み重なっている方法です(Knight et al. 2015)。
先に伝える
終わりの予告やタイマーも、よく使われます。ただ、効果の確認はこれからの段階です。
「まず・次に」で話す
「まず片づけ、次におやつ」のように、空白を短くします。
同じ合図を使う
毎回同じ言葉や音にすると、見通しが立ちやすくなることがあります。
できたら具体的に認める
「いいね」だけでなく、「自分でやめられたね」と、何ができたかを伝えます。
たとえば、やめる段階が難しいなら予告や同じ合図、待つ段階なら流れを見せること、始める段階なら「まず・次に」と認める声かけが合うかもしれません。
もっと詳しい内容は、noteに掲載しています。段階ごとの理由や研究の内容を、もう少し詳しく書いていますので、よければご覧ください。
note「田中ブラウン」はこちら
参考文献
- Demetriou EA, Lampit A, Quintana DS, Naismith SL, Song YJC, Pye JE, Hickie I, Guastella AJ. Autism spectrum disorders: a meta-analysis of executive function. Molecular Psychiatry. 2018;23(5):1198-1204. Springer Nature. doi:10.1038/mp.2017.75
- Lage C, Smith ES, Lawson RP. A meta-analysis of cognitive flexibility in autism spectrum disorder. Neuroscience and Biobehavioral Reviews. 2024;157:105511. Elsevier. doi:10.1016/j.neubiorev.2023.105511
- Marx I, Cortese S, Koelch MG, Hacker T. Meta-analysis: Altered perceptual timing abilities in attention-deficit/hyperactivity disorder. Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry. 2022;61(7):866-880. Elsevier. doi:10.1016/j.jaac.2021.12.004
- Wilson PH, Ruddock S, Smits-Engelsman B, Polatajko H, Blank R. Understanding performance deficits in developmental coordination disorder: a meta-analysis of recent research. Developmental Medicine & Child Neurology. 2013;55(3):217-228. Wiley. doi:10.1111/j.1469-8749.2012.04436.x
- Knight V, Sartini E, Spriggs AD. Evaluating visual activity schedules as evidence-based practice for individuals with autism spectrum disorders. Journal of Autism and Developmental Disorders. 2015;45(1):157-178. Springer. doi:10.1007/s10803-014-2201-z
- 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課地域生活・発達障害者支援室.事務連絡「被災した発達障害児・者等への避難所等における支援について」令和6年1月4日.厚生労働省.