とある本を読んで衝撃を受けた内容がありました。
それは「減塩はしなくてもよい」という内容です。
減塩活動が続いているなか、こういった報告があるのは驚きですよね。
今回は、白澤卓二先生の著書「すごい塩―長生きできて、料理もおいしい!」を参考に、塩について解説していきます。
これまでブログで掲載してきた記事と真逆の内容になりますから、その辺りはご理解いただきたいと思います。
減塩は不要だった!
「塩」と聞くと、健康に悪いと思っているかも多いのではないでしょうか。
塩は「高血圧」や「心筋梗塞」「脳梗塞」といった病気を引き起こすとされています。
医学の勉強を行う中でも、塩分の摂取量が多いことはカラダに害を及ぼすと学んできました。病院でも減塩食が提供されています。
いくつもの論文で論争が起こっていますが、実際は塩と高血圧の関係は未だに解明されていないのです。
つまり、現段階では「高血圧には減塩すればいい」とは言えないのです。
高血圧の記事についてはこちら
-
-
高血圧には要注意!気をつけたい6つの習慣
「高血圧」 誰もが耳にしたことがある有名な病気ですよね。 実際、担当していた患者様の多くが合併症として高血圧を有していました。 この高血圧により、「脳梗塞」や「脳出血」とい ...
減塩が不要な理由
理由①:元となった研究の方法が不適切
アメリカ医学研究所の報告によると、「アメリカで推奨されている塩分摂取量5.8kg/日の数値にはエビデンスがない」としています。
理由として、減塩を推奨する発端となった研究内容が不十分であることがあげられます。
その研究は、米国のルイス・ダール博士が行った日本の青森を含む世界5地域の研究結果です。
塩分摂取量の多い青森が高血圧の発症率が高かったことから、「塩=高血圧」となったようなのです。
多数の批判を受けて、調査をやり直したダール博士は、その後の研究で「高血圧には関係あるのは白米」と述べたと言われています。
(参照元)るいネット 若林勇夫「 戦後に形成された塩に関する間違った認識」
1972年に米国のメーネリー博士が発表した研究でも、「塩=高血圧」が報告されています。
詳細は省きますが、この研究方法には無理があり、人間に当てはめるには非現実的な実験だったとされています。
理由②:実は塩分摂取が多い方が血圧が下がる
塩が悪者という意見を覆すべく、32か国52のセンターで1万人以上のデータを整理した、1988年のインターソルト研究というものがあります。
この研究では、48のセンターで食塩摂取量と高血圧の発症には関係がなかったと結論付けています。
(参考)橋本壽夫 インターソルト・スタディの結果を巡る論争 (https://hts-saltworld.sakura.ne.jp/salt6/salt6-07-01.html)
さらに興味深いのは、関連性があるとすれば塩分摂取量が増えれば血圧が低下するという報告です。
中国のグループとアメリカのグループの比較なので、生活環境が異なり塩分で血圧が下がるとは言い切ません。
しかし、こういった研究結果もあるという事を知っておくと良いでしょう。
理由③:水分を摂取できれば問題ない
高血圧研究で世界的な権威の名古屋市立大学 青木久三先生の研究も興味深いものでした。
この研究もラットを利用していますが、結論は以下のとおりです。
「塩分と血圧には関係がない」
「塩分過多でも、水分を十分摂取し尿として排泄できる能力があれば血圧は上昇しない」
日本人の食塩摂取の目安
日本人の食塩摂取量の目標量をご存じでしょうか。
男性:7.5g/日未満
女性:6.5kg/日未満
(出典)厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
食塩感受性とは?
「塩分=高血圧」の結論は出ていませんが、食塩感受性高血圧の人は塩分を控えた方がいいとされています。
食塩感受性高血圧とは、食塩を取ると血圧が上がり、減らすと血圧が下がる人のことを指します。一方、塩分摂取量を取っても減らしても血圧があまり変わらない人を「食塩非感受性高血圧」といいます。
日本人の約2割は食塩感受性高血圧とされています。
食塩感受性の方は、腎臓の働きに異常が生じて、体外にナトリウムを排泄できなくなり血圧が上がります。
ただ、食塩感受性の有無を調べるにはまだ明確な定義や診断基準がないのが現状です。
ヒトは本来塩分を摂取しなければ生きていけません。
塩には人が摂取しなければいけない成分が多く含まれています。
食塩感受性のない人は、過度な減塩の必要性はあまりないと言えるでしょう。
塩が不足すると起こる症状
脱水症状になりやすい
最近は熱中症対策でも耳にしますが、汗をかいて水だけを摂取してもダメなのです。ご存じの方も多いと思いますが、水分と同時に塩分を摂取することが重要になります。
ス―パーでも「塩あめ」などをよく目にするようになりました。
汗からは水分だけでなく塩分も体外に排出されます。塩分と水分がカラダに一定量なければ、水だけを飲んでも体外に排出され、カラダに繋ぎ留めておくことができません。
塩分があることで、水分をカラダに貯めておくことができるのです。塩分が少ないことは結果的にカラダの中の水分が減少してしまうので、脱水症状に陥りやすくなります。
めまい,立ちくらみが起こる
カラダは塩分が不足すると、体外にナトリウムを排出しないように働きます。
同時に体内の水分も少ない状態に保とうとするため、血液量も少なくなり、脳への血流が低下しめまいや立ちくらみが起こります。
味覚を正常に保つ
過度な減塩の食事が続くと、ナトリウムなどの不足により味覚を感じにくくなります。
また減塩は食欲が落ちるため必要な栄養を摂取できなくなることがあります。
体温が下がる
塩には、体を温める作用があるのをご存じでしたか。
カロリー0なので、体を温めるには適している調味料になります。
東北地方の方は、寒い冬を塩分の大量摂取にしのいでいたとされています。
過度に減塩すると体温が低下し、基礎代謝にも影響するので注意しましょう。
天然の塩を摂取しよう
塩の摂取量を過度に気にする必要がないことは、これまで述べてきました。
しかしミネラルの補給源として塩分を先取するなら「天然塩」を摂取することです。
家庭で使用する塩は精製塩と呼ばれ、「塩化ナトリウムが99%以上」となっています。この高純度の精製塩の摂取は体内のミネラルバランスを崩してしまいます。
さらに、精製されたものは、体内で活性酸素が発生すると言われています。活性酸素は、カラダにさびさせ、がんとも関連があるとされています。
ス―パーに並んでいる安い塩は、コスト削減のため精製塩が多いので、購入する際は「天然塩」を購入するようにしましょう。
参考文献
・Gu D, et al:Hypertension. 2013;62(3):499-505.
・日本高血圧学会減塩委員会, 編:減塩のすべて―理論から実践まで. 南江堂, 2019.
・吉川敏一:癌の発生とその役割一癌治療の別の道一W'Waves Vol.2 No.1 1996
・加藤 規弘ら:食塩感受性の人種的特異性及び遺伝的素因に関する研究
・橋本壽夫:塩と健康(1)塩は高血圧に関係しているか?.日本海水学会誌 第53巻 第5号(1999)