腰痛や膝痛、慢性的な疲れで日常生活がつらい・・・スタイルが崩れて年老いて見えてしまう・・・これらのお悩みのある人はお尻に原因があるかもしれません。
お尻は生まれたときから重要な役割を担っています。
今回はカラダの不調やきれいなスタイルを取り戻すのに重要なお尻の筋肉について、病気や症状との関係性、スタイルに与える影響、そしてどこでも簡単にできる『尻トレ』の方法をお伝えいたします。
お尻は生まれたときから重要
お尻が垂れていると何か恥ずかしい気持ちになりませんか?きれいなお尻はふっくら丸みをおびて、健康的なカラダを象徴しています。
お尻は生まれた時、もっと言えばお母さんのお腹の中にいるときから重要な部分として発達しています。
6ヶ月ぐらいの胎児の赤ちゃんは、足を曲げた状態でお腹の中で丸まっています。この時どの部分が最も刺激されているかと言えば「お尻」です。足を曲げることでお尻の筋肉が引き伸ばされた状態となって、誕生まで過ごすのです。
お尻が刺激された状態からこの世に誕生するので、生まれてからハイハイや四つばい、そして立つ姿勢が上手に行えるようになるのです。
つまりお尻が弱くなってしまうと、移動することにとても悪い影響を及ぼしてしまいます。
また立っている姿勢を保持するのにも重要な役割を果たすので、2本足になった人間にとってお尻の筋肉はとても大切な筋肉の1つだと言えます。
お尻の筋肉は落ちやすい
お尻の筋肉は人が進化する過程でとても発達してきましたが、現在は全く逆で、大人になるほど衰えやすくなっています。
ご存じのように、筋肉は負荷をかけなければ衰えてしまうように出来ています。スポーツ選手のように高負荷な運動をすることでより強くなっていきますが、日常生活を送ることでも適度な負荷がかかり筋肉は維持されています。
重たいものを抱えたり、階段を昇ったりすることで自然と鍛えられているのです。
しかし最近は座り仕事が多く、活動量が極端に減っています。特に日本人は特に座っている時間が最も長い国民だと言われているので、筋肉が衰えやすいことが想像できるでしょう。
デスクワークの方に腰痛や肩こりが多いのも、筋肉を使わなくなることで血流が悪くなることが原因の1つです。
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お尻の筋肉は椅子に座って背もたれに寄りかかるような姿勢では働くことがありません。座っている時間が長い私たちはお尻の筋肉が衰えやすいのです。
また最近はエスカレーターやエレベーターを使い、階段を使うことが減っています。階段を昇る動作は日常生活においてお尻の筋肉が鍛えられるとても良い運動です。
日常で立って作業したり、階段を使う移動が多ければ自ずとお尻の筋肉は維持されるので、座る時間はできるだけ減らしていくようにしなければなりません。
お尻をつくる3つの筋肉
お尻の筋肉は主に3つの筋肉で構成されています。
お尻を作る筋肉
- 大殿筋(だいでんきん)
- 中殿筋(ちゅうでんきん)
- 小殿筋(しょうでんきん)
大殿筋(だいでんきん)
大殿筋はおしりの表層に位置する筋で、人が真っ直ぐ立つためにも大切な筋肉になります。
大殿筋は骨盤を介して背骨を下から支えたり、足からの衝撃を吸収するなど姿勢保持や歩行にも関係しています。
昨今テレワークが増えたことで、筋肉が硬くなったり、弱くなることで腰痛の引き金となっている筋肉でもあります。
中殿筋(ちゅうでんきん)
中殿筋は大殿筋の下に重なるように位置しており、骨盤の外側を覆っています。片足立ちで立つ時はこの中殿筋の活動がなければ、骨盤を水平に保持することはできません。
そのためリハビリの現場では転倒を防止するためにも必要な筋肉になります。
また後ろから見たときの横方向のお尻のボリュームに関係しています。ふっくらしたお尻を目指すには中殿筋も鍛えていく必要があるのです。
小殿筋(しょうでんきん)
小殿筋は大殿筋や中殿筋に比べて小さい筋肉のため、大きな力を発揮することが苦手な筋肉です。
小殿筋の位置は中殿筋に類似しているため、中殿筋の補助的な作用を行います。
ただし小殿筋は大腿骨を骨盤に押し付ける作用があるため、股関節の機能を上手に使うには小殿筋の働きも重要となります。
これら3つの筋肉以外にも坐骨神経痛にも関与するとされている「梨状筋」などがあります。
(現在は否定的な意見も多いですが。。)
カラダの不調や腰痛などの症状、スタイルに影響しやすい筋肉としては「大殿筋」と「中殿筋」が多いため、大殿筋と中殿筋に対する尻トレの方法を後ほどお伝えします。
お尻が弱るとみられる不調・スタイル変化
お尻の筋肉とカラダの不調
お尻は骨盤と筋肉で形作られていますが、お尻の筋肉が弱ることで、骨盤が歪んだり、全身の不調やカラダのゆがみが起こりパフォーマンスが落ちてしまいます。
お尻が関係している症状や病気の種類としては、以下のようなものがあります。
- 腰痛
- 膝痛
- 肩こり,首こり
- 尿もれ
- 坐骨神経痛
- 腰部脊柱管狭窄症,椎間板ヘルニア
- 立っているとすぐ疲れる など
腰痛や膝痛はお尻の筋肉を整えると症状が軽減することは臨床上よくあります。そのためどちらの症状に対してもセルフケアでは、お尻を緩める方法と鍛える方法をお伝えしています。
お尻の中でも大殿筋は人体の筋肉の中でも特に大きな筋肉量を有しています。
最も筋肉量が多いのは太ももの前面にある「大腿四頭筋」ですが、単体の筋肉で言えば大殿筋が最も大きいと言われています。
この大きな筋肉が衰えることで、骨を正しい位置に安定させることができなくなり、他の部位にストレスがかかることで椎間板ヘルニアなどの症状が見られるようになるのです。
また筋肉は熱を作り出し、血流にも関係するため、衰えてしまうと不調につながりやすくなります。
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お尻の筋肉は衰えると症状がでますが、筋肉が硬くなっても症状が出てしまいます。お尻は適度な柔軟性と張りがある方が、見た目も機能的にも良いのです。
お尻の筋肉とスタイル
理想的なお尻の形は「ハート型」です。ですが日本人は座っている時間が長いこともあり、骨盤が後傾しやすく、お尻が垂れた状態になっているケースが多々あります。
女性の場合は骨盤が後傾するとお尻だけでなく、バストラインが下がったり、下腹がポッコリ出たりと、スタイルに自信が持てなくなります。結果周囲からの目線を気にしてしまい、ストレスを抱える方もいらっしゃいます。
弱ったお尻の筋肉を鍛えることで、骨盤を本来の正しい位置に保持することができるようになると、理想的な姿勢を保つことができるようになり自信がつきます。
どこでもできる!お尻を鍛える方法3選
ここからは、お尻を鍛える方法をお伝えしていきます。お尻を効果的に鍛えるには「姿勢」が重要です。
カラダを前方に傾けた方が大殿筋が効果的に働きますし、片足立ちで運動する方が大殿筋・中殿筋はよりたくさん働くことができるので、強い負荷をかけたければこれらの姿勢で行うのが良いでしょう。
ここでは簡単にどこでもできるトレーニング方法を3つお伝えします。
尻トレ① 『ワイドスクワット』
スクワットは下半身をトータル的に強化できるとても効果的な運動です。
通常のスクワットからさらに発展させたのが「ワイドスクワット」です。
足を横に広げることで、内もも(内転筋群)も鍛えることができるため、腰痛予防や足のラインをキレイに魅せるのにも効果的です。
手順
- 肩幅よりも広めに足を開きます。
- つま先は正面に対して45°くらい外に向けます。
- 手を前方に出します。
- 太ももと床が水平に近くなるまで腰を落とします。
このとき体幹は30°ほど前方に傾けます。 - その後ゆっくりと立ち上がり、10回×2セット行います。
ココがポイント
視線は前方を向きながら、お尻を突き出すようにしてしゃがみます。
尻トレ②『アブダクション』
立った状態で簡単に行える尻トレに「アブダクション」があります。
アブダクションは足を横に開く動作のことで、大殿筋や中殿筋をピンポイントで強化できるトレーニングになります。
手順
- 椅子や壁に手をついて立ちます。
- 姿勢は垂直を保ったまま、片方の足を外に開きます。
この時つま先はやや内側を向くようにして足を開いていきます。 - 足を開いた状態で5秒間キープして元に戻します。
- この運動を片足5セットから始めましょう。
ココがポイント
足を開いた際にカラダが横に傾かないように注意しましょう。
尻トレ③ 『お尻引きあげ』
お尻引き締めは、尿漏れや腰痛予防にも効果的とされる骨盤底筋群も働きます。
骨盤底筋群は骨盤の下から内臓をハンモックのように支えており、腹圧を高めるためにも大切な筋肉になります。
お尻引き締めの運動は、大きな運動を伴わないので女性の方に特にオススメな尻トレです。
手順
- 肩幅に足を開いて垂直に立ちます。
- お尻に両手を当てます。
- 肛門を占めるようにして、手を当てたお尻に力を入れます。
- お尻に力を入れたまま10秒間キープします。
- 10秒経過したらすべての力を必ず抜きましょう。
ココがポイント
息を止めないように10秒間力を入れ続けます。1日5セットからまずは始めましょう。
3つ全ての尻トレを行う必要はなく、まずは自分に合った方法を見つけて続けることが大切です。
お尻の筋肉は衰えやすく鍛えやすいと言われているため、効果が出やすい反面、止めてしまうとすぐに弱ってしまいます。
立っているだけで出来る尻トレ③は続けやすいと思いますので、お尻の機能やスタイルを石するためにも毎日短時間で良いので続けるように心がけて下さい。
まとめ
いかがでしたか?
お尻の筋肉は健康面においても、美的な面においてもとても重要な筋肉になります。
今回はトレーニングの方法を3つほどお伝えしましたが、お尻を日常生活を鍛えるには『階段を昇る』ことが最も効果的です。
わざわざトレーニングまでしたくないとお考えの方は、日ごろから階段の昇り降りを行うように心がけましょう。
参考文献
- 相羽 宏 ら:腰痛に対する運動療法-理学療法的視点から- 脊髄外科
- 伊藤 陸ら:基本動作における大殿筋上部線維と下部線維の筋活動について.関西理学療法 2017 年 17 巻 p. 33-40
- Vandré Casagrande Figueiredo,et al:Volume for Muscle Hypertrophy and Health Outcomes: The Most Effective Variable in Resistance Training.Sports Med 2018 Mar;48(3):499-505.
- 藤澤宏幸ら:体幹前傾姿勢における股関節伸筋の活動―両脚立位,片脚立位での差異に着目して―.理学療法の歩み31 巻 1 号 2020 年1月 26-32
- 内田輝和:お尻の筋肉がすべて解決する 主婦の友社