「血中酸素濃度」と「心電図」の2つを測定できるようになった「Apple Watch Series 6」
今回は、普段とは視点を変えてガジェット紹介になります。//
医療現場の目線から実際にApple Watchが使えるのかどうか、購入して検証してみましたので、レビューしていきます。
購入モデル
今回購入したモデルは「Apple Watch Series 6(GPSモデル) 40mmシルバーアルミニウムケース」になります。
(仕様はこちら→Apple )
今回のApple Watch Series 6では、ヘルスケア面での進化があり、新たに血中酸素濃度(SpO2)が測定できるようになりました。
通常、医療機関では、パルスオキシメーターと呼ばれる機器を用いて、赤血球によって全身に運ばれる酸素の量を測定しています。
今回のApple Watch Series 6では、本体背面にあるLEDにより血管を照射し、血中酸素飽和度を測定しています。
医療機関で用いられるパルスオキシメーターの機能をウェアラブルデバイス(身に着けるコンピューター機器)に搭載したのは画期的ですね。
Apple Watch シリーズ別 健康管理機能
Apple Watchに搭載されている、健康管理機能・緊急時の機能について見ていきましょう。
Apple Watch Series6 | Apple Watch SE | Apple Watch Series3 | |
光学式心拍センサー (心拍の通知) |
〇 | 〇 | 〇 |
電気心拍センサー (心電図記録) |
〇 | - | - |
転倒検出機能 | 〇 | 〇 | - |
血中酸素ウェルネスセンサー | 〇 | - | - |
光学式心拍センサー
「不規則な心拍」を通知する機能が備わっており、これは現在Apple Storeで購入できる全てのシリーズに搭載されています。
この機能もともとは、Apple Watch Series 4から利用できるようになっていましたが、日本においては厚生労働省の管理医療機器としての認可が必要とされており、使用できない状況でした。
しかし、2021年1月27日のアップデートによって、「iOS 14.4に対応したiPhone」と「watchOS 7.3」をインストールすることによって利用できるようになりました。
本体裏側の光学式心拍センサーを利用することで、心房細動の兆候がないかチェックしてくれます。安物とは明らかにセンサー数が異なります。
(写真左:4000円程度のウェアラブルウォッチ 右:Apple Watch Series 6 )
Apple公式には、「最低65分以上の時間をかけて5回の心拍リズムのチェックを行い、不規則な心拍リズムが検出されるとユーザーに通知します」とあります。
(出典)Apple Apple Watchに 心電図アプリケーションと 不規則な心拍の通知機能が登場
安静時や、歩行、運動時にバックグラウンドでも測定してくれるので、毎回自身でアプリケーションを開いて測定する手間がかかりません。
電気心拍センサー
こちらも2021年1月27日のアップデートにより、Apple Watch Series 4、5、6で「心電図を記録する機能」が利用できるようになりました。
これにより不整脈(心房細動など)の兆候がないかチェックできるようになりました。
「心電図アプリケーション」
心電図は本体サイドに付いている Digital Crownに指をあてて測定します。
心拍リズムは心房細動、洞調律、低心拍数、高心拍数、判定不能のいずれかに分類され、記録されたデータは、iPhone側のヘルスケアアプリケーションで確認することが出来ます。
こちらは、定期的に自動測定する機能はなく、自身で定期的に測定する必要があります。
転倒検出機能
Apple Watch Series 4から搭載された転倒検出機能ですが、実際に交通事故や転倒した女性の命を救うなど、複数の人が命を救われた機能になります。
加速度センサーとジャイロスコープ(物体の向きや角速度を検出)により、転倒を検知し、必要に応じて緊急通報サービスに連絡してくれる機能です。
1分間何の反応もないとApple Watch側で判断された場合、カウントダウンが始まり、装着した手首を叩き、警告音を鳴らします。
カウントダウンが終わると、自動的に緊急通報サービスに連絡する仕組みとなっています。
さらに、iPhoen側の「メディカルID」に登録されている緊急連絡先にもメッセージが送信されます。
注意ポイント
GPSモデルで自動通報するには、iPhoneと接続されている必要があります。
血中酸素ウェルネスセンサー
Apple Watch Series6 から搭載された、本体裏側の血中酸素ウェルネスセンサーにより、血液中に取り込まれた酸素のレベルを測定できるようになりました。
病院では入院している患者さんの呼吸状態を評価する際に、血中酸素濃度をよく測定しています。
リハビリ場面でも状態確認のために、よく利用しています。
気管支喘息や肺炎などの呼吸器系の症状を患ている方に欠かせない、パルスオキシメーターと類似の機能が利用できるようになったのはスゴイことです。
血中酸素ウェルネスは、アプリケーションを開いていつでも測定することができますが、バックグラウンドで測定もしてくれます。
ポイント
99~96%が標準値とされており、90%未満になると呼吸不全が疑われます。
「心電図」と「血中酸素濃度」は実際に使えるのか?
新しい機能が追加されたApple Watch Series 6ですが、医療機器との差はどの程度あるのでしょうか。
実際に測定してみて、検証してみました。
使用した医療機器は「生体情報モニタ OPV-1510 ライフメイトN」になります。
心電図
まずは心電図機能の方から確認しました。
なお、セッティングで数分の誤差がありますので予めご了承ください。
結果はこちら
スマホで見る際は写真が小さくて見えにくいのはご容赦いただきたいのですが、結果としては心拍数の違いはあれど、心拍数はすぐに変化するため誤差の範囲内と言っても良いでしょう。
心電図の方はライフメイトNの結果とほとんど変わりないため、心電図もそれなりに信用できる結果だと思われます。
ただ実は比較測定前にApple Watch側で測定すると「心房細動」と表示されることがありました。
その際の心電図はこちら。
医師ではないので診断はできませんが、記録された心電図を見る限りは、ノイズの影響によるものだと思います。
ライフメイトNを実際に見ながら測定しましたが、途中異常な波形やリズムはありませんでした。そのためApple Watchで測定する際は、リラックスした姿勢で力を抜いて測定する必要がありそうです。
万が一心房細動と判定された場合は、iPhone側に結果を出力する項目があるので、それをもって医師に相談するとよいでしょう。
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血中酸素濃度
続いて血中酸素濃度の測定を行いましたが、こちらもほとんど同じ結果が得られました。
Apple Watch | ライフメイトN |
99% | 98% |
この程度なら誤差の範囲と言っていいのではないでしょうか。
この結果からは、やはり医療機器と精度を比較すると完全ではありませんが、心電図機能は「それなりに使える」、血中酸素濃度は「使える」といった感じでしょう。
特に心電図は、常時測定しているわけではありませんし、洞調律と表示されていても、心臓には不整脈以外の病気もあるため、体調が優れないときは、すぐに医師に相談することが賢明でしょう。
おわりに
Apple Watchには、これらの機能以外にも、万歩計の機能や睡眠時間、マインドフルネスの機能までついています。
Apple Watchに限らず、最近のウェアラブルデバイスにはいろいろな機能が搭載されています。血圧が測定できたり、体温が測定できるものまで。
機能が充実しているウェアラブルデバイスですが、健康管理をするのは他でもない、あなた自身です。デバイスはその手助けをしてくれるツールであって、直接カラダを健康にしてくれるものではありません。
日頃の健康管理は「睡眠」「食事」「運動」で整えましょう。