腰痛は国民病の1つとされており、男性女性問わず、多くの方が悩まれている症状の1つです。
今回は腰痛で悩んでいる方に、自分で対処できる腰痛ケアの方法についてお伝えしていきます。
腰痛は国民病
腰痛を経験したことがある方も多いのではないでしょうか?
「ぎっくり腰」や「慢性的な腰痛」といった腰痛で、普段からお悩みの方も少なくありません。整骨院や整体院での施術で多いのも腰痛になります。
平成28年度の厚生労働省国民生活基礎調査によると、性別にみた有訴者率の上位5症状は以下のようになります。
(出典)厚生労働省 平成28年国民生活基礎調査 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/04.pdf
腰痛は、男性の1位で、女性でも2位になっています。
これらのことから、腰痛は国民病の1つとされています。
腰痛の原因は?
実は、腰痛はヒトが二足歩行を獲得したことが原因と言われています。
もともとは四足歩行であった祖先が、二足歩行を獲得したことで両手を使えるようになりました。
歩くことで食料を運んだり、手を使ってモノを作ることが出来るようになったのですが、このことが腰痛と関係しています。
手を使って重たいものを運ぶことが出来るようになったため、その負担が腰にかかるようになったのです。
また二足歩行になったことで、積み木を積み上げるような姿勢となりました。
通常、積み木のブロックが崩れないように、筋肉がしっかりとサポートすることで、カラダを支えています。
しかし猫背の姿勢などにより、骨盤よりも前にカラダが傾くと、腰への負担が増加するようになったのです。
以下の図は、姿勢別の椎間板への負荷を示したものです。
(出典)NACHEMSON A :THE LUMBAR SPAIN.AN ORTHOPAEDIC CHALLENGE.SPAIN 1:59-71,1976
立っている時の椎間板への負荷が100%だとすると、体幹を前方に倒すだけで150%に増加します。
また座ったままカラダを前に倒すと、負荷は185%まで増大します。
このように、不良姿勢によって脊椎や椎間板に負荷が加わることで、「椎間板ヘルニア」や「腰椎すべり症」といった腰椎症を引き起こすようになりました。
腰痛に関連する筋肉
腰痛で悩まれている方の多くは姿勢が悪いことによる、筋肉の硬さ、筋力低下が影響しています。
硬くなりやすい筋肉
図の赤丸で記載
脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)
後頭部・首の骨から骨盤まである長い筋肉です。脊柱起立筋は「腸肋筋(ちょうろくきん)」「最長筋(さいちょうきん)」「棘筋(きょくきん)」の3つの筋肉から構成されています。
脊柱起立筋は綺麗な姿勢を保つには欠かせない筋肉です。
そのため脊柱起立筋の筋力が落ちると背骨のS字カーブを保つことが出来なくなります。
また姿勢によっては常に緊張を強いられるため、硬結と呼ばれるシコリができることがあります。これによって血流の流れが悪くなり痛みが出現する場合があります。
前傾姿勢が多い、デスクワークや長時間の運転をされる方(トラック運転手など)は脊柱起立筋が原因となっている場合があります。
脊柱について知りたい方はこちらもチェックしてみて下さい。
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腸腰筋(ちょうようきん)
腸腰筋は「大腰筋(だいようきん)」と「腸骨筋(ちょうこつきん)」と呼ばれる筋肉で構成されています。
腸腰筋は股関節と体幹をつなぐ唯一の筋肉で、姿勢を保持するのに重要な役割を担っています。
股関節を曲げたり、カラダを前に倒す際に働く筋肉で、インナーマッスルの1種になります。カラダの深層に位置するため、ご自身で直接触るのが難しい筋肉でもあります。
腸腰筋は股関節が曲がった状態で緩みますが、デスクワークの時間が長くなると腸腰筋が短縮してしまい、腰が伸びにくくなります。
腰方形筋(ようほうけいきん)
腰方形筋は、体幹を左右に傾ける働きがあり、腰を反る働きもあります。
腰方形筋は下部の肋骨や腰骨から骨盤に付着している筋肉になり、硬くなりやすい筋肉の1つです。
重いものを持ち上げたり、前傾姿勢が多い方、カラダを片方に倒しながら作業する方は、腰方形筋に負担がかかり腰痛の原因になります。
弱くなりやすい筋肉
図の青丸で記載
腹横筋(ふくおうきん)
コルセットのように腹部全体を周囲を覆っている筋肉で、インナーマッスルの1種になります。
腹横筋は内臓や腰骨を安定させる作用があり、腹式呼吸でも働く筋肉になります。
内臓を正しい位置で支え、腰骨を支える作用があるため、腰痛と深い関連があるとされています。
背中を丸めるような悪い姿勢が続くと、腹横筋の機能が低下し腰痛を引きおこす原因となります。
大殿筋(だいでんきん)
大殿筋はおしりの表層に位置する筋で、人が直立するためにも大切な筋肉になります。
大殿筋は背骨を下から支えたり、足からの衝撃を吸収するなど姿勢保持や歩行にも関係しています。
昨今デスクワークなどが増えたことで、筋肉が硬くなったり、弱くなることで腰痛の引き金となっていることがあります。
腰痛予防のためのセルフケア
ここでは、一般的な腰痛ケアの方法について紹介していきます。
ストレッチ
腰痛と筋肉の硬さは密接に関係しています。この筋肉の硬さは、姿勢が悪いことが原因となっています。
特に猫背の姿勢やお腹を突き出したような姿勢など、カラダの筋肉に常に負担をかけてしまうような姿勢を取っていることが少なくありません。
腰痛で硬くなりやすい筋肉をストレッチすることは非常に効果的ですが、大きな筋肉に対しては長めにストレッチを行うなど、ある程度の知識が必要となります。
筋力トレーニング
腰痛と言えば、「体幹トレーニング」と言われるほど、腰痛に対して体幹の運動が推奨されています。
医師からの処方にも「体幹筋強化」と指示があるくらいなので、筋トレをしている方も多くいらっしゃいます。
しかし腰痛には、体幹以外からの影響もあるため、体幹トレーニングを行えば良くなるわけではありません。
しっかりと原因を把握せずに実施すると、逆に腰痛が悪化することもあるので注意が必要です。
腰痛に効果的なファンクショナル・ポイント
大殿筋のファンクショナル・ポイント
今回お伝えするのは大殿筋のファンクショナル・ポイントになります。
腰を反らすと腰痛が強くなるかたに特に効果的です。
セルフケアの方法
1.手のひらをおしりにあてます。
2.ピンクの部分が当たっている場所を確認する
このピンクの部分が当たっている場所は、大殿筋だけでなく、中殿筋(ちゅうでんきん)、小殿筋(しょうでんきん)と言われるおしりを構成する筋肉が存在する部位になります。
3.ピンクの部分に指先を当てて30秒間マッサージ
この部位は硬くなりやすく、しっかりと指先でマッサージします。
押し込むと軽い痛みを感じることがありますので、押し込みすぎには注意しましょう。
最後に腰を反ってみて痛みが取れていれば、セルフケアはOKです。
痛みがまだ残っている場合は、ほかの原因が考えられるので、硬くなっている筋肉をストレッチするなどで、変化を見てみましょう。
参考文献
・福井 勉:姿勢制御について.理学療法―臨床・研究・教育 13 : 2–6,2006.
・鈴木俊明ら:The Center of the Body -体幹機能の謎を探る- 第3版
・弓岡光徳ら:最新のボバースアプローチの紹介-立位から臥位への姿勢変換を中心に- West Kyushu Journal of Rehabilitation Sciences5:67-77,2012
・R.Louis Schltz et al: The ENDLESS WEB -Fascial Anatomy and Physical Reality-.
・P W Hodges et al:Contraction of the abdominal muscles associated with movement of the lower limb.Phys Ther . 1997 Feb;77(2):132-42
・Sheri P. Silfies et al :Differences in Feedforward Trunk Muscle Activity in Subgroups of Patients With Mechanical Low Back Pain. Arch Phys Med Rehabil Vol xx, Month 2009
・上野 彬恵:切り返し動作に体幹深部筋トレーニングが即時的に及ぼす影響
・佐藤 正裕:腰部・体幹障害予防とアスレティックトレーニング.日本アスレティックトレーニング学会誌 第5巻 第1号19-25(2019)
・大久保 雄:体幹筋機能のエビデンスとアスレティックトレーニング.日本アスレティックトレーニング学会誌 第 5 巻 第 1 号 3-11(2019)
・村尾昌信 ら:腰部多裂筋の選択的活動をコンセプトとした新たなexcerciseの筋電図学的解析 理学療法学 第42巻第2号 P114〜118 (2015年)