リンパってなぜ重要?免疫・美容・疲労回復にも大切なリンパの働き。

リンパと聞くと「リンパマッサージ」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

 

リンパマッサージは美容関係でよく出てくる言葉で、実際にリンパマッサージを行っている店舗も数多くあります。

 

ですが、リンパが一体何なのか、どんな役割があるのか詳しく知らずにマッサージを受けたり、セルフケアをされている方もいらっしゃるでしょう。

 

今回はこのリンパについて、詳しい働きや機能、セルフケアの方法についてお伝えしていきます。誤った方法で行うと、リンパマッサージ後に嘔吐したりされる方も少なくないので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。

 

リンパとは?

リンパは血管と同じように、カラダの全身に張り巡らされている排水管のようなもです。肉眼では見えずらいほど細い管が皮膚の下に無数に存在しています。

 

もう少し細かくお伝えすると、リンパは排水管のようなものを「リンパ管」、その中を流れる液体を「リンパ液」に分けることができます。

 

そしてリンパ管には道路のように道が集まった部分があり、その密になっている部分を「リンパ節」と呼んでいます。

 

リンパに関連する用語

  • リンパ管
  • リンパ液
  • リンパ節

 

リンパ管

リンパ液が流れる道で、静脈に沿うようにして全身に張りめぐされています。

 

構造も静脈とよく似ており、所々に弁があることで、リンパ液の逆流を防ぐ機能を持っています。

 

リンパ管はとても細く、リンパ管が集まっても髪の毛1本くらいの細さしかありません。

 

リンパ液

血液が血管内を通るように、リンパ液はリンパ管を通っています。

 

血管から染み出た血漿成分(血球成分が取り除かれたもの)やタンパク質の成分が、リンパ管に吸収されたものであり、血管で回収できない物質を水分とともにリンパ管内に回収しているものがリンパ液です。

 

専門的な説明になってしまいましたが、もっとわかりやすく言えば血管(毛細血管)からにじみ出た余分な水分や老廃物が回収された液体がリンパ液のことです。

 

無色~淡黄色の透明の液体になります。

リンパ節

リンパ管には道路のように道が集まった部分があり、その密になっている部分をリンパ節と呼んでいます。

 

リンパ節は脇の下や首、鎖骨の下、股関節のつけ根(鼡径部)などにあり、有害物質のろ過を行ってくれています。

 

リンパの流れが悪くなる原因

リンパ管を流れるリンパ液は、血液のように心臓のポンプの作用によって流れているわけではありません。

 

リンパ液は呼吸や関節や筋肉を動かすことによって流れています。

 

つまりリンパ液は関節や筋肉を動かすことによって循環しているため、一日中同じ姿勢で作業していたり、運動不足が続くと流れが悪くなってしまいます。

 

リンパの流れが悪くなる主な原因には他にも以下のようなものがあります。

  • 運動不足
  • 加齢
  • 手術
  • リンパ節の圧迫
  • その他(ストレス,冷え)

 

加齢とリンパ

運動不足は想像できるかと思いますが、加齢によってもリンパの流れが悪くなります。

 

血栓症や心臓、肝臓、腎臓といった内科的な問題がない場合は、この加齢によるリンパ管の変性を考慮するとされています。

 

また加齢による筋肉量の低下や柔軟性の低下が原因のこともあります。

 

このように現在病気を患っていないのであれば、加齢がリンパの流れに影響していることが考えられます。

 

手術とリンパの流れ

がんの治療後にリンパ節を切除した場合や、膝関節などの関節を手術したことが原因でリンパの流れが悪くなることがあります。

 

また放射線治療によっても流れが悪くなり、リンパ液が皮膚の下に過剰に溜まってむくみが生じることをリンパ浮腫と言います。

 

リンパ浮腫は術後すぐに生じることもあれば、人によっては10年後ぐらいに生じる場合など個人差があります。

 

リンパ浮腫については片側にみられるのか、両側で見られるのかによっても原因が異なることがあるので注意が必要です。

片側性 両側性
  • 深部静脈の血栓
  • 関節炎
  • リンパ管閉塞 など
  • 心不全
  • 心膜炎
  • 腎不全
  • 肝硬変
  • 栄養障害(低アルブミン血症)
  • アレルギー性血管性浮腫
  • 薬剤性浮腫 など

 

リンパ浮腫によってむくみが両側に出ている場合には、内科的な疾患が隠れていることもあるのでリラクゼーションサロンやリンパマッサージを受けに行くことには慎重になった方がよいでしょう。

 

リンパの流れが悪くなるとどうなる?

リンパ液の流れが滞り、溜まってしまうと以下のような症状が見られるようになります。

  • 足のむくみ
  • 疲労
  • 肩こり
  • 血色が悪くなる
  • 免疫力の低下

 

足のむくみ

リンパの流れが阻害されると、様々な症状がカラダに見られます。その代表が足のむくみでしょう。

 

筋肉を動かさずに、じっとデスクワークをしていると、足に溜まった水分の回収がスムーズに行われず、結果足のむくみがみられるようになるです。

 

同じ姿勢をとらずに、特に下半身はできるだけ動かすことが大切です。

 

疲労・肩こり

リンパ節では老廃物をろ過する作用があり、ろ過された水分は血管内に戻っていきます。

 

でもリンパの流れが滞ると、リンパ節で老廃物の除去が十分行われなくなります。これによって老廃物が溜まり、疲れやすいカラダになるのです。

 

また肩周囲には主要なリンパ節(鎖骨、わきの下、耳の下、顎の下)が存在しており、肩周囲の筋肉がこわばると血液だけでなく、リンパの流れが滞ってしまうため、肩こりにも繋がりやすくなります。

 

疲労についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

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血色が悪くなる

表情筋の動きが乏しかったり、姿勢が悪いと顔色が悪く見えます。

 

老廃物が溜まり、顔がむくむことでも肌に充分な酸素がいきわたらなくなり、乾燥やくすみに繋がるのです。

 

これには血行不良が関係しており、顔周囲の血行を促進し、老廃物の排出を促すことが1つポイントになります。

 

血流がもたらすカラダへの影響についてはこちらの記事をご覧ください。

参考
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免疫力の低下

免疫機能に関係するリンパ球は白血球成分の1つで、NK細胞、T細胞(Tリンパ球)、B細胞(Bリンパ球)などがあります。

 

このリンパ球はリンパ節からリンパ液の中に出て、血液中に合流し、再びリンパ節にもどる流れを辿り、全身を巡回しています。

 

免疫機能に関係するリンパ球が、リンパの流れが悪くなることで、全身を巡回できなくなり、免疫機能の低下につながっています。

 

ちなみに、リンパ球は交感神経の興奮によっても数が減少することが報告されているため、ストレスを抱えること免疫機能が低下すると呼ばれるのは、このことが1つ原因として挙げられます。

 

免疫機能についてはこちらの記事もご覧ください。

参考
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リンパの流れを良くするセルフケア

 

1.腹式呼吸

 

リンパの流れはリンパマッサージを行わなくても、仰向けに寝るだけでも効果があったとの報告があります。

 

リンパ液は足と腹部に約8割が偏って存在しています。これらのリンパ液はお腹にある乳ビ槽と呼ばれる部位に溜められています。

 

仰向けになることでリンパ液の流れが良くなるという理屈です。

 

手順

  1. 枕を使わず、リラックスして仰向けに寝ます。
  2. お腹に手を置く。
  3. ゆっくりと深く鼻から息を吸っておなかを膨らませる。
  4. お腹が膨らんだら、口からゆっくりと息を吐き、お腹を凹ませる。
  5. 3~4を10分以上続ける。

ココがポイント

本来の推奨時間は30分なので、就寝前にゆっくりと行うのがよいでしょう。

 

2.鎖骨周囲のリンパマッサージ

リンパ管は最終的に鎖骨の下にある静脈(鎖骨下静脈)に繋がって、静脈へと流れていきます。

 

このとき鎖骨の動きや周囲の筋肉の硬さが影響すると、他のリンパ管から流れてきたリンパ液も流れづらくなってしまうのでしっかりとケアしましょう。

 

手順

  1. 椅子に腰かけます。
  2. 右手の人差し指を鎖骨の上に置きます。
  3. 左の肩を肘で大きく円を描くように前に10回、後ろに10回、回します。
  4. 今度は右手の人差し指を鎖骨の下に置き、同じく左の肩を前後10回回します。
  5. 左側が終了したら、右側も同様に行います。

ココがポイント

鎖骨周囲の組織を押し付けすぎないように、軽く圧を掛ける程度でOKです。

 

 

以上セルフケアを2つお伝えしましたが、大切なのは「動くこと」。

 

長時間座っていると膝裏は圧迫されますし、筋肉を使うこともほとんどありません。

 

可能な限り1時間に1回はトイレに行くために席を立ったり、書類を取りに行ったりと歩いてカラダを動かすのが良いでしょう。

 

多少歩幅を広げて歩くだけでも効果的なので、ぜひ実践してみましょう。

 

なお、YouTubeの本要約チャンネルの方でも面白い「リンパ呼吸」についての動画が作成されていますので、ぜひご覧ください。

 

 

とてもわかりやすくて、勉強になるはずです。

 

まとめ

いかがでしたか。

 

リンパは全身張り巡らされ、カラダの老廃物の除去や免疫機能を保つ大切な役割を果たしています。

 

リンパの流れが悪くなることは、これらの機能が低下するだけでなく、むくみやくすみと言った外見的な要素にも関与しています。

 

また隠れた病気が存在することも考えられるので、用意にリンパマッサージに行けばいいと言った考えは改めた方が良いでしょう。

 

お客様の中にはリンパマッサージの認定を受けたセラピストに施術してもらっても、嘔吐されたり、気分が悪くなったことがある方は少なくありません。

 

それよりもまずは、セルフケアを実践し、不調があれば医療機関を受診するのが最も安心です。

 

リンパのことをもっとよく理解して、自分のカラダを守っていきましょう。

 

参考文献

  • 古谷 恵美:加齢によるリンパ管ならびに静脈弁機能不全.アンチ・エイジング医学会 日本抗加齢学会雑誌 Vol.14 No.2,39-43, 2018
  • 塚本 康子ら:リンパ浮腫に関する実態と研究の動向.静岡県立大学短期大学部 研究紀要 第19号 2005年
  • Best Practice for the Management of Lymphoedema: an international consensus. 6 October 2009
  • Akiko Nakai et,al:Control of lymphocyte egress from lymph nodes through β2-adrenergic receptors.J Exp Med (2014) 211 (13): 2583–2598
  • 国立がん研究センターがん情報サービス (https://ganjoho.jp/public/cancer/CLL/index.html
  • 大橋 俊夫:「リンパ呼吸」で不調は治る.マキノ出版

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