会社の業績は従業員の仕事のパフォーマンスに大きく左右されます。営業活動をお考えいただければご理解いただけると思います。
労働力人口の減少や転職活動の活発化の流れもあって、働きやすく離職率の低い職場を作ることは会社にとって喫緊の課題の1つと言えます。
働きやすい環境にするための1つとして「メンタルヘルス対策」があります。従業員のメンタルヘルスをサポートすることは、休職や離職、さらには労働災害を防ぐためにも重要です。
しかしメンタルヘルス対策をストレスチェック以外でどのように実践していけばよいのかわからないという会社も珍しくありません。
この記事ではメンタルヘルス対策の基本を解説し、なぜ対策が必要なのか、またその効果についても解説します。
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メンタルヘルスとは?
メンタルヘルスとは?
仕事で精神的に病んでしまい休職してしまうケースや退職してしまうケースが近年増加傾向にあります。
また精神障害の労災の請求件数も増加傾向にあり、仕事における精神面のストレスは大きくなっていると言えます。
WHOによるとメンタルヘルスとは以下のように定義されています。
「すべての個人が自らの可能性を認識し、生命の通常のストレスに対処し、 生産的かつ効果的に働き、コミュニティに貢献することができる健全な状態」
肉体的な健康ではなく、精神面における健康のことがメンタルヘルスであり、「こころの健康」と称されることもあります。
メンタルヘルスの代表的な疾患
メンタルヘルスの代表的な疾患をここでは4つご紹介します。
1.うつ病
うつ病は気分障害の1つで、いつも気分が落ち込んでいる、何をしても楽しくないといった症状が現れる病です。
食欲や睡眠も十分取れず疲れが抜けないことも特徴で、これらの症状で日常生活に支障が生じている場合、うつ病の可能性が考えられます。
原因ははっきりとはわかっていませんが、感情や意欲を司る脳の部位に不調が生じているものと考えられています。
2.強迫性障害
強い「不安」や「こだわり」によって日常に支障が出る病気が強迫性障害です。
強迫性障害は不安障害の1つで、誰かに迷惑かけていないか、危害を加えていなかと不安になったり、決まったルーティンをこなさないと悪いことが起こる、何度も同じところを確認するなどの症状が見られます。
仕事でのストレスや日頃の対人関係、転勤・転職、妊娠・出産といったライフイベントがきっかけで発症するケースが多いとされています。
3.パニック障害
パニック障害も不安障害の1つで、突然起こった不安な気持ちを自分では抑えきれなくなる状態を言います。
症状として動悸やめまい、吐き気、異様な発汗、呼吸困難を起こしたり、手足が震えるなどの発作が起こり、生活に支障が出てしまいます。
4.適応障害
適応障害は周りの環境にうまく馴染めずに、社会生活に支障をきたす状態のことです。
不安、怒り、焦り、緊張、涙もろくなるなどの情緒的な問題や、眠れない、食欲がない、めまい、吐き気、動悸といった身体症状を訴えます。
また転職や転勤、結婚・離婚など生活環境が大きく変化して際に発症しやすいと言われています。
従業員の心の健康に関する現状
仕事でのストレスとその原因
メンタルヘルスに問題を抱える従業員は仕事内容や職場環境に対して悩みやストレスを抱えている傾向にあります。
職場で強いストレスを感じる従業員の割合は毎年半数を超えています。
また職場生活における強いストレスを抱える原因に仕事の量や質が挙げられます。
(引用)厚生労働省「令和3年労働安全衛生調査(実態調査)」個人調査
これらの原因がメンタルヘルスに不調を来していることを理解しておかなければ、適切な対策は行えません。
結果からもわかるように仕事の量や質、人間関係に関する項目の割合が高くなっていることを考慮した、組織的な対策を講じていく必要があります。
精神障害に関する労災件数
仕事のストレスによって過度な負荷化がかかることで、精神障害を発症するケースも年々増加しています。
厚生労働省のデータをみると、精神障害による労災請求件数は増加しており、令和元年以降は2,000件を超えています。
請求件数、認定件数も上昇していることは、それだけ労働環境の悪化が顕著になっていることを示していると言えます。
なお令和3年度の請求件数で多いのは、「医療・福祉」関連の業種が多くなっています。
請求件数上位3業種
医療・福祉:577件
製造業:352件
卸売業・小売業:304件
健康に関係する医療・福祉業の請求件数が多いのは、コロナ渦の影響に加えて、人手不足が深刻化している影響が考えられます。
特に社会福祉・介護分野での請求件数が多い傾向にあり、これらの職種は高齢社会に伴い人手不足がより深刻さを増しているからと言えます。
メンタルヘルス対策を行うべき3つの理由
こうしたメンタルヘルスの現状を踏まえ、会社側は従業員のメンタルヘルスに対して対策を行っていくことが重要となります。
以下ではメンタルヘルス対策を行うべき3つの理由を解説していきます。
企業のリスクマネジメント
メンタルヘルス不調を抱えた状態で働くのは、従業員にも企業にもデメリットをもたらします。
仕事に取り組むモチベーションが上がらない状態では集中力が低下し、人的ミスが増えます。
作業を忘れていたなどのミスであれば大きな問題にはなりませんが、転倒や転落など大きな事故に繋がるリスクもあるため、労災予防の観点からもメンタルヘルスは重要となります。
また従業員がうつ病やストレスによる心疾患・脳血管疾患にかかり、それが社会的に周知されてしまうと企業側のイメージダウンにも繋がりかねません。
そのためパワハラなどのハラスメント対策の視点からもメンタルヘルスケアは大切になります。メンタルヘルスケアを推進することで職場の労働環境が改善されれば、間接的にハラスメントの防止することにも効果が期待できるからです。
職場内の活性化による生産性向上
健康経営に取り組む企業は社内のコミュニケーションの活性化や、従業員の仕事満足度・モチベーションの向上を実感する傾向が高いことが報告されています。
本人が自身の健康状態が優れていると感じるほど、日常的に会話する傾向も増え、社交的であるという結果もあります。
(出典)「ミクシィ コミュニケーション白書」「健康とコミュニケーション」に関する調査(20歳から69歳の男女1000名対象)
メンタルヘルスに取り組むことは従業員それぞれの心理的な安全が確保され、社内のコミュニケーションが活性化します。これは社内の人間関係が円滑化し、働きやすさに直結します。
またコミュニケーションが活発化することで、情報共有や伝達漏れを防ぎ、チームとして協調的に活動することで業務の効率化に繋がります。
これにより積極的な意見交換から新規事業がスタートしたり、従業員の会社に対するエンゲージメント(会社への愛着)も高まり、1人1人のパフォーマンスの向上が期待できるのです。
実際に慶應義塾大学前野研究室とパーソル総合研究所の共同研究による「はたらく人の幸福学プロジェクト」では、仕事を通じて幸福を感じている従業員が多いほど、個人のパフォーマンスと組織のパフォーマンスの双方が高い値を示す結果となっています。
労働力の確保・採用力の強化
メンタルヘルス不調によって、休職や退職を余儀なくされるケースもあります。
従業員の休職や離職は貴重なマンパワーを失うとになります。休職や退職は突発的なことも少なくないため、これまで培ったスキルや経験が他の従業員に引き継げず、会社にとって大きな損失になります。
社員の育成には多くの時間も必要とします。その社員がすぐに休職・退職に追い込まれると会社側の投資も無駄になってしまいます。
こうしたことからも従業員にいかに長く働いてもらえるかを考える上で、メンタルヘルスケア対策は必要なのです。
メンタルヘルス対策に取り組むことは採用の面でもプラスに働きます。
(出典)経済産業省 健康経営の効果② 健康経営と労働市場の関係性
働きやすい会社であることは就活生やその親にとっても、会社選ぶうえで重要な指標となっています。
今後ますます人手不足が深刻となるため、働きやすい環境を整えるためにもメンタルヘルス対策に取り組むことは会社にとってプラスになります。
メンタルヘルスケアの始め方
では実際にメンタルヘルスケア対策を行うにあたってどのようなことを実施していけばいいのでしょうか。
ここでは「心の健康づくり計画」と「メンタルヘルスの4つのケア」について紹介します。
心の健康づくり計画の作成
メンタルヘルスケアは、短期的なものではなく長期的な視点で継続していくことが大切です。
実施するにあたっても、会社の実態に即した取り組みを行わなければ効果が期待できません。
そのためにも、会社ごとに「心の健康づくり計画」を策定しておくことがポイントになります。
心の健康づくり計画は、従業員のメンタルヘルスケアの円滑な取り組みに必要とされている施策のことで、労働安全衛生法に基づいた、労働者の心の健康の保持増進のための指針において策定が義務付けられています。
次にご紹介するメンタルヘルスの4つのケアの活動を始める前準備として「心の健康づくり計画」を策定することは重要になります。
心の健康づくり計画を作る際は、以下のことを盛り込む必要があります。
ポイント
- 事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明に関すること
- 事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること
- 事業場における問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施に関すること
- メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保及び事業場外資源の活用に関すること
- 労働者の健康情報の保護に関すること
- 心の健康づくり計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関すること
- その他労働者の心の健康づくりに必要な措置に関すること
難しく感じるかもしれませんが、心の健康づくりに計画は「心の健康づくり計画助成金」活用することができます。
詳しくは心の健康づくり計画助成金をご覧いただくとして、職場のメンタルヘルス対策のためにも、専門家の力をお借りしてぜひ活用して策定していただきたい計画になります。
メンタルヘルスの4つのケア
メンタルヘルス対策を始めると言っても、何からどうしていいか迷われるでしょう。
メンタルヘルス対策を行うにあたって、厚生労働省は必要なケアを4つに分類してくれています。
セルフケア
自分自身で行うべきケアのことで、自分自身がストレスに気づき、ストレスやメンタルヘルスに対して正しい理解を持つことが大切です。
また事業者はセルフケアを支援するために、教育研修や情報提供を行うことが重要になります。
ラインによるケア
管理監督者が従業員に対して行うケアのことです。
従業員からの相談に応じたり、職場復帰の支援や、職場の労働環境の改善を行います。
事業場内産業保健スタッフ等によるケア
産業医や保健師、人事労務担当者といった事業場内産業保健スタッフ等が、セルフケアやラインケアが効果的に実施されるようにケアすること言います。
具体的なメンタルヘルスケア対策の計画立案や職場外の資源とのネットワークの構築やその窓口業務を行います。
事業場外資源によるケア
会社外の専門家や専門の機関を活用して、メンタルヘルスケアの支援を行います。
情報提供や助言を受けたり、外部サービスを活用するなどが挙げられます。
これら4つの視点があることでのメンタルヘルス対策のイメージも湧きやすくなります。
4つのケアはそれぞれの担当者が協力し合い、役割を果たすことで効果的な取り組みが行えるようになっているので参考にして取り組みましょう。
メンタルヘルスケア推進に当たっての注意事項
メンタルヘルスを推進することの大切さはご理解いただけたと思います。
しかし推進するにあたっても注意すべき事項が、厚生労働省の「職場における心の健康づくり」で案内されています。
ここでは4つの注意事項が紹介されていますので解説していきます。
心の健康問題の特性
心の問題は心身の状態を本人から聴取する必要がありますが、その問題が起こる過程は個人差が大きいため、プロセスを理解することは難しいとされています。
また特定の人だけでなく、すべての従業員が心の問題を抱えている可能性も考慮する必要があります。
心の健康を評価する際は間違った知識や偏見、誤解を招くようなことがないように配慮する必要があり、産業カウンセラーなどが介入する方が良い場合もあります。
従業員の個人情報保護への配慮
健康情報を含む従業員の個人情報は適切に保護され、本人の意思のもとに正しく活用される必要があります。
従業員数が50人以上会社ではストレスチェックが義務付けられていますが、結果は検査を行った医師や保健師等から本人に直接通知されます。
こうした健康情報を本人の同意なしに事業者が知ることは禁止されていますので、個人情報については法律や関連する指針を厳守して取り扱うことが重要です。
人事労務管理との関係
従業員の抱える心の問題は、職場の配置や業務変更に密接に関わっています。
心の健康に限らず、カラダに関する健康問題なども人事労務と関係性があるため、健康問題を取り扱う際は人事労務の担当と適切にことを進めていく必要があります。
家庭・個人生活等の職場以外の問題
仕事上でのストレスが原因となって、心の問題が引き起こされていることは少なくありませんが、家庭や個人の生活からの影響も考えておく必要があります。
環境変化の目まぐるしい社会ですので、仕事と生活が複雑に関係して心の健康に問題が起こっていることを理解しておきましょう。
まとめ
会社がメンタルヘルスケアに取り組むことは、従業員の心の健康を保つことに繋がり、コミュニケーションの活性化や生産性向上、リスクマネジメントに対して効果が期待できます。
会社へのエンゲージメントも高まるため、企業業績へのパフォーマンスの向上にも繋がります。
メンタルヘルスケア対策は会社が取り組めるところから始めていき、時には外部の専門家の協力を得ながら長期的な視野で従業員の心のケアを行っていきましょう。
健康経営についてはこちらの記事でも解説していますので、健康経営をこれから始めようとお考えの会社さまはぜひご覧ください。
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