「人生100年時代」と言われて随分経ちますが、何か健康に気を付けて生活されていることがありますか?
『健康が大切』というのは誰もが知っていることですが、本当にそう感じている方は少ないのが事実です。
病院に入院されて初めて健康の大切さに気付いた方は大勢いらっしゃいます。
病気をしない健康なカラダを維持することが人生100年時代において大切なのですが、一方老後の生活には健康以外にも「お金」が大切になってきます。
「長生きするリスク」とまで言われ、老後資金の確保も重要となっています。
今回はAFP(ファイナンシャルプランナー)としてのアドバイスも含め、人生100年時代において最も重要であろう、「健康とお金」について解説していきます。
健康と生涯医療費
厚生労働省が公表した「生涯医療費」(H27年度)によると、日本国内で保険診療の対象となる病気の治療に要した費用は以下の額となっています。
生涯医療費
【男性の場合】
・0歳~69歳:1,376万円(全年齢に占める割合:53%)
・70歳以上:1,208万円(全年齢に占める割合:47%)
【女性の場合】
・0歳~69歳:1,325万円(全年齢に占める割合47%)
・70歳以上:1,497万円(全年齢に占める割合53%)
【男女平均】
・0歳~69歳:1,351万円(全年齢に占める割合50%)
・70歳以上:1,349万円(全年齢に占める割合50%)
(出典)厚生労働省 生涯医療費(平成27年度推計)
この数値や図から読み取れることは、一生のうちに使用する医療費の大半が、70歳以降のものだということです。
もちろん、「医療費の総額」なので、実際に支払った金額とは異なります。
通常は窓口で支払うのは3割ですが、高齢者の場合は、負担額が1割または2割(収入により3割)なので、実際はもっと少ないのですが、それでも一生のうちに800~900万円近く(3割負担の場合)を支払うと考えると驚くべき数字です。
厚生労働省が発表した2019年のデータによると、日本人の平均寿命は、「男性:81.41歳」「女性87.45歳」となっています。
誰しもが長生きする可能性があり、医療の質が向上した時代だからこそ、生涯医療費が増えているのです。
参考
疾患別の医療費
病気を発症された場合、実際にはどれくらいの医療費がかかるかを見ていきましょう。
公益社団法人全日本病院協会の資料によると疾患別の医療費は以下のようになります。
自己負担額については、上記の額にご自身の自己負担割合(3割,2割,1割)を掛けて計算すると良いでしょう。
(出典)公益社団法人全日本病院協会 「医療費(重症度別)【年間】(2019年度)」より表作成
健康関心度と健康への投資
日本人の健康意識はどれくらいあると思いますか?また健康にかけるお金はどれくらいまで許容しているのでしょうか。
少し前のデータになりますが、H27年4月に経済産業省が調査を実施した、「次世代ヘルスケア産業協議会 新事業創出ワーキンググループ(第3回)」を見ながら解説していきます。
ヘルスケアデータ
※ 全国の40代~70代の男女 2,027名を対象
健康関心度
『人生において健康は何よりも大切だと思う』と答えた方は、「そう思う」「ややそう思う」を合わせると全体の97.9%となっています。
(出典)経済産業省 次世代ヘルスケア産業協議会 新事業創出ワーキンググループ(第3回)‐配布資料より
「そう思う」:58.2%
「ややそう思う」:39.7%
『健康に対する関心』と答えた方は、「そう思う」「ややそう思う」を合わせると全体の87.2%となっています。
(出典)経済産業省 次世代ヘルスケア産業協議会 新事業創出ワーキンググループ(第3回)‐配布資料より
「そう思う」:35.3%
「ややそう思う」:51.9%
この傾向は、男女とも年齢が高くなるほど割合は高くなっており、健康に対する意識は加齢によって高まることが報告されています。
健康への投資
「健康維持・増進のための商品・サービス」にかける金額についても調査が行われています。
健康関連商品やサービスへの支出額をみると、「健康維持・増進のための商品・サービス」への支出は平均2,305円となっており、医療費よりも低くなっています。
しかし今後の健康のために、一か月で追加的で支払ってもいい金額の平均は、「病院で支払う医療費」は13円ですが、「市販の薬」は205円、「健康維持、増進のための商品・サービス」は905円となっています。
つまり医療費や市販薬購入に支出したくないが、健康に対するサービスには、もっとお金をかけても良いと考えている方が多いようです。
また「健康維持、増進のための商品・サービス」の支出を減らそうとする意識も、他のサービスと比べて相対的に低いという傾向があるようです。
ヘルスケアデータ
健康関連商品サービスへの現在支出額
健康維持・増進のための商品・サービス」にかける金額
(出典)経済産業省 次世代ヘルスケア産業協議会 新事業創出ワーキンググループ(第3回)‐配布資料より
健康に投資する必要性を感じている方が多いことがわかりますね。
このほか、「健康維持・増進のための商品・サービス」 への支出金額は、「健康関心度」と「年収」の両方に比例していると報告されています。年収が高いほど健康への追加的な支出が多くなる傾向もあるようです。
しかし「年収」が低くても、「健康関心度」が高ければ、相当程度の支出をしているようで、健康意識の高低が最も支出に影響していると考えられます。
なぜ健康に投資するのか
前述した内容をおさらいすると、「人生で支払う医療費が高額であること」、「年収の高い人ほど健康への追加投資を惜しまない」という傾向がわかりました。
ではなぜ、年収の高い人ほど健康へ投資する傾向があるのはなぜでしょう。
それは健康を「資産」として捉えているからだと言えます。
お金の不安が消える
病気やケガで仕事ができなくなれば、収入が減少し、医療費もかかります。
生涯医療費を見てもらったように、人生で支払う医療費は高額なため、健康を失うとお金が逃げていくことに繋がります。
最も典型的な例が、スポーツ選手です。ケガをすることで引退に追い込まれることもあり、そうなると収入がなくなるため、一般人よりも健康に細心の注意を払っているのです。
また老後2000万円問題も取り上げられ、不安を覚えたかも多いのではないでしょうか。
老後資金をすべて年金で賄おうとすると大変ですが、短時間でもバイトや好きな仕事をして働くことができたならどうでしょう。
今後、70歳定年や75歳定年などのうわさも出てきており、一生働かなくてはならない時代に突入するかもしれません。
資産運用を若いうちから始めるのが最善かもしれませんが、それ以上に「人生100年」時代の健康を維持し、働くことができるカラダを維持することがお金の不安を解消するのには重要です。
もちろん病気になっても、それ以上の悪化を予防することも非常に重要です。すでに病気を抱えている場合は、健康な方よりも新たな病気を発症する確率が高くなるからです。
例えば、脳卒中の場合は年間再発率は一般的に5%とされています。再発予防には、血圧の管理・糖尿病の管理が重要とされています。
病気になってしまうと、医療費などでお金を使ってしまうことになるため、病気の有無に関わらず健康管理は人生を豊かにするためにも大切だと言えます。
生産性への投資になる
また不健康な状態では、仕事の生産性も低下します。
睡眠不足・偏った食事・運動不足は、労働生産性を低下させ、労働生産性損失は従業員1人当たり年間76.6万円という報告もあります。
(出典)横浜市 経済局 記者発表 2018年度 https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/keizai/2018/20180607-024-27565.html
この中では「健康経営」についても記載されています。
「健康経営」は近年注目されていますが、これは社員の健康状態を改善することで労働生産性を高めようとする考え方の1つです。
米国ジョンソン・エンド・ジョンソングループによると、投資1ドルに対して3ドルの投資リターンがあったとの結果が報告されています。
健康経営についての記事はこちら
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なぜ健康経営を行なった方が良いのか?企業が健康経営に取り組むメリットを企業と従業員目線で解説
健康経営とは「労働者の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に実践する経営手法」であることを前回の記事でお伝えしました。 健康経営の必要性については「生産性の向上」というキーワードが重要に ...
個人レベルで考えても、健康であることが仕事への集中力・作業効率が向上することで、空いた時間を趣味や家庭に当てられため、ワークライフバランスが高まります。
一流のビジネスマンや起業家の方ほど、健康に留意するのはこういった点も挙げられます。
時間への投資になる
健康への投資は「時間」を作ることにもつながります。
病気により入院したり、風邪をひいて寝込んだりすると、本来使えるはずだった時間を無駄にします。
それだけでなく、万が一大病を患ってしまった場合は、それ以降誰かに介護をしてもらったりと、楽しい人生の時間を謳歌できず、さらには寿命を縮めることに繋がりかねません。
自立した生活を送れる「健康寿命」の期間を伸ばすためにも、健康を維持する心掛けは大切ですね。
時間を使うことで、資産を増やすこともできます。
アインシュタインが「人類最大の発明」と呼んだ『複利』は、時間が経過するにつれ、リターンはどんどん大きくなります。
健康で長生きであるほど、資産運用をしていればその恩恵を受けることができます。
健康をマネジメントすることは、人生という時間をマネジメントすることにもつながるのです。
おわりに
まずは自身の健康をチェックすることが大切です。
Apple watchなどのヘルスケア管理のアプリも普及しています。ウェアラブルデバイスを用いての健康管理もオススメです。
人生100年時代の「健康とお金」について、もっと勉強していきましょう。
参考文献
・冨本 秀和: 脳梗塞:これからの再発予防治療.神経治療 35:439–443,2018
・Hata J, et al : Ten year recurrence after first ever stroke in a Japanese community : the Hisayama study. J Neurol Neurosurg Psychiatry 76 : 368– 372, 2005
・脳卒中治療ガイドライン2015【追補2019】 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン【追補2019】委員会
・厚生労働省 第43回 雇用対策基本問題部会資料