「最近、音や光に敏感になってきた気がして。ゲームのせいでしょうか……?」
保育園や療育の現場でも、こんな声を聞くことがあるかもしれません。
結論から言うと、ゲームをやめさせるだけでは解決しないことが多い、というのが現在の医療・療育の共通した見方です。
今回は、そんな内容を少し詳しく解説した記事を書いてみました。
「ゲームが原因」は実は逆かもしれない
「ゲームのせいで感覚過敏になった」という直接的なつながりは、現時点では科学的に証明されていません。
むしろ近年の研究が示しているのは、逆の構造です。
「もともと感覚の過敏さを持っていたお子さんが、結果としてゲームに引き寄せられていた」
自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)の特性のひとつに、「感覚の処理が難しい」というものがあります。
そういったお子さんにとって、ゲームはとても「居心地のいい場所」になりやすいのです。
Point
- ルール通りに動いてくれるので、人間関係のような読みにくさがない
- 好きな映像や音に満ちていて、安心して没頭できる
- 学校や集団のざわざわした空気から離れられる、ひとつの避難場所になる
ゲームが悪いのではなく、「現実がつらすぎてゲームに逃げている」という状況が、先にある場合が多いのです。
3つの研究が示していること
① 脳の「刺激をふるいにかける力」が変わっていく
Weinstein, A. M. (2017).
「An Update Overview on Brain Imaging Studies of Internet Gaming Disorder」
ゲーム依存の傾向がある若者の脳をMRI(脳の動きを画像で見る検査)で調べた研究です。
脳には、まわりにあふれる音や光などの刺激を「気にしなくていいもの」と「気にすべきもの」に分けてコントロールする仕組みがあります。
この研究では、ゲーム依存の傾向があるお子さんの脳で、その「ふるいにかける機能」に変調が起きていることが確認されました。
この機能が乱れると、本来は気にならないはずの音や光に、過剰に反応しやすくなります。
②強い刺激に慣れると感覚処理に偏りがでる
Heffler et al., 2024 / JAMA Pediatrics
「Early-Life Digital Media Experiences and Development of Atypical Sensory Processing」
ゲームは設計上、派手な光・音・達成感の連続です。長時間それに触れ続けると、脳がその「強い刺激」を基準にしてしまいます。
すると、授業中のざわめき・蛍光灯の明るさ・服のタグの感触といった、日常のちょっとした刺激が「耐えられないくらい強く」感じられるようになります。
こちらの研究では、ゲームだけではありませんが、1,471名の子どもを対象にしたコホート研究で、乳幼児期のテレビ・動画視聴が、その後の感覚処理の偏りと関連していました。
24か月時点のスクリーン曝露は、33か月時点のsensory sensitivity(感覚過敏傾向)、sensation avoiding(感覚回避)、sensation seeking(刺激希求)の高さと関連しています。
著者らは、デジタルメディア曝露が「非定型な感覚プロファイル形成の潜在的リスク因子かもしれない」と述べています。
③ 感覚過敏のある子には、ゲーム依存も重なりやすい
Mazurek & Engelhardt, 2013
「Video Game Use in Boys With Autism Spectrum Disorder, ADHD, or Typical Development」
ASD、ADHD、定型発達の男児を比較した研究です。
ASDやADHDの子どもは、定型発達児よりもゲーム使用時間や問題的ゲーム使用のリスクが高い傾向が示されています。
感覚過敏そのものを主にした研究ではありませんが、ASDには感覚過敏・感覚鈍麻などの感覚特性が含まれるため、感覚特性のある子はゲーム使用の問題が重なりやすい可能性があるという説明の根拠として考えられます。
「なぜゲームに行くのか」を一緒に考える
「感覚過敏があるからゲームに逃げる→ゲームで過敏がさらに悪化する」という悪循環が起きているとしたら、ゲームを禁止するだけでは逃げ場を奪うことになります。
根本にある「何がしんどいのか」が変わらなければ、別の形での回避(動画を見続ける・部屋から出なくなるなど)が現れることも少なくありません。
現場でぜひ持ってほしい問いは、こういうものです。
チェック
- このお子さんは、日常のどんな刺激にしんどさを感じているのか?
- 音なのか、光なのか、人がたくさんいる感じなのか、肌への触れ方なのか。
- ゲームは、そこからの「逃げ場」になっていないか。
「ゲームをやめさせる」より先に「この子が何から逃げているのか」を探すこと。それが、感覚の特性への理解と環境調整につながる、根本的なアプローチです。
おわりに
「ゲームが悪い」と感じるのは、お子さんのことを心配するまっとうな感覚です。ただ、その背景に感覚の特性が隠れているとわかるだけで、関わり方は変わってきます。
「ダメ」の代わりに「何がつらいの?」という問いが生まれるだけで、子どもとの関係は少しずつ動き出します。
After Rehaでは、運動療育を通して、感覚特性の見立てとサポートを行っています。事業所へ訪問させていただいておりますので、お気軽にご相談ください。
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参考文献
- はじめてのFBT実践ガイド
- Mazurek & Engelhardt, 2013:Video Game Use in Boys With Autism Spectrum Disorder, ADHD, or Typical Development.
- Paulus et al., 2020:Gaming Disorder and Computer-Mediated Communication in Children and Adolescents with Autism Spectrum Disorder.
- Craig et al., 2021:A systematic review of problematic video-game use in people with Autism Spectrum Disorders.
- Tekeci, Torpil & Altuntaş, 2024:The Impact of Screen Exposure on Screen Addiction and Sensory Processing in Typically Developing Children Aged 6–10 Years.
- Heffler et al., 2024:Early-Life Digital Media Experiences and Development of Atypical Sensory Processing.