脳梗塞後のしびれの症状は変化する?後遺症で多いしびれについて解説!

脳梗塞後のしびれで悩まれる方はとても多くいらっしゃいます。

 

「しびれ」と検索しても運動の麻痺のことがヒットするばかりで、感覚が麻痺して「ジリジリ」するしびれについてはあまり解説がありません。

 

今回はしびれについて多角的に視点から解説していきたいと思います。

 

*私の経験談も含まれるため、すべての人に効果があるとは限りませんのでその点はご了承ください。

しびれの原因は?

脳梗塞や脳出血を発症した後に出現するしびれは、感覚障害の1つになります。

 

感覚障害とは触ったときの刺激(触覚)、痛みの刺激(痛覚)、手足を動かした角度や方向(位置覚や運動覚)といった感覚が、鈍くなったり、消失したり、あるいは過敏になることを言います。

 

感覚についてはこちらの記事でも詳しくお伝しております。

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しびれは感覚障害の中でも「異常感覚」に分類されていて、ジリジリする感覚以外にも、ジンジン・ピリピリすると言った感覚が含まれます。

 

しびれの原因はさまざまですが、しびれは中枢性末梢性の2種類に分類されます。

 

しびれの種類

  • 中枢性のしびれ

中枢性のしびれは脳梗塞や脳出血、事故などでの脊髄損傷、脳腫瘍などの病気が原因で起こります。

  • 末梢性のしびれ

正座をした後に足がしびれる場合のように、末梢神経が圧迫を受けることでしびれが起こったり、血流の障害によって手足のしびれが出現するものです。

 

脳梗塞・脳出血後遺症でのしびれの主な原因

脳梗塞後のしびれは先に述べて中枢性のしびれの場合があり、カラダで感じた感覚を脳に届けるまでの経路に問題があると生じます。

 

ただし、末梢性の影響によりしびれが出現していたケースも経験上あります。

 

視床の問題

しびれは感覚を受け取る皮膚筋肉などの感覚受容器、脳そのものに問題があっても出現するため、複数の原因が考えられます。

 

これはとても重要なことで、感覚を識別できなければ、しびればかりに注意が向いてしまいます。

 

そんな中で脳梗塞や脳出血後遺症のしびれの原因で多いのが、脳の「視床」と言われる部分が障害される場合です。

 

視床とは

嗅覚以外の視覚や聴覚、カラダから感じる感覚の入力を受ける部位であり、その感覚情報を大脳に送る役割を持っています。

 

視床は脳出血の中でも出血が起こりやすい部位であり、脳出血の約3割にみられます。

 

視床は感覚が集まってくるだけでなく、脳の複数の部位とも連携しているため、広範囲の出血が起こるとさまざまな臨床症状や重症となるケースもいらっしゃいます。

 

しびれにおいて重要なる視床は、動作を行う中で大脳に不要な感覚情報が入らないように、フィルターをかけて脳が混乱するのを防ぐ役割があります。

 

このフィルターが機能しないことによって、しびれが出現しているケースもあるのです。

 

血流の問題

そのほか、しびれは脳の視床を障害されている場合以外でも出現することはあります。

 

動かさないことによる二次的な影響でしびれが出現している例もその1つです。

 

半身が麻痺しているので十分動かせずにしびれが出現している場合や、自分で手足を動かすことはできても、しびれている側の手足を積極的に使わないようにするのは、かえって逆効果になります。

 

動かさないことで筋肉が使われず、血流が滞ることでしびれが出現したり、冷えることでも血流の障害が起こり、しびれにつながるのです。

 

手足の末端が冷えると、寒さで血管が収縮して末端への血流が減少した結果痺れが出現します。例えばエコノミークラス症候群が類似した症状として有名でしょう。

 

しびれに対する一般的な対処法

脳梗塞後のしびれは腰椎ヘルニアのようなものとは異なり、手術をして改善することができません。

 

医療機関ではビタミン剤(B12:メチコバール)やリリカ(プレガバリン)、血行を良くする漢方(牛車腎気丸など)がよく処方されています。

 

漢方については1992年と古いですが「脳血管障害後遺症に伴う痛み・しびれ感に対する和漢薬治療の試み」という論文もありますので、処方してもらう際には参考になるかもしれません。

 

しかし、しびれに対しては「経過をみないとわからない」「治らない」と言われることも多く、気が滅入ってしまう方も多いのが現状です。

 

しびれに対するリハビリ

リハビリでしびれを軽減させるために大切なことが2つあります。

 

大切なこと

  • しびれを意識しないように、別の感覚を上書きする
  • 動かすことで皮膚温や血流を維持する

 

しびれを意識しないよう別の感覚を上書きする

しびれに意識が向いてしまうと、先ほどの脳のフィルターにしびれの感覚がかからずに、大脳まで届いてしまいます。

 

しびれを意識すると、脳が無意識にしびれを探索してしまうので、可能な限りしびれを意識しないようにするのが良いでしょう。

 

ただ、そう簡単に症状としてあるしびれを無視することはできません。そのような場合は、別の感覚でしびれの感覚を上書きするようにしています。

 

私が臨床でよく使うのが、バイブレーターを利用して筋肉などに直接的に振動刺激を与えて、しびれの感覚を一次的にシャットアウトする方法です。

 

手足がしびれている場合、何かに触れるような触覚の刺激ではしびれが気になりますが、振動刺激のような深部感覚に刺激を入れるとしびれが一次的に軽減することもあります。

 

深部感覚とは

  • 関節の位置や動く方向、カラダに加わっている抵抗感、モノの重さを検知する感覚のこと

 

また手のひら全体で麻痺している手足を包み込むようにすると、触れている間はしびれが軽減するケースや、入浴中はしびれが全くない方もいます。

 

両者とも手足に圧が(水の場合は軽い水圧)加わっている状態のため、軽く加圧されるような服を着ることで、しびれの感覚に注意が向きづらくなった方もいらっしゃいます。

 

また手先の痺れが強い人は、手袋をすればしびれが軽減することもあるので、仕事中は手袋を装着することをすすめたケースもいます。

 

しびれがどんな時に軽減するかは、人それぞれです。どの感覚を入れるとしびれが軽減するのかを見つけて、その刺激を普段より多めに入力してあげることで、しびれに意識が向く時間を減らすのがとても重要となります。

 

動かすことで皮膚温や血流を維持する

前述したように、しびれの出現を嫌がるために動かさない方も少なくありません。

 

しびれが出現しないように、まったく手を動かさない方もいましたが、動かすことで筋肉の感覚が脳に入力されるので、先述の感覚の上書きが起こります。

 

特に筋肉からの刺激は、脳に伝わる速度が速いので、動かすことでしびれの感覚が入力されるのを抑えてくれると考えています。

 

しびれる手足を動かすことはそれでけではなく、皮膚の温度や血流の改善にもつながるので、二次的な障害によるしびれの増強を抑制してくれます。

 

血液循環をよくするために筋肉を動かすことは、筋肉の動きによる熱生産も促されます。

 

冬場はしびれが強いけど夏場はそうでもない方や、入浴時や入朝直後はしびれが少ない方は臨床上とても多くいます。

 

温まって、血流が改善するとしびれが軽減のする方もいらっしゃるので、しびれ軽減のためには普段動かさないような動きを取り入れて、新しい感覚や筋肉の刺激を脳に入れることも大切です。

 

また悪い姿勢をとっていることでも、血流障害が起こりしびれが見られることがあります。

 

全身の大きな動きは姿勢の改善にも効果的ですから、血流促進の効果と合わせて姿勢改善ためにもできるだけ動かすように心掛けてください。

 

まとめ

脳梗塞や脳卒中後のしびれで悩まれる方は、病院に勤めていた時も多くいらっしゃいました。

 

「しびれは改善しない」と思っているセラピストも多いですが、しびれを軽減させたり、改善させることをあきらめていはいけません。

 

しびれの症状が「どうやったら変化するのか」をご自身で見つけながら、できるだけカラダを動かすようにして脳にしびれ以外の感覚を入れるようにしてみてください。

 

継続することが脳の可塑性(変化)を促してくれることにつながります。

 

参考文献

  • 飯星智史ら:視床出血の臨床症状と障害部位の検討.函医誌 第30巻 第1号 2006
  • 小林祥泰編:脳卒中データバンク2005,中山書店,東京2005p106-107.
  • 佐藤 一美ら:脳卒中患者のしびれ感と血流状態との関係-しびれ感改善への提言-.日本赤十字看護学会誌 J. Jpn. Red Cross Soc. Nurs. Sci Vol.9, No.1, pp.27-34, 2009
  • わかりやすい病気のはなしシリーズ16 手足の痺れ・痛み.一般社団法人 日本臨床内科医会

 

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