雪山で眠たくなる理由をご存知ですか?
雪山では寒さによって体の深部の体温が下がって眠気がきたり、生命維持のために体を休めるために眠たくなる仕組みが人間にはあります。
ですが雪山でなくても冬はなんだか眠たい気分になる時期です。実際朝もなかなか起きれない方も多いのではないでしょうか。
今回は冬になるとなぜ眠たくなるのかを解説していきます。冬は眠くてたまらないという方はぜひご覧ください。
冬に眠くなるのはなぜ?
寒くなってきてこんなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
- 夏よりも冬は眠たい
- 寒くなると眠たい
お子さんのいらっしゃる家庭では、夏場よりも冬場は起きるのが遅いと感じることもあるはずです。
なぜ冬場に眠たくなるのでしょうか。もちろん冬眠とは関係ありません。その理由には以下の2つが挙げられます。
①日照時間が短い
日本人6.8万人以上を対象とした睡眠研究によると月ごとに睡眠時間には差があり、7月が最も短い約6.6時間で、最も長い1月は約7.3時間となっています。
つまり7月と1月の間には約40分の差があります。
このように夏場と冬場では睡眠時間が明らかに異なります。これは気温とも関係はありますが、それ以上に関係が深いのが日照時間との関係です。
日照時間の長さと睡眠には密接な関係があり、太陽が出ている時間が長くなれば、睡眠時間が短くなる傾向があります。
日中に太陽光を浴びることで、精神を安定させる働きのあるセロトニンの分泌が促されます。
このセロトニンは睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの原料になっています。
日中太陽光を浴びる時間が減ってしまうと、セロトニンの分泌が少なくなり、メラトニンが作られにくくなります。
メラトニンは睡眠を促すだけでなく体内リズムを整える働きもあるので、日照時間の短い冬場は体内時計が狂ってしまい、眠気を感じやすくなるという理屈です。
ちなみに、日本人は睡眠不足の方も多く、2019年のOCED(経済協力開発機構)加盟の先進国の中では最低の睡眠時間と言われています。
「たくさん寝ても疲れがとれない」というかたは、こちらの記事の参考にされてください。
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②室温と副交感神経
冬場は室温と外気温の差が大きくなります。
外の冷たい空気にさらされた後に、暖房の効いた部屋で過ごすと室温の暖かさを心地よく感じるので副交感神経の働きが優位になります。
この心地よい状態が続いてからだがリラックスすると眠たくなるのです。
それでけではありません。
暖かくて眠たくなるのも1つの理由ですが、もうひとつに寒暖差疲労というのも関係します。
人にはからだの状態を一定に保とうとする働きがあります。それには自律神経が関係しているのですが、温度差が大きくなると自律神経の調整機能に負担がかかります。
自律神経の働きによって体温を一定に保とうとする際は、エネルギーを消費します。
寒暖差が大きい場合はより大きなエネルギーを必要とするので、からだが疲れてしまうのです。これにより疲れたが眠気を誘うのです。
注意
【冬季うつにも要注意】
冬季鬱とは季節性うつの一種で、冬場にうつ病のような症状が出ることを言います。
冬場だけなぜが元気が出ないという方は、「冬季うつ」かもしれません。
(特徴)
- 過食になったり、睡眠時間が過度に長くなるなど通常のうつ病とは逆の症状が出ることもあります。
冬にすっきり起きるには?
冬は眠たくてなかなか起きることが難しいことも多いでしょう。そのためには眠る前の準備と起きるときの工夫が必要になります。ここでは特に気をつけたいことについてご紹介いたします。
寝る前の準備
すっきり起きるためには寝る時から準備するのがポイントです。
①入浴は寝る90分前
良質な睡眠のためには、寝る90分前に入浴を完了させることです。
就寝前にお風呂に入ることで、体温を一度あげることが可能になります。
入浴によって皮膚の温度が上昇し、血流が良くなります。これにより皮膚から熱が放散さえて、深部の体温が下がります。
深部体温は上がった分だけ元にも戻そうとする性質があるので、この活動を利用して自然と入眠を促すことができるのです。
なお入浴するときの温度にも注意を払う必要があります。
入眠前は40℃より高い温度のお風呂に入ると、交感神経の活動が高まってしまうので、40℃以下の温度で入浴することをお勧めします。(理想的:38〜40℃)
②手や足を温めておく
手や足はからだの末端にあるので血流が滞りやすい場所になります。
冬場は特に冷えやすいため、手足が冷たい状態で布団に入るとなかなか寝付けない方も少なくありません。
手足の末端が冷たいのは血管がキュッとしまっている状態だからです。この状態は交感神経が興奮している状態なので、寝付くには良い状態とは言えません。
寝るには交感神経の活動を抑えて、副交感神経が優位になるようにしなければなりません。その副交感神経を優位にするには手足は温めておくことも効果的なのです。
眠気を誘うには体温の低下が必要になりますが、手足が温まると体内の熱を外に逃して体温を下げてくれる働きをします。
赤ちゃんや子供が眠そうにしている時は、手足が温まっている時です。
ですから寝る直前は手足を温めておくことで、入眠が良くなるので睡眠時間をしっかりと確保することができます。
手足を温める手段としては以下のようなことを実践するとよいでしょう。
- 寝る直前まで靴下や手袋つけておく
- お風呂にしっかりと浸かる
- 寝る前に手足のマッサージをする
起きるときの準備
冬場は寒くてなかなか起きづらいので、すっきり起きれるように準備してくようにしましょう。
①暖房をセットしておく
朝目覚めて室温が低いと起きるのがおっくうになります。
部屋の温度が下がりすぎないように、起きる前には室温を20℃程度に設定しておけば布団から出やすくなり、すぐに活動することができます。
エアコンをつける際は、乾燥しすぎると喉の痛みなど別の症状で悩んでしまいますので、温度管理だけでなく湿度管理にも十分注意してください。
②目が覚めたらすぐに電気をつける
冬は夏場と違い起床時間でもまだ暗いことが多いでしょう。
交感神経のスイッチを入れるには白い光も関係しているので、できれば布団やベッドの近くに照明のリモコンを置いておくのが良いでしょう。
また光で起こす室内照明も販売されているのようなので、そちらを試してみるのも良いでしょう。
ポイントは白い光ですが、日差しが出てきたら太陽の光を浴びるようにしてくださいね。
まとめ
日々の早寝早起きの習慣が大切なのは当然ですが、冬場は季節を意識した対策を行うことも大切です。
眠たくなる理由には日照時間と室温が関係しているので、これらをしっかりと管理して寝る前・起きる時の対策を行うようにしましょう。
参考文献
- 須田智也:寒さと睡眠 .杏林学園 専属産業医
- Li L, et al. Seasonal Sleep Variations and Their Association With Meteorological Factors: A Japanese Population Study Using Large-Scale Body Acceleration Data. Frontiers in Digital Health Vol.3, 677043, 2021
- 山下 舞琴ら:冬の日照時間が短い地域に住む日本の高齢者における,冬と夏の睡眠の質に関連する要因.日本看護研究学会雑誌 41 (1), 1_19-1_28, 2018-04-20