YouTube動画でも最近よくみかける『HIIT(ヒート)』という動画。
HIITという言葉を聞いたことはあるけど、よくわからないという方も多いはずです。
今回は、HITTについては科学的にどうなのかを検証しながら、メリットとおすすめの運動法についてご紹介していきます。
今回の記事のポイントはこちら。
ポイント
・HIITはたった4分間の運動で運動効果が得られる
・無酸素運動と有酸素運動の両方の恩恵を受けられる
・運動後も脂肪燃焼効果が期待できる
・週に2~3回でOK
HIITとは?
『HIIT』はHigh intensity interval trainingの略で、1996年にTabataが論文として報告された「高強度」かつ「短時間」で、「短い休憩」をとりながら行うトレーニングのことです。
アスリートだけでなく、一般の方も最近はトレーニングとして導入しているケースが増えています。
HIITは無酸素運動と有酸素運動の両方の効果を効率よくえることができるので、忙しいサラリーマンにもオススメの運動になります。
HIITには日本人が考案したTabata法とGibala法などがあります。
これらの方法は、かなりの高強度のトレーニングで、自転車のペダリング運動を行うことが前提となっています。
HIITの有効性について、現在も多くの研究が行われており、いろいろな方法が考案されています。
ペダリング運動の代わりにスクワット運動を取り入れたり、強度が低めのHIITも考案されており、より一般の方でも取り組みやすい方法がYouTubeなどでも紹介されています。
(参考)Little JP,et al:A practical model of low-volume high-intensity interval training induces mitochondrial biogenesis in human skeletal muscles: potential mechanisms. Journal of Physiology, 588: 1011-1022.
HIITの原点
Tabata法:
立命館大学の田畑泉氏が考案したトレーニング。
最大酸素摂取量の170%の強度で20秒間の自転車ペダリング運動を、10秒間の休憩をはさみながら行う方法です。6〜8セット行い、疲労困憊に至るような高強度で実施されます。
Gibala法:
McMaster大学のMartin Gibala教授が報告したトレーニング。
30秒間の全力で自転車ペダリング運動を行い、4~5分間の休憩を挟みながら4〜6セット行う方法です。
HITTの特徴・メリットは?
そもそもですが、運動すること自体にメリットがあります。
- 自律神経が整う
- 集中力がUPする
- カラダが疲れにくくなる
- 精神面が安定する
- ストレスに強くなる
- 免疫力UP
- 脂肪率を減少させる
運動特に筋トレについては健康や記憶力の向上にも関与しているとされています。
詳しくはこちらをご覧ください。
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【やらなきゃ損】メリットしかない!筋トレがもたらす7つの効果
みなさんは筋トレしてますか? 筋トレと聞くと「キツそう」「続かない」そういった方が多いのではないでしょうか。 実際指導する側の立場から見ても、筋トレを指導しても続かない方がほとんどです。 ...
では、HIITはどうでしょうか。
HIITの以下のような特徴があります。
- 持久力に重要な、最大酸素摂取量が上昇する
- 高強度・短時間の運動には非常に需要な最大酸素借が増加する
HIITはウォーキングやランニングなどの有酸素運動と、筋トレや短距離ダッシュなどの無酸素運動の特性をあわせたトレーニングです。
一言で言えば、持久力・瞬発力が短期間で向上する効率的なトレーニングと言えるでしょう。
HIITの効果から得られるメリットはこちら
- 礎体力が向上する
- 基礎代謝があがる
- 痩せる
1.基礎体力が向上する
無酸素運動によって、筋力や瞬発力が向上します。有酸素運動の効果としては、全身持久力と筋持久力が高まります。
全身持久力は心肺機能と関連しており、HIITによって心肺機能が向上し、カラダが疲れにくくなります。
筋持久力については、筋肉が繰り返しの負荷に耐えられる持久力のことです。
HIITは時間効率的に無酸素運動と有酸素運動の効果を高めてくれるのです。
2.基礎代謝があがる
HIITは、運動中もカロリーは消費されます。
しかし運動強度が高く、呼吸が切れるほどの負荷をかけるので、運動後もカロリーが消費されるアフターバーン効果によって基礎代謝が向上します。
参考
アフターバーン効果
高強度の運動をした後の24~72時間は、体のエネルギー消費量が通常よりも多くなるというもの。
一方で、HIITは運動中もカロリーは消費されますが、息が切れるほどの負荷のかかる運動を行うことで酸欠状態になります。
運動後は不足した酸素を体内に大量に取り込みます。
呼吸が盛んに行われ、心肺機能を活発に動かすためにエネルギーが消費され続けます。
このエネルギーを作るために脂肪が分解、燃焼されて代謝が上がるというわけです。
3.痩せる
代謝が上がるため長期的には痩せやすいカラダが作られます。
基礎代謝自体は筋肉が大きく関与しているので、HIITによる筋トレ効果も大きいでしょう。
さらに体脂肪を燃やすには、やはり酸素を体内に取り込む量が少ない無酸素運動よりも、たくさん取り込む有酸素運動のほうが有利と言われています。
この双方の作用で痩せやすくなるのです。
HIITの科学的根拠は?
HIITは、運動強度(Zone 3)に相当し、「非常にきつい」レベルの負荷になります。
Zone3は負荷強度が「会話できないレベル」になるので、運動指導では基本的に避けられてきた傾向にあります。
しかしHIITでは運動時間は数分と短いため、時間効率性にすぐれるため、病気を持つ患者さんや高齢者への運動方法としても有効であるとの報告もあります。
高強度インターバルトレーニング(HIIT)は嫌気性代謝閾値(AT)を基準としたトレーニングと比較し、最高酸素摂取量(peak VO₂)の改善効果が高いとされています。
心筋梗塞の方に対して低頻度かつ短時間のメニューを行うと、最大酸素摂取量が上昇した報告もみられています。
(参考)加藤拓哉ら:安全性と継続性を考慮した高強度インターバルトレーニングが運動耐容能改善に寄与した心筋梗塞後の症例 - 負荷時間短縮による効果 - 秋田理学療法 28(1): 55-60, 2021.
また宇宙ミッションのための研究論文もあり、高強度インターバル有酸素トレーニングとスプリントインターバルトレーニングはEPOC(運動後過剰酸素消費量)が増すことで、アフターバーン効果が期待できるとの報告があります。
Tomoaki Matsuo et al.:An exercise protocol designed to control energy expenditure for long-term space missions Matsuo et al. Aviat Space Environ Med. 83: 783-9, 2012.
記憶力の向上も期待できる
60~88歳までの座って過ごすことの多い高齢者を対象にした研究で明らかにされています。
HIIT群、MCT群(中強度のトレーニング群)、CON群(コントロール群)の3つの群に分けて比較検討しています。
HIIT群:休憩を挟みながら、4分間の高強度の歩行運動(トレッドミル)を4セットを行う
MICT群:50分間の中強度のトレッドミル運動
CON群:特に何もしない
12週間にわたって研究では、HIITを行った群は記憶力の向上がみられたと報告しています。
BDNF(脳神経由来神経因子)によって脳の機能がUPすることも関与していると考えられています。
加齢に伴う高負荷の運動は、カラダへの影響を考えると控えるべきと考えられています。
しかし認知機能や身体機能の改善にとっては、メリットがあるで一概に悪いとは言えないでしょう。
HITTおすすめの運動方法
強い負荷の筋トレを20秒行っては10秒休む、というのを4種目、2周分繰り返す
・バービージャンプ(30秒)+休憩(30秒)を5セット
・ダッシュ(30秒)+休憩(30秒)を5セット など
オススメの運動方法はYouTuberの「Marina Takewaki」のものを参考にすると女性でも取り組みやすいかもしれません。
負荷量
負荷量の設定が肝心です。
負荷量については、最大心拍数7~8割を目安にするのがよいとされています。
強度 | 心拍数 | 目的 |
90~ | 188~200 | 運動能力アップ |
80~ | 175~187 | 筋力・基礎代謝アップ |
70~ | 163~174 | 筋持久力アップ |
60~ | 150~162 | ダイエット |
50~ | ~149 | ウォーミングアップ |
表を参考に心拍数を心拍数の目安を決めるのも良いでしょう。
ただし、年齢によって最大心拍数は異なるため以下の式を用いて計算するのもよいでしょう。
最大心拍数 = 220 ー 年齢
運動するときは最大心拍数の70~80%のキープをしながら運動するので、アフターバーン効果を得たいのならスマートウォッチはあった方がいいですね。
心拍数をすぐに測定できまし、安いものは3,000円くらいで売っています。
おわりに
外出機会が減っているので、カラダのプロとしては自宅でしっかりトレーニングして欲しいと思います。
HIITなら回数は少なく時間も短くて済むので、短時間に効率的にトレーニングを行えます。
運動がカラダにいいことはみなさんご存じのはずですので、継続できるきっかけを作ることができたらと思います。
オンラインで一緒に出来るトレーニングを準備中ですので、お楽しみに!
参考文献
・Tabata I, Nishimura K, Kouzaki M, Hirai Y, Ogita F, Miyachi M and Yamamoto K(1996)Effects of moderate-intensity endurance and high-intensity intermittent training on anaerobic capacity and VO2max. Medicine and Science in Sports and Exercise
・Tabata I, Irisawa K, Kouzaki M, Nishimura K, Ogita F and Miyachi M(1997)Metabolic profile of high intensity intermittent exercise. Medicine and Science in Sports and Exercise, 29(3): 390-395.
・Gibala,M.J.et al:Physiological adaptations to low-volume,high-intensity interval training in health and disease.J.PhysioL 590:1077-1084,2012.
・Kessler, H, S. et al:The potential for high-inーtensity interval training to reduce cardiometabolic disease risk. Sports Med.42:489-509,2012.
・Kemi, O. J. et al:High-intensity aerobic exercise training improves the heart in health and disease, J. Cardiopulm. Rehabil. Prev.30:2-11,2010.
・新井康弘ら:外来心疾患患者への高強度インターバルトレーニングが腎機能におよぼす影響について.心臓リハビリテーション 26(2): 235-244, 2020.
・東宏一郎 : High intensity interval trainingの役割 -糖尿病への効果・期待-.臨床スポーツ医学 30(10): 983-987, 2013.
・Cerebral Blood Flow during Interval and Continuous Exercise in Young and Old Men.Klein et al., 2019
・Ana Kovacevic, et al:The effects of aerobic exercise intensity on memory in older adults.Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism • 30 October 2019
・岸野力 ら:高強度インターバルトレーニング中のゴムチューブを用いた牽引力とクロール泳パフォーマンスの関係.Japan Journal of Physical Education, Health and Sport Sciences 63(2): 659-672, 2018.
・Tomoaki Matsuo et al.:An exercise protocol designed to control energy expenditure for long-term space missions Matsuo et al. Aviat Space Environ Med. 83: 783-9, 2012.