「リズム感がある」って、どんな状態のことだと思いますか。
音楽に合わせて踊れること。手拍子がずれないこと。縄跳びが続くこと。どれも正解です。
でも、こうして並べてみると気づきます。ダンスも手拍子も縄跳びも、動きはまるで違うのに、私たちはそれをまとめて「リズム感」と呼んでいる。
つまりリズム感とは、ひとつの決まった技術ではなく、いろいろな場面の底に共通して流れている力のことなんです。
そしてもうひとつ。「リズム感は生まれつきの才能」と、多くの方が信じています。けれど、そうではありません。
リズム感の中身は、脳とカラダのいくつもの働きが組み合わさってできていて、その一つひとつは、経験の中で育っていくものなんです。
リズム感は、4つの力でできている
① 次を予測する力
リズムに乗るとき、私たちは鳴った音に反応しているのではありません。「次はこのあたりで来る」と先読みして、カラダを準備しています。
この時間のものさしを担うのが、脳の後ろにある小脳です。予測がまだ育ち途中だと、音が鳴ってから「あ、来た」と動くので、どうしてもワンテンポ遅れてしまいます。
② 一定のテンポを自動で刻む力
脳の奥にある基底核の役割です。歩くときの「イチ・ニ・イチ・ニ」も、走るときの規則正しいピッチも、ここが作り出しています。
この力が育ち途中だと、最初はよくても、続けているうちにだんだん速くなったり、バラバラになったりします。
③ 音を動きに翻訳する力
耳で聞いたリズムを、動きの指令に変える力です。
手拍子だけならできるのに、音楽が流れたとたん合わなくなる子は、この「音と動きをつなぐ道すじ」が、いままさに舗装されている途中なのかもしれません。
④ リズムを覚えておく力
「タン・タタ・タン」を真似するとき、子どもは一度それを頭のメモ帳(ワーキングメモリ)に置いてから、カラダで再現します。
短いリズムなら真似できるのに、長くなると崩れるときは、ここへの負荷を疑ってみてください。
リズムに乗りにくいお子さんは、このどれか、あるいは複数が、まだ育ち途中というだけなんです。
同じ「リズム感がない」でも、つまずいている場所は子どもによってまるで違います。
音楽が鳴ってもカラダが揺れない子は、もっと手前の土台の経験をこれからたっぷり積んでいくところかもしれません。
だから大切なのは、「ある・ない」で評価を止めず、「この子はいま、どの力が育ち途中なのかな」と、そっと見当をつけてあげることなんです。
リズム感には、育つ順番があります
いちばんの土台は、抱っこでゆらゆら揺れる、背中をポンポンと叩かれるといった、カラダ全体でリズムを味わう経験です。
そこから
step.1 音楽が鳴るとカラダが揺れる(外のリズムに気づく)
step.2 大人と「せーの」で一緒に跳ぶ(外のリズムに合わせる)
step.3 自分で手拍子を一定に続けられる(自分でリズムを作る)
step.4 音楽に合わせて踊る
上記のような、階段のように積み上がっていきます。
だから「踊れない」子にいきなりダンスを練習させるより、もっと手前の「一緒に手を叩く」「ゆらゆら揺れる」に戻ってあげるほうが、遠回りに見えて近道になることが多いんです。
縄跳びは、リズム感の総合テスト
「うちの子、縄跳びが極端に苦手で」というご相談はとても多いのですが、それもそのはず。
縄が足元に下りてくるタイミングの予測、一定のテンポの維持、着地を次の跳躍につなぐバネの使い方、腕と足という別々の動きの協調。
これだけの要素が同時に走っているので、どれかひとつが育ち途中なだけで、縄跳びはたちまちむずかしくなります。
「苦手」を根性や練習量の問題にしてしまうのは、少しかわいそうなんです。
縄跳びについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
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縄跳びが苦手なのはなぜ?理学療法士が解き明かす「感覚統合」と「原始反射」の影響
「周りのお友達は楽しそうに跳んでいるのに、うちの子だけ縄跳びが苦手…」「手と足のタイミングが合わず、すぐに縄が引っかかってしまう」 「練習してもすぐに引っかかって、本人も自信をなくしているみたい…」 ...
おうちでできること
特別な道具はいりません。
- ひざの上でゆーらゆーら揺れる
- 布団の上で一緒にジャンプする
- 「せーの」で手を叩く
- 大人が叩いたリズムを真似っこする
- 手遊び歌やわらべうた
- 音楽が止まったら動きも止める遊び
こうした音と動きをつなぐ大切な経験になります。
短く、簡単なリズムから。うまく合わなくても、細かく直しすぎないことが大切です。
いちばんのお手本は、大人のカラダ
人のカラダは、外から一定のリズムが与えられると、そこに引き寄せられるようにできています。
行進の音に足並みがそろうのと同じで、これを引き込み(エントレインメント)と呼びます。
子どもがまだ自分の中に安定したテンポを持っていないとき、大人が心地よいテンポを出し続けることが、何よりの支えになります。
子どもは、自分ひとりでは作れなかったテンポを、大人のリズムに乗る形で経験できる。
それを繰り返すうちに、「次はこのあたり」という予測のものさしが、少しずつ子ども自身の中に育っていきます。
大切なのは、「合ってる・合ってない」をジャッジする時間にしないこと。「正しく・上手に」よりも、「楽しく・一緒に」。リズムは、人と気持ちが通い合う遊びの中で自然に育っていきます。
「できない」ではなく、「育ち途中」
もしこれまで「うちの子はリズム感がない」と感じていたなら、その言葉を今日からそっと置いてみてください。
予測する力も、テンポを刻む力も、音を動きに変える力も、覚えておく力も、揺れる・叩く・跳ねる・歌うという日々の遊びの中で育っていきます。
のぼるスピードは子どもによって本当にさまざまですが、ゆっくりでも、必ず育っていきます。
After Rehaでは、お子さん一人ひとりのカラダの育ちに合わせたかかわり方をご提案しています。
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