計算力と指先の意外な関係。理学療法士が教える『賢い指』を育てる簡単あそび

「うちの子、どうも計算ドリルが苦手みたい…」
「鉛筆を持つのがぎこちなかったり、お箸をうまく使えなかったり、なんだか指先が不器用な気がする…」

 

もし、この2つのお悩みを同時に抱えているとしたら、保護者の方や先生は「たまたまかな?」と思われるかもしれません。

 

でも、私たち発達を支援する理学療法士の視点から見ると、「指先の器用さ」「計算などの学習能力」には、実はとても深いつながりがあるんです。

 

今回はその秘密と、おうちで簡単にできる「脳を育てる指先あそび」のヒントを解説していきます。

 

なぜ「指先」が「計算」に関係するの?

お子さんが数を数え始めたときのこと、思い出せますか? きっと、小さな指を一生懸命折りながら「いち、に、さん…」と数えていたのではないでしょうか。

 

指は私たちにとって「最初の計算機」なんです。

 

脳科学の世界では、指を動かす脳の領域と、数を処理する脳の領域が非常に近い場所にあること、そして互いに密接に連携していることが分かっています。

 

幼い頃に指を使って数を数えたり、おはじきを操作したりする身体的な経験が、頭の中で「数」という抽象的な概念を理解するための大切な土台になるのです 。

 

脳を育てる「感覚のアンテナ」

では、指先を器用に動かせるようになるためには、何が必要でしょうか。

 

それは、指先からの「感覚」を脳が上手に受け取ることです。

 

特に大切なのが「固有受容覚(こゆうじゅようかく)」という感覚です。

 

固有受容覚とは?

簡単に言えば、「体の力のナビゲーター」のようなものです。

 

目で見なくても、自分の指がどれくらい曲がっているか、どれくらいの力で物を握っているかを脳に教えてくれる感覚です。

 

この「力のナビゲーター」がうまく働いていると、子どもは鉛筆を適切な強さで握ったり、消しゴムで優しく字を消したり、ブロックをそっと積んだりできます。

 

逆にこの感覚が育っていないと、力の加減が分からず、鉛筆をポキッと折ってしまったり、字が薄すぎたり、あるいは不必要に強い力で物を掴んでしまったりします。

 

これがいわゆる「不器用さ」の一因となるのです。

 

遊びが脳の土台をつくる

この「力のナビゲーター(固有受容覚)」や、指先の「触覚(精密なセンサー)」を育てるのに、特別な訓練は必要ありません。

 

ここでは理学療法士の視点から、脳の土台づくりにおすすめの遊びを3つご紹介します。

1. 粘土あそび(ちぎる・こねる・まるめる)

粘土の抵抗を感じながら力を込めることで、「固有受容覚」がフル稼働します。

 

同時に、粘土の冷たさや柔らかさが「触覚」を刺激します。

 

2. この指とまれ 

自分の指が「何本あり」「どれがどの指か」を意識させる(指の認知)ことが狙いです。

 

お風呂で数え歌に合わせるのも良いでしょう。

 

3. ビーズ通し(協調性)

小さなビーズをつまみ、細い穴に紐を通す作業は、目と手を協調させる高度なスキルが必要です。

 

同時に集中力も養われます。

 

これらの遊びはすべて、指先に意識を集中させ、力の加減を学び、脳に「指ってこうやって使うんだよ」と教えてあげるとてもいい機会になります。

 

まとめ

「計算が苦手」という姿も、「指先が不器用」という姿も、どちらも「脳がまだ体の使い方を学習している途中ですよ」というサインなのかもしれません。

 

指先を動かすことは、単なる手先の訓練ではなく、脳の「計算する力」や「考える力」の土台そのものを豊かに育てる大切な活動です。

 

まずはお子さんが楽しんでくれる遊びから、一つ試してみてください。

 

 

もっと詳しく知りたい方へ

noteでは、さらに深掘りした内容を公開しています。

 

「では、もっと具体的にどんな遊びをすれば?」
「うちの子、触覚が敏感で粘土遊びが苦手なんだけど、どうしたら?」

 

そんな声にお応えして、保育や子育てがもっと楽しく、確かなものになるヒントが詰まっている記事を書きましたので、ぜひ覗いてみてください!

 

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