子どもの脳は「料理」で育つ!理学療法士が解説する3つのすごい効果

「うちの子、なんだか落ち着きがない…」 「遊びに集中できず、すぐに飽きてしまう」 「手先を使うのが苦手」

子どもの発達について、このようなお悩みはありませんか?

 

もし一つでも当てはまるなら、ぜひ試してほしいのが「親子での料理」です。

 

料理は単なる家事ではなく、子どもの脳と心を育むための“最高の遊び”であり“最高のトレーニング”なのです。

 

この記事では、なぜ料理が子どもの発達に良いのか、その科学的な理由と今日からご家庭で実践できる簡単なステップをご紹介します。

 

なぜ「料理」が脳に良いの?

 

料理のプロセスには、子どもの脳を育てる栄養素がたっぷり詰まっています。その理由を専門的な視点から、大きく3つの効果に分けて解説します。

 

1.五感をフル活用!脳の土台をつくる「感覚統合」

子どもが健やかに発達するためには、目(視覚)、耳(聴覚)、鼻(嗅覚)、舌(味覚)、皮膚(触覚)という五感に加えて、体の動きや傾きを感じる感覚(前庭感覚)や、筋肉や関節の力加減を感じる感覚(固有感覚)といった情報を、脳が上手に整理整頓(=統合)する必要があります。

 

この働きを感覚統合と呼びます。

 

この感覚統合がうまくいかないと、「姿勢を保てずフラフラする」「力の加減が分からず、物を壊したり、お友達を強く叩いてしまったりする」といった行動につながることがあります。

 

料理は、まさにこの感覚統合をフル回転させる活動です。

 

触覚

野菜のツルツル、ゴツゴツ。小麦粉のサラサラ、水のベタベタ。

 

多様な感触に触れることは、触覚の過敏さや鈍感さを和らげる助けになります。

固有感覚

生地を「力いっぱい」こねる、卵を「そーっと」割る、野菜を「ちょうどいい力で」切る。こうした経験を通じて、子どもは自分の体の使い方、特に力のコントロールを学びます。

 

これが、落ち着いた行動や適切な対人関係の基礎となるのです。

前庭感覚

ボウルをのぞき込んだり、少し高い場所にあるものを取ろうと背伸びしたり、立ちっぱなしで作業したり。

 

これらの何気ない動きが、体のバランス感覚を司る前庭感覚を自然に刺激します。

嗅覚・味覚

焼けるパンの甘い香り、スパイスの刺激的な匂い、食材そのものの味。

 

嗅覚や味覚は記憶や情動と深く結びついており、子どもの豊かな感性を育みます。

 

このように多様な感覚を一度に体験することで、脳は様々な情報を整理し、つなぎ合わせる練習をします。

 

これが、自分の体を思い通りに動かしたり、感情をコントロールしたりする力の土台となるのです。

 

感覚統合についてはこちらの記事もご覧ください。

参考
落ち着きがないのはワガママじゃない?子どもの行動の謎を解く『感覚統合』入門ガイド

「どうしてうちの子は、じっと座っていられないんだろう?」 「何度言っても、お友達を強く叩いてしまう…」 「特定の服しか着たがらないのは、ただのワガママ?」   子育てや子どもたちの支援の現場 ...

続きを見る

 

2.脳の司令塔を育てる「実行機能」トレーニング

レシピを見て、手順を考え、完成までやり遂げる。この一連の流れは、脳の「司令塔」と呼ばれる前頭前野を活発に働かせ、実行機能(Executive Functions)を鍛えます。

 

実行機能とは、目標達成のために思考や行動、感情をコントロールする大切な力で、「社会で生き抜く力」そのものと言っても過言ではありません。

 

具体的には、以下の3つの要素が含まれます。

  • ワーキングメモリ:手順や材料を一時的に覚えておく力。
  • 抑制コントロール:衝動を抑え、待つ力。「まだ混ぜちゃダメ」と我慢する経験が育みます。
  • 認知の柔軟性:間違いに気づいて修正したり、やり方を変えたりする力。

これからの時代にますます重要となるこれらの実行機能を、料理は机上の学習ではなく、楽しく実践的な形で育てられる最高の機会なのです。

 

3.指先が脳を育てる!「巧緻性」の発達

指先の細かな動きは脳の発達、特に思考や言語を司る領域と密接に関わっています。

  • 豆をつまむ
  • 野菜をちぎる
  • 生地を丸める
  • スプーンですくう

これらの作業は、指先の器用さ、つまり巧緻性(こうちせい)を高めます。

 

巧緻性が高まることは、単に手先が器用になるだけではありません。

 

鉛筆を上手に持ってスムーズに字を書いたり、ハサミを正確に使ったり、ボタンをかけたりといった、就学後に必要となる具体的なスキル(学習の土台)に直結するのです。

 

「料理脳」を育む3つのステップ

「うちの子に料理なんて、まだ早いかも…」と思わなくても大丈夫です。まずは年齢や発達段階に合わせて、簡単なことから始めましょう。

ステップ1:【感覚に親しむ】野菜を洗う・ちぎる(2歳頃~)

まずは水や野菜の感触を楽しむことから始めましょう。

 

レタスをちぎったり、ミニトマトのヘタを取ったりするだけでも立派な一歩です。

 

散らかってもいいように、床に新聞紙などを敷いておくと、汚れてイライラすることもなく、親も子で安心して取り組めます。

 

ステップ2:【単純作業に挑戦】混ぜる・こねる(3歳頃~)

ホットケーキミックスを混ぜる、ハンバーグのタネをこねるなど、ダイナミックな動きに挑戦してみましょう。

 

力の入れ方や感触の変化を「ザラザラからツルツルに変わってきたね!」などとコミュニケーションをとりながら作業すると、子どもはより意識的に感覚を捉えることができます。

 

ステップ3:【手順を意識する】計量する・盛り付ける(4歳頃~)

計量カップで粉を測ったり、お皿にフルーツを飾ったりとよりレベルをアップさせましょう。

 

レシピという「見通し」を持って作業する経験が、計画性を育てます。「次はこれを3杯入れようか」など、数字を意識した声かけも効果的です。

大切なのは、完璧にやることではありません。子どもが「自分でできた!」という達成感や自己肯定感を育むことです。

 

失敗しても怒りたくなるかもしれませんが「大丈夫、次やってみよう!」と温かく見守ってあげてください。

 

子どものやる気を引き出す「声かけ」

料理をするときは声かけも大切です。そのためには次のことを意識しましょう。

 

否定しない

「こぼしちゃダメ!」ではなく、「ボウルの近くで混ぜてみようか」と具体的な方法を伝える。

結果よりプロセスを褒める

「上手にできたね」だけでなく、「一生懸命混ぜていたね!」「最後まで諦めなかったのがすごいね」と頑張りを認める。

子どもに選ばせる

「どのフルーツを入れようか?」「どんな形にする?」と小さな選択の機会を与えることで、主体性が育ちます。

 

まとめ

料理は子どもの脳に必要な「感覚刺激」「実行機能への挑戦」「巧緻性のトレーニング」をすべて満たしてくれる、とてもよい活動です。

 

それだけでなく、親子で一緒に何かを成し遂げる時間は、よいコミュニケーションの機会となり、子どもの自己肯定感や食への興味を育みます。

 

ぜひ週末のひととき、キッチンでお子さんと一緒に「脳を育てる時間」を楽しんでみませんか?

 

 

もっと詳しく知りたい方はnoteの方でクッキンングについて深掘りしていますので、ぜひそちらも参考にしてみてください!

noteでもっと詳しく

よく読まれている記事

1

体幹ってなんで大切なの?なぜ鍛える必要があるの?そう思われたことはありませんか?   「体幹」はカラダの中心にあって、すべての動きに関連する非常に大切な部位とされています。体幹を鍛えることは ...

2

「体幹トレーニング」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。   サッカー日本代表で活躍した長友佑都さんが行っていた体幹トレーニングが話題となりましたね。 [kattene ...

3

ここ数年筋力トレ(筋力トレーニング)ブームが起こっていますよね。 書店には筋トレ関連の本が多く並んでおり、フィットネスジムも多くなってきました。   Googleトレンドのキーワード検索率で ...